13年1月クールの民放ドラマ最高視聴率を記録したTBSドラマ「とんび」(1月13日〜3月17日)の原作者である、直木賞作家・重松清の新作「アゲイン」(集英社「小説すばる」連載)。

46歳で再び甲子園を目指す元高校球児、坂町役に中井貴一。亡くなった父の元チームメイトを訪ねる娘の美枝役には波瑠。坂町の元チームメイトの高橋役には柳葉敏郎、元野球部のマネジャー・裕子役には和久井映見など、豪華な役者陣が揃った。

監督・脚本を務めるのは『風が強く吹いている』の大森寿美男。かつて忘れようとした夢に、再び挑戦する不器用な大人たちの葛藤を、確かな手腕で描き出す。

元高校球児が大人になって再び甲子園を目指し、遠い過去の苦い青春の悔いを乗り越えていく映画『アゲイン 28年目の甲子園』。胸の奥にしまったはずの思いが再び動き出し、青春のその先へと大人なりの一歩を踏み出す。そんな勇気をくれる感動作が、いま誕生する。





Q:マスターズ甲子園という大会は、そもそもご存知でしたか?

いえ、知らなかったですね。今回の企画をいただくまで、名称さえ知らなかったです。もともと野球はファンで、実際の甲子園は毎年応援していますが。僕は野球をやっていなかったけれども、高校野球や甲子園というものに対するあこがれは、観る側としてはありました。だからこそマスターズ甲子園って、贅沢な草野球じゃないの? って(笑)。野球経験者が集まってやる規模の大きい草野球なのかな? と、最初思ってしまったわけです。

Q:ところが実際に見てみると、胸が熱くなるような大会だった。

普通の会社員になった元高校球児が日曜日に野球をやるとかは、世の中にいっぱいあること。それを甲子園でやるだけだろうと思っていましたが、実際に見に行くと全然違った。地方大会を勝ち抜いてきているので、野球の迫力がまずある。体形や体力が現役時代からは見違えるものになっているけれど、なによりも気持ちと雰囲気が本当に高校生のようで。現役に見える。どうして、そこまで戻れるのだろう? と、その力に惹かれましたよね。

Q:今回の映画でも本当の高校球児のようにきらめいていました。

その力を描きたいと思ったんですよね。これは、もう1回グラウンドに立つまでのほうにドラマがあって、そこに立つまでの話こそ重要ではないかということを、最初に重松清さんとも話していました。マスターズ甲子園を描くのであれば、グラウンドに立ってから頑張って強くなって、甲子園に行く話じゃないよなと。そこに魅力があるのではなくて、どういう人生や想いを背負ってグラウンドに向かうのか、というドラマをみせるべきだなと。

Q:ノスタルジーじゃなく、前を向いている姿勢も感動的でした。

いろいろなものを背負っていまここにいて、あの頃に気持ちだけ戻って、楽しんでいる。いまの問題を抱えながら、この大会があることで、いまの苦しいことも乗り越えられるという、いまの自分のエネルギーにもなっているはずだろうと。仮に昔を懐かしんでやっているにしたって、それは、いまの自分にとって悪いことではないですよ。実際、甲子園を目指そうとすると、本気で難しい。自分への挑戦なんです。それが、実際に観に行った時の感想だったんですよね。

Q:最後に、本作を観る読者へ、メッセージをお願いいたします。

もう1回、真剣勝負をしているところを含めて、野球にまつわる人々のドラマを描きたかったんです。甲子園という夢がいまのオジサンたちの状況に、どう影響を与えていくかということが、この物語を作る時の一番のテーマだったと思います。重松さんも小説を書く時に、いろいろな人間がかかわっている大会だから、その各人の物語を小説にしていきたいとおっしゃっていました。その人間ドラマを描いたつもりですので、一つの野球物語として楽しんでいただければなあと思います。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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