韓国で記録的な大ヒットとなった衝撃のハード・ゴア・スリラー『カル』。連続猟奇殺人を描きながらそこには対話と断絶というテーマをも盛り込んだこの作品は、ネット上を中心に謎が謎を呼び話題となっていましたが、11月2日の東京ファンタ”コリアン・ムービー・ルネッサンス”の目玉として、好評のうちに上映されたのに続き、いよいよ11月4日よりロードショー公開がスタートした。初日である4日、上映劇場中の渋谷東急3では、初回上映後の午後1時半より、『カル』の監督であるチャン・ユニョン氏、プロデューサーのク・ボンハンさんが来場し、ほぼ満席の観客の前で舞台挨拶が行われた。
韓国映画界をリードする386世代(30代で、80年代に大学に在学、60年代生まれ)に属するお二人は実に若々しく、大ヒット作を放った気負いを感じさせない穏やかな様子で登場し、まずは、日本での公開に関しての感想を交えての挨拶から舞台挨拶はスタートしました。



チャン・ユニョン監督——
この作品は韓国で公開されましてから1年くらいが経っております。私も公開された頃の感動を少し忘れかけていたのですが、今回日本で上映していただけることになりまして、非常に緊張しておりますしドキドキしております。そして、日本の観客の皆さんが、この作品をどう観てくださるかとても気になるところです。いずれにしましても、楽しんでいただけましたら幸いです。この場にいらっしゃる皆さんは、日本で初めて作品をご覧になった観客の皆さんですので、いい印象を持ち帰っていただければと思います。映画はこのスクリーンで始まりますけれども、皆さんなりの『カル』というのを創っていただきたいと思います。上映が終わった後、『カル』は皆さんのものということになりますので、自分なりにどういう『カル』を創っていくのかというのも、皆さんの手にかかっています。



ク・ボンハンさん——
本日は、皆さんにお会いできて非常に嬉しく思います。『カル』は私たちの製作会社で製作した最初の作品になります。皆さんに、よいイメージを持っていただけたら幸いです。そしてまた、今後も作品を作って日本の皆さんとお会いしたいと思います。

さて、お二人の挨拶がすんだところで、スペシャル・ゲストが舞台に運ばれてきました。それはなんと、『カル』に主演されたハン・ソッキュ氏の頭部。これは、この作品に参加した日本の特殊メイクスタッフの手により作成された、ハン・ソッキュのダミー・ヘッドから、本日のために新たにレプリカを作ったものです。手渡された頭部に挨拶をし、再会を喜ぶチャン監督。「もし、今日彼と来られていたら、こうした猟奇的な状況は免れられたのに…」と会場の笑いをとってから、「ハン・ソッキュは、本当に素晴らしい俳優で、私は私の監督デビュー作でも一緒に仕事をしましたが、映画作りの上で色々な助けを与えてもらいました。韓国映画が存在する限り、彼は歴史に残る俳優であり続けると思います。次回作でもご縁があればずうっと一緒に撮りたいと思っているのですが、とても忙しい方なので、ご一緒できるかどうかは未だわかりません。だから、こんな形でも再会できて嬉しく思っていますよ(笑)」と語り、頭部を客席に向かってお辞儀させるチャン監督。なかなかお茶目な性格の持ち主のようです。


 この後、クさんが日韓共同製作作品として製作した『純愛譜—スネボ−』で、映画主演デビューを果たす橘実里さんが、応援にかけつけました。二人に花束を渡した橘さんは、たった今観終わったばかりの『カル』について、「ドキドキ感が残っていて、正直未だパニクッています。いろいろ聞きたいこともありますので、この後監督をつかまえて沢山お聞きしたり、インターネットのホーム・ページなどで皆さんと一緒に私なりの『カル』を楽しみたいと思います」と興奮覚めやらぬ様子で感想を語ります。また、ク氏は「『〜スネボ』という作品は、日本の松竹と韓国のシネマサービスという日韓のメジャー会社で製作される初めての作品と言うことになります。そのプロデューサーを引き受けることができて光栄に思っています。橘さんは素晴らしく可愛らしい女優さんで、これからも活躍してくださると思いますし、出会えたことをとても光栄に思います」と共同製作と橘さんの魅力について語りました。なお『〜スネボ』は韓国では12月、日本では来年の公開が予定されているそうです。



 最後に、チャン監督より「この作品をつくったのは私ですが、皆さんがご覧になられた後は、各自皆さんで完成させていただきたいと思います。『カル』がどんな面白い作品になるかは、皆さんがこの作品に愛情をのせていただいて楽しんでくださるという姿勢にかかっていると思います。今、この時間から『カル』は皆さんのものです。ご自分なりの面白い『カル』、奇抜な『カル』を完成させていただきたいと思います。本日は観にきていただきましてアリガトウゴザイマシタ。」と、作品に関してのメッセージが観客に送り、舞台挨拶を終えました。観るものそれぞれが、作品を完成させていく『カル』。ご覧になられた皆さんは、どのように感じられたでしょうか。なお、『カル』公式ホーム・ページのBBSでは、ご覧になられた皆さんの質問に、チャン監督自身が答えてくれるそうですので、自分なりの『カル』探しの参考に、覗いて見るのもいいかもしれません。

なお、『カル』は渋谷東急3他にて全国ロードショー公開中です。

執筆者

HARUO MIYATA

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作品紹介「カル」
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