2013年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭・オフシアターコンペティション部門の中で、無冠ながら無敵の人生全肯定主義の突き抜け感が光っていた作品が6/29(土)からオーディトリウム渋谷にて公開される。

腐れ縁を続ける“爽やかな草食系の外見に超肉食系の体を持つヤリチン男”テツと“ボーイッシュな真面目女子”グミ。二人の前に現れる“大人の魅力を持った運命の女”ケイコ!

「男女の友情が成立するか、否か」はよく恋愛ネタの話題に登るところだが、タイトルの“ami”はフランス語で男の友人、恋人。“amie”が女の友人、恋人。この曖昧さを内包したタイトルが作品の魅力を表している。三角関係にイメージされる予定調和を軽くかわす展開に貫かれる、人生全肯定主義の心地よさ。閉塞感に包まれたこんな時代だからこそ、価値があるこの作品をぜひお楽しみいただきたい。

監督は岩崎友彦。80〜90年代に様々な映像制作を行い、91年は『三宅裕司のえびぞり巨匠天国』(’91)通称“エビ天”で金監督として活躍、93年『フィリップ君。』にてゆうばりファンタ・オフシアターコンペ部門に入賞。10年後の2013年の今年、同部門に再入賞となった。新作短編の『ややこしい関係』はプチョン国際ファンタスティック映画祭ファンタスティックショート部門で上映予定となっている。
キャストは『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の高味光一郎、新人の吉野有佳、『レイプゾンビ2・3』の松井理子。ピンク映画界で俳優・監督として活躍中の巨匠、“ミスターピンク”こと池島ゆたかの妙演も注目!



























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●三人のキャストと不思議監督の出会い
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岩崎監督がインタビューの時間になっても現れないため、キャストの3人でスタート。
——テツ役の高味光一郎さんは、この作品のオファーを受けていかがでしたか?

高味:監督と渋谷のカフェで会いました。何も聞かされていなかったし脚本もないままです。説明されて、「ちょっと驚いた顔やってみてください」恥ずかしいし「出来ないです」(笑)。会話にならないんですよね。「えっじゃあ何しに来たんですか?」「呼ばれて会いに来ました」「こういうので来ますか?やりたいですか?」「僕、脚本も見てませんから。そういうこと急に言われても」。で、沈黙です(笑)。監督はあたふたしていて(笑)

——その日はそれで別れたんですか?(笑)

高味:理解出来なくて(笑)。後日、脚本をもらって。
テツ役は何人か候補がいたみたいですが、僕はやれるものはやれる、出来ないものは出来ないと言った事が良かったみたいです。意図したわけじゃないんですけどね(笑)。

——グミ役の吉野有佳さんはどういったきっかけですか?

吉野:私は去年の始めから今の事務所に入って、その頃から出演が決まっていました。監督と初めてお会いしたのは、渋谷のカフェだったんですけど、見た感じからして変わってらっしゃるし。本当はこの作品監督が主演なさりたくて書いたとお聞きして。変わってるなあ、と(笑)

高味:変人の極みだよね(笑)!

——私が初めて岩崎監督のお顔を観たのは、主演されていた堀井彩監督の『神様、パン買って来い!』です。真面目な殺人マシーン役が強烈で、あんな人だったらどうしようと思いながら来ました(笑)。

高味:あんな人ですよ。あのまんま(笑)。

吉野:あの映画は岩崎監督を知ってる人からするとプロフィール映画だって(笑)。

——緊張してきました(笑)。ではケイコ役の松井理子さんは?

松井:丁度、事務所の月の石に入ろうとしていた頃、mixiで募集していて知り合いに勧められました。映像の方が楽しいと思うようになった頃だったので、役柄にこだわりはなくて。立候補してみたら出して頂けることになりました。

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●テツ・グミ・ケイコ、三人のキャラクターの魅力
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——三人のキャラが作品の魅力です。テツはヤリチン設定だけどギラギラしておらず、逆にぼーっとしているキャラクターなのが面白かったです。高味さんは演じていかがでしたか?

