歴史遺産と多様な文化、美しい光と色彩に満ちたハバナの街
そのエキゾチックで奥深い魅力を刻み込んだ珠玉のアンソロジー

“カリブ海の真珠”とも呼ばれるキューバの首都ハバナは、希に見るほどのユニークな個性に満ちあふれた国際都市として世界中の観光客を魅了し続けている。文豪アーネスト・ヘミングウェイがこよなく愛したことでも知られるこの美しき街は、世界遺産に登録されている旧市街地など多様な様式の歴史的建築物が建ち並び、ノスタルジックな旅情を誘ってやまない。カリブ海を臨む白浜のビーチ、ナイトスポットを活気づける本場のキューバ音楽とダンス、陽気でバイタリティあふれるラテンの国民性……。こうしたキューバ=社会主義国というイメージからかけ離れたハバナの街の多面的で奥深い魅力を余すところなく収めた珠玉のアンソロジー、それが『セブン・デイズ・イン・ハバナ』である。




デル・トロさんは元々監督になりたかったんですか?
いや、そういう訳ではないんだ。ただ、私は20数年間俳優業をやってきて、撮影の際に「自分だったらこのアングルで撮るのにな」「自分だったらこういう展開にするのに」などを時々考えたりすることがあったので、今回監督をしたというのは自然な流れなのかもしれない。いつか映画の登場人物を演じるというだけでなく、全体的に関わっていきたいと徐々に思い始めたんだ。ある日、朝起きて監督になりたいと思ったわけじゃないんだよ。今回の撮影は思ったようにある程度出来たと思うが、予想よりもポストプロダクションに手こずったよ。ただ、それが物語を形成する重要な要素で、ものすごく楽しかったんだ。監督をしてみたいと思ったきっかけは、故新藤兼人監督と出会い、影響された時期でもあるんだ。ただ、今回は短編だったので、自分がきちんとした監督になったとは思っていないけどね。2時間くらいの長編を撮らないと監督になったとは言えないね。

この映画に関わったきっかけを教えてください。
プロデューサーから、「これからの数年間で、ハバナは急速に変化するはずだ。歴史的に重要な時期を迎えたハバナという街の魅力を残すのは今しかないから、キューバを舞台にした映画を作ろうと思うんだけど、今回は監督として参加しないか」と誘われたんだ。以前から監督することに興味があったので、じゃあやってみようかと。他の監督によっては、自分でストーリーを変えた人もいるらしいが、私の話は脚本家であるレオナルド・パデューラが書いたものに沿って撮影したんだ。

どんな内容の作品なのでしょうか?
ジョシュ・ハッチャーソンが演じるテディは、初めてキューバに降りたったアメリカの俳優という役なんだ。私自身も、初めてキューバに来たアメリカの俳優なので、自分と主人公には多くの類似点がある。言葉の障壁や、カルチャーショックなどだね。テディは最初は戸惑いながらも徐々にキューバ人の気質を受け入れ、キューバのことを好きになっていくんだ。たとえ経済的に厳しかったりいろんな問題を抱えていたとしても、キューバに住む人々は、それを踏まえながらも皆で一緒に生きようとしている。私は、それは多くの国が失ってしまった大切なものが、まだキューバにはあるのではと思う。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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