ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された作品が次々公開中、または公開待機中となっている。関係者のコメントと共に紹介したい。

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■『バナナvsピーチフェス in新宿』■
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男性監督と女性監督、紋切り型の批評で捉えられることが多いが、果たして本当に違いがあるのか?そう考えた小林でび監督の呼びかけで、生まれた短編オムニバス企画『バナナVSピーチ』。

男性4人女性4人の監督達が4セットの男女ペアになり、同じテーマ・同じ俳優2名を主演に短編映画を1本づつ撮るというもの。

企画の面白さと監督たちによる歌謡PVまで作ってしまうイベントとしての完璧なパッケージングで、ゆうばりファンタではファンタランド大賞・イベント賞を受賞。閉会式の裏にもかかわらず100人超す観客を動員した。

現在、新宿K’s cinemaにて6/8〜6/14までの日程で大好評公開中となっている。

【テーマ:煩悩】 天野千尋『色即是空』vs小林でび『煩悩力』
【テーマ:罪】 岨手由貴子『共犯者たち』vs平波亘『ウィンターズ・レコード』
【テーマ:痛覚】 前野朋哉『筋肉痛少女』vs上原三由樹『雑音』
【テーマ:記憶】 加藤行宏『ラジオデイズ』vs熊谷まどか『世の中はざらざらしている』










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『共犯者たち』(岨手由貴子監督)
『ウィンターズ・レコード』(平波亘監督)
主演・長谷川初範さん
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“罪”をテーマに、サンタ姿で娘の前に現れる自称・父親と夫婦の危機を迎えた歳の差夫を演じた長谷川初範さん

「僕は元々インディペンデントで作っていた人間で、今村昌平さんの日本映画学校(現・日本映画大学)の二期生。既存の形にこだわるタイプではないし、アーティスティックな仕立てのものを作りたい、観たいといつも思ってるんです。彼らとの出会いで朝から晩まで映画漬けの学校時代に戻れたようでした」

「『ウィンターズ・レコード』の平並くんは今までの作品から気難しい感じがしましたが、会ってみると明るく大らかな方。脚本についてもっと平波くん自身が出たほうがいいし、起承転結には拘らない方が面白いんじゃないのと話をすると、お父さんの特異で訳の分からないキャラクターが出てきたり、柔軟に対応してくれました」

「『共犯者たち』の岨手さんは、きっちりと繊細な女性目線を持っていらっしゃる方。前の作品観ると色彩豊かで絵作りが上手い、世界に出られる才能ある監督だと思います。
今回は低迷期にある夫婦の問題を描いていて、僕は結婚して何十年も経っているから結婚はシェアだと思っています。彼女の中の理想論について、違うかなという部分もじっくりディスカッションできて面白かったですね。それを考えさせるのも映画ですから。どちらの作品も完璧ではないけど、挑戦したことが次のステップになるし、彼らにとってもそうあってほしいです」

「今回は企画自体が明るくて、本来日本では作りにくいタイプのもの。小林でびさんが率いてPVで監督たちが歌って踊るパフォーマーとしての明るさは、日本人離れしていて楽しかったですね。みんなとの交流が刺激になって、また頑張ろうと思っています。作り手はそれぞれ孤独なものですから、いい場所を提供して頂きました」

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『雑音』上原三由樹監督
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“痛覚”をテーマにした上原監督は、『高校生ブルース』(主演・関根恵子)を連想させる展開に、フェティッシュな作風を生かして現代ならではの作品を完成。

「お客さんからは「男女の括りでなく人間はそれぞれだね」という感想を頂きました。
前野朋哉監督はみんなが経験したことがある直接的な痛み、私は想像が肝な痛みで差をつけました。学生を離れて大分経つので高校生の感覚を呼び起こすのに苦労しました。それぞれのキャストの違う面を描けたのでぜひ観てください」

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プロデューサー・植山英美さん
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普段は映画宣伝、海外セールスとして活躍中の植山さんは、今回が初プロデュース。

「役者を万華鏡で映し出して、どの部分を切り取るかでこんなにも違う作品になることを楽しんでいただけたら。才能のある監督をショーケースのようにして広く紹介できる機会になれたらと思います」

「キャスティングに関しては、普段私たちには手の届かないような方々が、脚本を気に入ってくださり相思相愛のような形で出演して頂けて感謝しています」

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『煩能力』小林でび監督
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おばけ、UFO、超能力といった非日常な現象を日常感覚で魅せる偉才・小林でび監督。今回のテーマは“煩悩”。

「映画を見せるだけじゃなくお客さんとコミュニケーションを取ることを常に考えています」

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭では名物となっているでび監督の企画力は、観客の煩悩を的確につかんでいると言える。
東京だけでなく地方上映の続報も期待したい。

執筆者

デューイ松田

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