今年で10年を迎えるシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)。
2004年度にスタートし、映画制作を通して数々の映像制作者の人材発掘を行ってきた。劇映画企画を全国から募集し、助成金や制作協力という形でバックアップを行っている。

 ゴールは作品の「完成」ではなく「上映」であるという観点で「CO2上映展」開催し、2011年度からは【大阪アジアン映画祭】の【インディ・フォーラム部門】での上映というより多くの観客に作品を届ける形に発展を遂げて来た。長期的な視点として2011年度からは、映像制作スタッフ育成のため実践的なワークショップを定期的に開催している。
完成作品の権利が制作者のものであることも大きな特徴である。その後の劇場公開や国内外の映画祭出品など自由な展開が可能となっている。

 一方で、企画募集から上映まで本年度は約9ヶ月という短いスケジュールやバックアップ体制など、運営的な課題も毎回意見が上がっている。

 今年の【大阪アジアン映画祭/インディ・フォーラム部門】の上映に向けて、助成監督にCO2に参加しての感想や意見、作品の見所などを伺った。










——CO2に参加しての感想はいかがでしたか?

神保:前評判でスジュール的に「CO2キツイよ」と聞いていましたが、意外に初めからそう思っていれば…という印象ですね。大阪アジアン映画祭での上映という後ろが決まっているんですけど、他の仕事などでも限られた条件というのはありますので、そう考えるとキツイとは思いませんでした。前年度は始まるのが2ヶ月ほど遅かったようですが、今回のように9月スタートであればさほど無理ではないと思いました。

 金銭面では、助成金の60万だけで撮るのは難しいですが、自分でも少し資金を出して、あとは知り合いレベルで何人か出資してくれたのと、ロケ地に関しても助けてくれる人がいたので何とかなりました。

——今後のCO2の課題についてご意見があれば教えてください。

神保:関西在住以外の方向けに宿泊施設の提供や斡旋があったらよかったと思います。それからロケ地に関しては、今回は個人的な伝手で、池田市や箕面市での撮影が出来ました。もともと地域のネットワークを活かして撮影させてもらえるということで、CO2より「大阪あそ歩」のプログラムが提示されていたんですが、1ヶ月前に日程を決めなければならないので結局使わなかったという経緯があります。あまりフレキシブルではないなという印象です。
それより例えば、大阪市側の地域担当の方たちと顔が見える形でやり取りが出来たら、もっと草の根的なネットワークを紹介して頂けたのかとも思います。

——ありがとうございます。現実に則したサポートが欲しかったということですね。

それでは作品のことに移りますが、脚本指導としてCO2運営事務局から富岡事務局長と城内統括プロデューサーが入ったとのことですが、いかがでしたか?

神保:第10稿くらいまで書き直して、9稿くらいでよく分からなくなってきました(笑)。最後の方は夜中3〜4時まで富岡さんと城内さんに付き合ってもらったような形で、僕が大阪在住ということで、事務局への出入りも頻繁だったため、懇切丁寧にやって頂きました。富岡さんと城内さんは違うスタンスで、富岡さんはスタンダードなしっかりとした展開を好んで、城内さんはもっと自由な方が僕に合ってるんじゃないかと提案してくれました。二人とも良い映画をつくりあげたいという意志のもと違った視点から、僕の話をより面白くできる可能性を提示してもらったということです。自分がどう選び取って行くかで悩みましたが、今まで知り合いの範囲内で作ってきたので、様々な意見や提案で脚本もこういう風に膨らんでくるんだなと実感出来ました。最終的には自分の思う形になったと思います。

——子どもをメインにした撮影は初めてとのことですが、どう接するかというプランはありましたか?

神保:子ども2人に関しては割合自由にやってもらいました。2人とも事前にセリフは覚えてもらったんですけど、現場でその場に応じて変っても上手くクリアしてくれましたね。濱田響己くんは昆虫好きで、主人公・翔吾の雰囲気に重なるところでキャスティングしているので、事細かに演出せずに、彼らの演技を見て膨らませる感じで、違うなというところだけ修正していきました。現場でそういったやり取りが面白かったのが印象に残っています。

 ただ、自由にやってもらった反面、テイクごとにセリフや動きが違ったり、テイクを5・6回重ねた後に僕が新たにセリフや動きを加えたり削ったりしてキャスト・スタッフを困惑させてしまったというのが反省点です。子役の演出ということで演出しきれなかった点をどう解消していくか、今後も撮りながら模索していきたいです

——では最後に『僕はもうすぐ十一歳になる。』の見所を教えてください。

神保:まず、子ども2人が自然に動いている無垢な2人の魅力を観ていただきたいです。後はインドやブータンの要素を盛り込んでいて、現地で僕が撮った写真も使いました。写真は当時勤務していた会社に権利があるので許可を取って使わせてもらっています。インドやブータンでの経験が生きた、僕にしか書けない内容になっています。

——死生観やそれに対して、子どもがどう感じたかは上手く描けましたか?

神保:作品の中で大人たちはそれぞれ違う死生観を持っていて、これが正解という答えは出していません。それに対する主人公・翔吾の反応を見て欲しいです。

 死生観は普通、日常の生活の中で一歩立ち止まらないと考えないものです。見た人には死生観に関わらず、何か自分が日頃通りすぎてしまっているものに対して立ち止まってもらえるような、その小さなきっかけになるような存在にこの映画がなってくれればと思います。

【大阪アジアン映画祭/上映予定】
●3/12(水)17:00 シネ・ヌーヴォ/ゲスト登壇
●3/14(金)16:30 プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇
●3/15(土)16:30 ※完売/プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇
●3/16(日)19:00 ※完売/プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇

★大阪あそ歩とは★
2008年度からスタートした事業で、大阪のまちを歩いて、そのまちの歴史や人々との出会いを楽しむ「まち歩き」と、大阪がいまに受け継いでいる食や芸能や物語、祭や伝説を、直接に体験して遊ぼうという「まち遊び」で構成されており、どちらも研修を受けた市民ガイドと一緒に行動します。
CO2では、2011年度(第8回CO2)から、助成作品やワークショップのロケ地探しなどにご協力いただいています。

執筆者

デューイ松田

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【大阪アジアン映画祭】公式サイト
【CO2】公式サイト