侯孝賢監督次回作は、ゆうばりファンタが舞台になる!?さる1月15日に行われた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001」(会期2月15−19日)の札幌会見では彩木雅夫、小松沢陽一両プロデューサーに囲まれ、侯孝賢氏が登場。94年に同映画祭の審査員として参加した監督は「夕張の雪景色、この土地の人の暖かさ、そんな市民が一体となった映画祭の雰囲気、どれも忘れがたい経験でした」と語ります。夕張ロケもある『千禧曼波(チェンシマンボ)』はスー・チー演じるヒロインと夕張出身の日系男性とのラブストーリー。「映画祭前後10日間くらい、夕張で撮影をします。皆さん、お忙しいでしょうが、映画祭にもお邪魔させて頂くつもりです」。このシーンのキャストは全て現地で調達するとのこと。ゆうばりファンタに来たあなたは、運がよければ侯孝賢作品でスクリーンデビューできるかも!?






『非情城市』(89年)でベネチア映画祭グランプリを受賞するなど国際的な活躍が知られる侯孝賢監督。世界各地の映画祭を経験してきたなかでも、94年に参加したゆうばりファンタの印象は強かったそう。「大都会で行われる映画祭はどこか浮ついていて映画そのものを楽しむというムードではありません。その点、夕張には独特の雰囲気があります。どうして、こんなに気になってしまうのか(笑)、いろんなところで夕張の話をしてきました」。インスピレーションを与えた同地の街並みは次回作「千禧曼波(チェンシマンボ)」に収められます。
タイトルは、“チェンシ”がミレニアム、“マンボ”がみなさま、の意。「私が撮りたいのはゆうばりの現実そのもの。皆さんにお話を聞くと、子どもたちは東京や札幌に行って帰省するのはお盆くらいだと言いますね。でも、それこそがリアルだと思うんです」。もうひとつ、重要視するのが異邦人としての視点。劇中、日系男性を追って夕張の地に辿りついたヒロインが自分を見つめ直す経緯があります。「彼女は自分の国でいろんなことがあり、逃げたいと思っていたのかもしれない。雪を見るのも初めてかもしれない。普通に生活していると絶えず動き続けるばかりで、自分を見つめなおすチャンスはなかなか巡ってきません。全く違う環境になって初めて向き合えるものもあります。それがいいか、悪いかは別としてその過程が大事だと思うんです」。今回、ロケハンに来た監督は今の夕張とじっくり対峙し、映画の内容を固めていくそうです。
 ゆうばりでの映画撮影に対し、「侯孝賢監督は人間の痛みがわかる監督。今回の申し出にとても感動していますし、作品を楽しみにしています」(小松沢陽一チーフ・プロデューサー)、「第一回目から願って来た事が、ついに成就したという感じです」(彩木雅夫ゼネラル・プロデューサー)と感無量のコメントを残しました。「千禧曼波(チェンシマンボ)」は4月までには撮影を完了する予定。夕張映画祭2002での上映が期待されますね。

執筆者

寺島まりこ

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ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001
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