高味:僕は肉食系ではあり、草食系であるキャラです。もっと緩くて弱々しいキャラにしたかったんです。グミは女の子なのに男の子っぽい。テツは男の子なのに女の子っぽいとメリハリをつけて。
監督が考えるテツは、時折強い部分もある。その兼ね合いを話し合って、濡れ場では相手によって男の子部分を出して、ケイコさんとの時は女の子っぽく演じました。
監督とぶつかるというよりは共通のところを探してつないでいく作業になりましたね。

——二面性が興味深いキャラになってましたね。吉野さんは包容力のあるキャラでした。

吉野:最初はもっと男の子っぽい女の子を作ろうとしていましたが、監督と話してみると、「素のままでそのままでいいんだよ」って。私は元々あまり女の子らしさがないので却ってよかったみたいです(笑)。
座るときに足を開いて座ったりするのか確認すると「座るときは膝を閉じて座ります」というお答えで。そうやって少しずつイメージをすり合わせて作っていきました。部分部分で、監督の頭の中に撮りたいビジュアルがあって、そこは絶対譲れないようですね。
高校のシーンで高見くんがみんなの靴下を脱がすところは絶対やりたかったみたいです(笑)。
実際絵コンテがあるんですけどみんなにはそれだけでは伝わらないから、現場で細かく指示していましたね。

高味:監督は衣装もこだわりがあったみたいで、クマのTシャツとか80年代テイストでもあり得ないものを持って来るから、「これ無理ですよ」って。(笑)

——元はご自分が演じるつもりのキャラだったからでしょうか?

高味:それはあったんでしょうね。紅の豚みたいな帽子を持って来て、「かぶってください」「かぶれないですよ」(笑)。やらずに断るのもどうかと思って、一応かぶったり、衣装を着てみたけど、スタッフ失笑です(笑)
結局「高見くんの着たいやつ持って来て」「だから言ったじゃないですか」なんてことに(笑)。
舵を取ってるのは監督なんですけど、スタッフの人が多かったので話し合える環境ではありました。みんな監督が言ってることをすんなり聞きたいんですけど、聞けない(笑)。破天荒なんですよ(笑)。

——松井さんはありきたりな美人キャラではなく、ぽっちゃりとした容姿に超然とした大人の魅力がある不思議なキャラクターでしたね。

松井:監督から言われたのは野宮真貴みたいなイメージ。キレイなお姉さんでいてくださいってことぐらいでした。
そのまま自分の思い描いたキャラで演じたので、イメージをすり合わせるといったことは特になかったのでみんなが羨ましい(笑)。

——ケイコさんはどういうキャラクターと理解しましたか?

松井:仕事の関係でレズビアンの方と接することが多かったんです。女の子同士の恋愛に変な幻想を描いてはいなかったので、意外とすんなり恋をするという感じが掴めました。

——松井さんの中で女性同士の恋と男女の恋とは違うんでしょうか?

松井:多分ケイコ自身は男の子も女の子も好きなんですね。言い方に語弊があるかもしれないけど、人間として好きなんです。私も女の子のこと好きになったことがあるし、男の子のことが好きになったこともあるんで、違和感なく役に入れました

——吉野さんはいかがですか?

吉野:人として好きというのは分かりますね。

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●男性・女性両方の目で客観的に見たセクシャルな題材が撮りたかった
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事務局:監督到着しました!(一同爆笑)

映画祭会場で某映画を観ていて遅刻の岩崎監督。朝、自分から時間確認でみんなにメールを送っていた上に、インタビュアーと会った際にも時間確認をしていたことから一同総突っ込みとなる。

岩崎:上映が終わって間に合う時間なのかと思って。

——話は進んでいますのでご安心ください(笑)。今、吉野さんのお話途中です。

吉野:グミには男性的な部分と女性の部分も何処かにあって、たまたま好きになったのが女の子だったという感覚で、すんなりできましたね。

——おっしゃるとおり、私もグミに共感できました。

岩崎:ありがとうごさいます。(一同笑)

——岩崎監督は、元々エビ天で撮られていて、ゆうばりファンタでは93年に『フィリップ君。』が上映されています。その後ずっとコンペには応募されていたんですか?

岩崎:たまに出したりしていましたね。しばらく間が空きましたが、ここ何年かで再開した感じです。ずっとセクシャルなものを撮りたいと思っていたけど、どうしても男性本位な感じになるんですね。
女性監督なら割と客観的に撮れるんですけど。夜中のラブレターは朝読むと恥ずかしいけど、どうしてもそんなものになっちゃう(笑)。『ami?amie? つきあってねーよ!』は、主人公のグミとテツ、どちらも自分を投影していて、キャラクターを分けて考えたら話が上手く転がり出しました。

——どういう部分を二人のキャラクターに分けましたか?

