百貨店で接客を務めるユン・ジウ(キム・ヒョジン)は、型どおりの良い社員像をなぞるだけの仕事をこなす毎日。マネキンを自分の身代わりにした自殺の儀式が事故を引き起こしたことをきっかけに、スリの少女カン・ジウ(キム・コッピ)と手錠でつながれてしまう。男性の関係にあきらめを抱いていたユン・ジウと奔放なカン・ジウの間に特別な感情が流れ始める…。

ドラマ『メリは外泊中』のキム・ヒョジン、映画『息もできない』のキム・コッピを主演に迎えた本作。キム・スヒョン監督は『SO Cute』に続く長編2作目となる。死の疑似体験をきっかけに同性愛に踏み込んでいくヒロインの過去と、終わった恋に翻弄され続ける現在の時間軸を奔放かつ繊細にクロスさせながら、再度死の疑似体験を経たヒロインを2度目の誕生に導いていく。

2010年に釜山国際映画祭でワールドプレミア後、2011年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で招待上映、第61回ベルリン映画祭にも出品された本作。いよいよ12月8日より韓国で公開される。ヒロインのキム・ヒョジンは、12/2に俳優のユ・ジテと結婚という華やかなニュースも飛び込んできた。もう1人のヒロイン・キム・コッピは主演『マジック&ロス』(リム・カーワイ監督)が大阪・シネ・ヌーヴォで公開中だ。
今後『恥ずかしくて』の日本での公開にも期待したい!




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■■思い出を共有する二人
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——同性愛というデリケートなテーマを扱っていますが、役柄のどういったところに惹かれてオファーを受けましたか。

キム・ヒョジン:同性愛のことは大きな問題ではありませんでした。私が演じたユン・ジウは恋愛に失敗していて、社会的にも他人との関係にも距離を置いていました。それがカン・ジウ(キム・コッピ)に出会うことによって、人間として成熟していく。そんな姿に心惹かれました。

キム・コッピ:カン・ジウは実に強いキャラクターです。自分が今まであまりやったことがないタイプのキャラで、個性が物凄く強い。彼女の過去の人生の中に、父親との関係という物語があるところに魅力を感じました。

——二人がお寺で雷を見る印象的なシーンがあり、その体験をすることで二人が宝物を共有できたと思いました。そのシーンでのキム・スヒョン監督の演出はいかがでしたか。

キム・ヒョジン:監督の演出に特別な注文はなかったです。手錠に繋がれた二人が車の中で気持ちを共有してお寺に行く、次の段階で雷を見ながら心が繋がる、そんなシーンをよりよく表現しようと頑張りました。彼女にとっては初めての経験だから、何もないところから思い出が生まれる、それを表現するために出来る限り頭のなかを真っ白にして演じました。

——ユン・ジウの心情が伝わるいいシーンだと思いました。

キム・ヒョジン:アリガトウ(日本語)。私も好きです。

——カムサハムニダ!ではキム・コッピさんはいかがでしょう。

キム・コッピ:現在のカン・ジウが、火を灯してユン・ジウに見せるシーンでは、過去に自分がお坊さんからもらった暖かい思い出をユン・ジウと共に感じたいと願う、そんな思いを伝えたかったです。次のシーンでは雷を見ながら自然の偉大さに精神が震えて、頭の中がちょっと複雑になる、そういったところまで表現したいと思いました。

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■■他人を受け入れられない悲しさ
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——非常に豊かなシーンになっていたと思いました。その後のシーンで面白いと思ったのが、それまで二人は手錠でつながれている事で特別な感情が増幅していたと思います。朝になると手錠が外れていて、その手錠でカン・ジウとお坊さんが遊んでいる。カン・ジウに気持ちが傾いていたユン・ジウが、はっと我に返るという描写がありました。その辺は演じていかがでしたか。

キム・ヒョジン:最初はカン・ジウとユン・ジウがいやおう無しに手錠で繋がれている状態でユン・ジウの方から愛情が生まれて、カン・ジウはちょっと拒む、そういった状況です。朝起きてみると手錠がない。追いかけてみるとお坊さんと一緒に手錠で遊んでいる。直前にファースト・キスを済ませた間なのに、自分が恥ずかしくなってくるし情けない。韓国でお坊さんは結婚できません。性的な生活を禁止されてるからみんな男とは思わないんです。それなのにジウがお坊さんを男として見てしまうくらい衝撃を感じたというシーンでした。

キム・コッピ:お坊さんとの関係については、自分だけの秘密だから誰にも言ってないんです。カン・ジウが他人を拒むのは、自分を守るためです。自分の世界の中に誰かが足を踏み入れるのが怖くて仕方ないんです。ユン・ジウと手錠で繋がれている間は情熱を感じていて、我に返ってみるとそれも恐ろしくなってくるんです。ユン・ジウが自分の世界にもっと踏み込んできたらどうする?という恐れでわざとお坊さんとの仲を見せ付けた面もあるんです。自分たちだけの思い出の手錠を使ってお坊さんと一緒に遊ぶことで、「私の世界はあなただけじゃないんです」ということを強調したかったんです。

——後半の展開に向けて重要なシーンでした。

キム・ヒョジン:映画をそこまで詳しく観て下さって感謝します!

——こちらこそありがとうございました!『恥ずかしくて』は「共感」についての映画だったと思っています。二人が様々なことを「共感」し、お互いの心の中に歩み寄り、踏み込んでいく。そこで求める者と拒む者の軋轢が生まれて行く訳ですけど。残念ながら時間がないようです(笑)。

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■■初めてのゆうばりは
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——最後にゆうばりに来られた感想をお願いします。

キム・ヒョジン:ゆうばりは初めてですが呼んでくださって光栄と思っています。韓国で作った映画なのでこれが日本にも通じるかどうか心配したんですけど、今お話を伺って日本人の方とも気持ちを分け合えたことをありがたく感謝しています。

——私も嬉しく思っています!

キム・コッピ:私も初めてで、自分の想像の中で北海道というのは雪国のイメージだったんですが、その想像通りの美しい雪の街でした。温泉も良かったし、ゆうばりの方々も純粋で、特に列車で駅ごとに歓迎してくださったのが本当に感動しました。街のあちこちにある映画の古い看板が可愛らしく素敵でした。ありがとうございました!

執筆者

デューイ松田