世界中に4,000万もの競技人口がいると言われている空手。実は沖縄がその発祥の地であることは意外と知られていない。沖縄固有の拳法「手(てぃ)」から発展し、大正時代に沖縄から本土へ、そして海外へと広く普及していった。「踊りのうまい男は、空手も強い」、「琉球最強の美人空手家を巡る“嫁取りバトル”」など、琉球空手に伝えられる伝説や史実を基に作られた、沖縄初&発のダンス×空手ハイブリットアクションエンタテイメント、それが『琉球バトルロワイアル』である。

主演は、アメリカ出身の天才ダンスパフォーマー、丞威(ジョーイ)。空手、アクロバットにも精通し、本作でも驚異的な身体能力を披露。今後が期待される俳優である。共演には、琉球空手の達人・八木明人、元K−1ファイター・子安慎悟ら、本物の空手家や格闘家が集結。圧巻の“拳”と“蹴り”を余すところなく披露する。また、「海賊戦隊ゴーカイジャー」のゴーカイピンク役で人気急上昇の小池唯がヒロインを演じ、小悪魔的な魅力で強者たちを翻弄している。

$red —— これまで空手家として活躍され、K-1参戦でもおなじみの子安慎悟さんですが、映画のお話の前に、空手を始めたきっかけを教えてください。 $

子安さん(以下:子)保育園のときにいじめられたことがあり、いじめっ子のような子に、おやつを奪われたり、昼寝のときにお腹の上に乗られたりしたことがあり、強くなりたいと思ったのがきっかけです。実は父も空手をやっていました。本人から聞いたことはなかったのですが、子どもの頃、家の中で帯や賞状を見つけて。優しくて寡黙な父が、実は空手をやると思うと、子ども心に逆らえないなと思っていました。5歳頃、近くの施設の中で、子どもが数人いるような小さい教室に1〜2年ほど通いました。
小学校ではジャッキー・チェンに憧れて少林寺拳法を3年ほど習っていました。中学では空手部がなかったので柔道部に入部し、推薦で高校に進みました。たまたまた隣の中学でフルコンタクト系の空手をやっているので、部活のあとに友達と行ったりしていました。








—— 高校卒業後に正道会館に内弟子に入られました。

当時はUWF、リングスが好きで、プロレスラーになりたいと思ったことがあったんです。履歴書を送って落ちてしまったのですが、当時正道会館にいらした選手がリングスにも参戦していたのを見て、正道会館に所属したら出られるかもしれない、と、少し不純な動機もあって内弟子入りしました。実際に始めたら、高校までやっていた空手と全然違う。これは習得したいとのめり込みました。

—— 最近は、映画やドラマにも活躍の場を広げられています。演技をしてみようと思ったきっかけを教えてください。

子:本格的に空手を始めてから、全日本選手権への出場や、K-1参戦でプロのリングを踏んだり、と色々と経験させてもらってきました。30代前半くらいでした。ある程度、格闘家としての夢を果たし、試合に関してはいったん一区切りつけようと思いました。
一方で、子どもの頃から、アクション映画が大好きで、ジャッキー・チェンに憧れていました。試合でやってきた緊張感やリアルな感じを映像の中で活かすことができないかな、と思い、アクションにチャレンジしたいと思うようになりました。

—— 映画『琉球バトルロワイアル』への出演は、アクション監督の西冬彦に自らお手紙を書かれたことがきっかけと聞きました。

子:西さんが企画をされた『黒帯 KURO-OBI』(2007)という映画を観ました。そもそも空手映画はあまりありませんが、本物の空手家の先生たちが出演されていて、緊張感とリアルなバトルが描かれていました。出演されている先生方は伝統的な空手で、僕はフルコンタクト派で歴史的には新しいのですが、これまで経験してきた技を自分も映像の中で表現できたらなと思ったんです。これまでもアクション映画に出演したことはあったのですが、改めて本格的なアクションに挑戦してみたい、勉強してみたいと思い、手紙を書きました。

—— 実際に作品に出演してみていかがでしたか?

子:格闘家として、これまでも身体を動かしたり、突いたり蹴ったり、力強くパワーを乗せたりということはやってきていたので、多少の自信はありました。甘く見ていたわけではないのですが、自信がないと一歩を踏み出すことはできません。でも実際にアクションを始めると、難しい部分がたくさんありました。人によっては強くあてても問題がない人もいますが、やはり力のコントロールは必要で、表現がとても難しかったりします。
試合競技では、相手を倒すためにいかに効率よく、気配を出さずに無駄な動きを省くか、ということに注力します。端から見たら、いま当たったのか? 効いたのかな? という状況のほうが多いと思います。そういう基準で練習してきたので、そういう身体操作がしみついています。
アクションの練習では、大きく蹴ったつもりなのに、もっと大きくと言われることがありました。どうしてかなと思ったのですが、僕は前に大きく蹴っていた。でも西さんに、「横に大きく蹴らないと、映像的には映えないよ」と言われ、なるほど、と思ったりすることがよくありました。
最初はなかなか恥ずかしくてできなかったです。稽古だからそこまでやらなくてもいいかな、と思ったりもして。でも教えてもらううちにスイッチが入ってきて、入り込めるようになりました。

—— 映画のクライマックスのバトルシーンは、見応えがありましたね。

子:一般の人や役者さんが相手だったらできなかったと思います。実際にバトルシーンで技を当てるというのが、アクション監督である西さんの見せ方です。丞威さんのようにダンスだけでなく空手もやっていて身体能力の高い人が、飛んでくるくる回りながら蹴りを繰り出してきて、僕はそれを頭部で受けないといけない。逃げたくなりますが、頑張りました。これまで空手の試合で自分が倒れたときのイメージを思い出して、大きくリアクションをとるように心がけました。

—— 完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか?

子:バトルシーンももちろんですが、美しい沖縄の景色もあり、見どころが多くて、斬新なアクション映画だなと思いました。静と動があり。コメディタッチで楽しく、そして、空手の魅力も出ているのではないかなと思います。この映画をきっかけに空手がもっと盛り上がっていったらいいなと思います。

—— 今後の目標を教えてください。

子:自分が子どもの頃から憧れている、ジャッキー・チェンやジェット・リーと共演してみたいですね。できるかできないか、の前に夢です。夢を言葉にして、いつか実現したらいいな、と思っています。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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