主役のベテラン・スーツアクター本城渉を演じるのは、映画『本格科学冒険映画 20世紀少年』シリーズ以来、5年ぶりの主演映画となる唐沢寿明。実際にスーツアクター出身の唐沢にとっては「自分が経験したことがそのまま詰まっている」と語るほど本作への思い入れは強く、高さ8.5mからの落下や、燃えさかる炎の中での忍者100人斬りなどにも挑戦。クライマックスの15分に及ぶ決死のアクションシーンは、見るものの心を揺さぶらずにはいられない。その本城に大きな影響を受ける生意気な人気アイドル・一ノ瀬リョウには、「仮面ライダーフォーゼ」、連続テレビ小説「あまちゃん」の朴訥とした先輩役で大ブレイクした福士蒼汰。本作では久々に特撮ヒーローに゛変身゛している。唐沢と同じアクションクラブに所属しているメンバーに黒谷友香と寺島進が参加。女役のスーツを着込んだ寺島、華麗な彩りを加える和久井映見・黒谷友香ら、そしてベテラン俳優松方弘樹が本人役で登場するなどキャスティングも多彩だ。

 さらに、共同脚本には200万部を超えるベストセラー小説 「夢をかなえるゾウ」の作家・水野敬也が参加。特撮ヒーローを支える舞台裏の人たちに感銘を受けたという水野が劇映画に初挑戦している。

作家・水野敬也にインタビュー







Q:一緒に脚本を書かれた李鳳宇さんとはどのような経緯で知り合われたのですか?
A:李さんが映画を教える学校があったのですが、それには応募できなくて、直接李さんに手紙を出しました。「一般人を育てるのではなく、僕を育てましょう」と・・・。そしたら当然李さんはイタイ奴だと思ったらしいです。
 そんな後に、偶然、雑誌の対談企画があって、こんなチャンスはないなと思って色々と質問して盛り上がりました。そこで何かやりたいねって話になって、しばらくしてから脚本書かない?と連絡を頂きました。李さんはスーツアクターのお話しというのは、すでに考えられていて、それから実際に話を聞いたりして、彼らの深いところを見て映画にすべきだと判断したようです。
 僕は僕で描きたいと思っていたテーマがあって、日が当たらなくても世界を支えている人ってたくさんいると思うんですよ。例えば車掌さんなんかもそうだと思います。同じ時間に来て、あたりまえだけど、遅れると怒られる。その人たちって褒められることは少ないと思うですね。だらか、そういう人にもっと光を当てるような、観てスっーとするような、俺たちも明日頑張ろうと思えるような作品というのは考えていました。スーツアクターというのはまさに!だと思います。日が当たらない人はたくさんいるけど、この話はいけると思って受けました。

Q:李鳳宇さんとはどのようにしながら脚本を進めていったのでしょうか
A:会議して、プロット書いて、意見もらって、そういう風にやっていきました。李さんはすごく映画を知っている方だし、僕も彼の作品が好きだし、彼からのハードルがあったらそれを越えられるようにひたすら直しまくりました。初期のプロット読み直すとまったく関係ない話を描いていましたね (笑)

Q:今回の脚本を手掛ける中で、一番楽しかった点は?
A:脚本の中で「主人公の本庄ってこういう人だったんだ!」みたいに彼が魅力的になる瞬間があってそれが楽しかったですね。例えば脚本に武士道の要素が加わってさらに本庄がより本庄らしくなる。そうすると僕もより本庄を好きになっていくし、観てくれている人も好きになってくれると思うんです。キャラが成長するというか、より魅力的になっていく。
 実は最初は本庄はジャッキー・チェンに憧れているという設定だったんですが、唐沢さんが主人公に決まってからブルース・リーが好きなということに変えたりとか。なぜなら唐沢さんがブルース・リー好きなので。そういったところも楽しかったですね。

Q:スーツアクターなど裏方にスポットをあて、夢を追う人だけでなく、生きるすべての人に向けた映画とも思いました。
A:そうですね。今回の映画では大道具さんとか照明さんとかのシーンもあってそこはこだわってつくりました。「アクションがあって、リアクションがある、チームを大事にする」という本庄のセリフは感動的だし、描きたかったことの一つです。

Q:本と脚本を書く時の決定的な違いは何ですか?
A:本は最初の試作版がほぼ完成版だから直すべきところ、良くするところがはっきりわかるんですが、脚本というのは人が演じてみて初めてわかるんです。それに、役者さんによってどこを直すべきかも変わるんですよね。それがすごく怖かったですね。僕の見えないところをプロデューサーさんが見て意見をくれる。そして僕は直すことは得意だから、そこがすごくいい組み合わせだったと思います。

Q:これまでも「夢をかなえるゾウ」や「LOVE理論」などご自身の脚本が豪華俳優によって演じられているのを観たとき、どのようなお気持ちでしたか?
A:今回も本当に素晴らしかったです。例えば福士さんが唐沢さんを訪ねて、一緒に神社まで走るシーンがあるんですが、走り方がものすごい機械的なんですよね。最後のシーンの走り方とは全然ちがう。なぜならば彼が神社まで20年間走っているから、走り方も当たり前のように機械的になっているんですよね。僕はそこが泣けるんですよ!
 顔も名前もわからない人だけど、身体を20年間も作りつづけてきている。あの感じは脚本上ではわからないのに、映像で観るとわかる。そこにとても感動しました。他の方にはわかりづらいかもしれないけど、これは脚本書いた者の特権ですかね(笑)

Q:ご自身は特撮ヒーローでいうなら一般的なイメージでは5色の中でどのタイプ?
A:まぁ、黄色か緑でしょうね(笑) 赤と青じゃないな。もっといえば、もうショッカーですね。その他大勢から這い上がってますからね(笑)

Q:今後も脚本を手掛けるならどのようなものをかいてみたいですか?
A:僕の実用的な知識を活かしたものが出来ればと思っているんですが、それをそのまま映像にはできないなと思います。たとえば作品を観た人が、実際に何かの形で人生に活かすことが出来るような作品です。エンターテイメントとして素晴らしくないと作品を観てもらえないし、でも自分が伝えたいこともあるので、そのギリギリのところを探っています。もちろん笑いと涙は絶対に必要だと思っています!

執筆者

Yasuhiro Togawa

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