岩崎:男性的なしようもない部分とそれを客観的に引いて見るボケとツッコミみたいな。どちらも自分にある面です。

——ミューズのケイコさんのキャラクターは?

岩崎:僕から見た憧れの人ですね。

——パンフレットに高校生の同級生の逸話や体験を元にと書いてありましたが。

岩崎:完全な実話という事ではなく、高校生の頃って特殊な閉鎖された環境で高校生なりの価値観がありますよね。ちょっとしたことで伝説になったりしますが、そういった経験を膨らませました。

——三人を選んだ理由と演出しての感想はいかがでしたか?

岩崎:高味さんは実際、テツと違っていやらしいところがなくて、ストイックでマスクもいい。ついついサディスティックに演出してしまいましたね。吉野さんは凜としていて清潔感があってグミにぴったりでした。立ち姿がスマートでいいですね。松井さんは技術を越えたところにがありましたね。醸し出される雰囲気が良かったです。
今まで素人の友達関係でやって来たんですが、初めてプロの役者さんに出ていただいて、基本の部分が出来ているのであとは微調整していくだけでした。助かりましたね。

——初対面の時に高味さんが「カフェで演技してくれ」って言われて「出来ません」と答えたと伺いましたが、その時はどうでしたか?

岩崎:その時に役作りしない時は素の状態で、キャラクターを作っていく人だって大体分かりましたね(笑)。クランクインしてからはいろんな事を話し合いながら作って行きました。

——作品の内容に移りますと、コンペ作品はセンセーショナルな題材を扱っていても常識的な着地点を迎える真面目な作品が多かった中で、この『ami?amie? つきあってねーよ!』は映画的飛躍があったので惹かれました。

岩崎:ありがとうございます。

——物語を飛躍させる感覚は、エビ天の経験などは影響してるんでしょうか。

岩崎:自主映画って自分の身近な題材になる事が多いんですよね。主人公自身が自主映画を撮っていたりクリエイティブなことで悩んでいるとか。多分アルバイトをしてることも多いので、アルバイトの描写がリアルだとか。そういうところから離れたところに世界を置きたいというのがあります。

——それぞれのキャラクターが、自分にとって大事だと思う方向を選んで進んでいくのが清々しくて良かったです。監督は人生肯定的にとらえている方ですか?

岩崎:今回やってみて、全部OKみたいなところに行き着いたので、そういう感覚がどこかあるんでしょうね。

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●ドタバタコメディかつ、性に対して真剣に向き合っている映画
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——コンペでは審査員の方から何かコメントなどありましたか?

岩崎:プログラミングディレクターの塩田さんからは「映像をいじっている部分が面白い」って言われました。

——メインビジュアルになっているテツとグミがバイクに乗るシーンは、背景合成ですが何故ですか?

岩崎:ノーヘルだからです(笑)

——アニメのバンクカット(★)みたいで“同じ事を繰り返している二人”が、面白い効果を上げていましたね(笑)。タイトルバックのアニメーションも面白かったですが、ご自分で作られましたか?
$gray (★:シリーズのアニメーションで、変身シーンなど毎回流用するカットのこと)$

岩崎:そうです。一日二日で仕上げました。スキャナが壊れてたんで、セブンイレブンに行って、A3で30円かかるんでなるべくA3の紙にいっぱいスキャンして。

——(事務局に)もう時間ですか?

岩崎:おかしいなあ!

——そりゃみんな来ないからおかしいなと思ってましたよ!(一同爆笑)

松井:こういう方なんで分かって頂けたかと(笑)

——よく理解できました(笑)。では最後に観客のみなさんに一言お願いします。

高味:ドタバタコメディであり、性に対して真剣に向き合っている部分もあります。疾走感のある映画なので楽しんで頂ければ。

吉野:気張らず観られるに娯楽作品です。私もそういう作品が好きなので楽しんで頂けたらなと思います。

松井:仕上がったものを観て、面白かったな笑ったなと言う感じ。皆さんも同じように感じて頂けたら。

岩崎:ヒドイことが次々起こる中、主人公たちが前向きに乗り越えていく姿を楽しんで頂けたらと思います!

執筆者

デューイ松田

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