1969年から1979年にかけて少年画報社の漫画雑誌「週刊少年キング」に連載された「ワイルド7」が待望の実写映画化。悪人からスカウトされた白バイ警察官が、「法規的存在」を超えて、悪人を問答無用で裁く(射殺する)という、痛快アクション漫画。各キャラクター、メカのバリエーションや迫力あるアクション、ダイナミックでスピード感溢れる描き方などが魅力で、当時としては革新的なストーリーと、アクション映画を思わせる作画展開が絶大なる人気を集めた。

そんな「ワイルド7」に欠かせない要素といえば、スピーディーなバイクアクションと迫力のガンアクションであろう。本作では、ワイルド7メンバーに扮する出演者全員が大型免許を取得して、個性豊かな改造バイクを駆り、リアルさをとことん追求した、本物のアクションを披露している。ワイルド7のメンバーに、瑛太、椎名桔平、丸山隆平、阿部力、宇梶剛士、平山祐介、松本実が扮し、ワイルド7を操る警視正・草波役に中井貴一、物語の鍵を握るヒロイン・ユキ役に深田恭子、事件を追う新聞記者役に要潤、本仮屋ユイカが扮するなど、豪華キャストが集結した。

悪〈ワル〉が悪〈あく〉を裁くという、斬新かつ痛快な設定が人気を博し、原作の連載開始から40年以上が経った今でも、アクション漫画界の不朽の名作として、支持され続けている本作のメガホンをとったのは、「海猿」シリーズを空前の大ヒットに導いた羽住英一郎。今回は、壮大なスケールの感動ドラマと迫力のアクションを得意とする羽住監督にインタビューを行った。




−−『ワイルド7』といえば、荒唐無稽なアクションが持ち味の作品です。監督がこれまで手掛けた作品で言えば、『海猿』がリアリズムにこだわったアクション作品であり、「逆境ナイン」が荒唐無稽の極致ともいうべき作品でした。そういった両軸に振れた作品を作ってきた監督にとって今回のアクションはどのように位置づけで考えられたのでしょうか?

「荒唐無稽な原作の良さを活かしつつ、映画として破たんしないギリギリのレベルでのバランスには気をつけた感じですね。理詰めで考えていくと、実写映画としては成立しない世界観なんですが、とはいえ、理詰めで考えすぎて原作から離れすぎてしまうと『ワイルド7』ではなくなってしまう。やはり『ワイルド7』って面白いですからね。ですからなるべくオリジナルの良さは活かしつつ。それでいて、原作を知らない人が観てもついてこれるような話にならないようにしないといけないは思いました」

−−むしろ本作を『逆境ナイン』のように荒唐無稽の極致のような作品にすることも出来たはずですが、あえてそこは狙わなかったのは?

「『ワイルド7』を荒唐無稽の極致にしてしまうと、予算と見合わない作品になってしまう。多くの人に見てもらえる作品にしないと企画が成立しないですからね。それも含めて『ワイルド7』は難しい企画でした」

−−本作の脚本に1年かけたと聞きました。この長い原作を映画化するにあたっては、さまざまなアプローチがあったと思うのですが、映画のベースになったのは、みそっかすのユキが初登場する「コンクリートゲリラ」編ですか?

「そうですね。『コンクリートゲリラ』が一番映画っぽいエピソードですからね」

−−脚本に1年かけたというのは、具体的にどのあたりに時間がかかったということなのでしょうか。

「主人公たちの立ち位置ですね。ワイルド7は元犯罪者でもある傭兵ですが、やっていることは人殺しですから。映画を観ている人に彼らを受け入れてもらうためには、彼らが次第に人殺しをしなくなることで成長のドラマにつなげていくというやり方もあるわけです。ただしそれでは『ワイルド7』自体を否定することになってしまう。もちろんそれは出来ないということで、物語の落としどころをどうつけるかが難しかったですね」

−−そしてワイルド7が誰と戦うのかということも重要になります。

「そうです。本人たちの居場所もそうですし、敵をつくらなければいけなかった。アクションとして派手さを出すために、敵となる武装集団を出さなきゃいけないけども、当然日本にはそういう武装集団はいないわけなんですね。そうすると今、日本でそれだけの銃器を持っているのは警察か自衛隊だけですよね。ワイルド7は警察組織なので、逆に警察から犯人扱いされることで、そこで戦う話にしようとしたわけです」

−−今回は、ワイルド7のメンバーの中で、パイロウやソックス、B・B・Qといった名称に変わったキャラクターがありますが、この変更の理由は?

「もともとワイルド7のキャラクターって特殊というか。ビジュアル的にも、あの時代だから成立した部分がありますから。なるべく原作に生かしたものにはしたかったけども、(原作から40年以上の時を経た現在では)たとえば八百と言われても若い人にはピンとこないのではないかということもあり、名前を変更しました」

−−話は変わりますが、ソックス役の阿部力さんのバイク運転のテクニックには驚かされました。

「あれはすごい技なんですよ。しかもハヤブサという重いバイクですからね」

−−もちろん彼だけでなく、全員がバイクをきちんと乗りこなしていることに感心しました。

「瑛太も大型の免許を持っていますし、丸ちゃん(丸山隆平)だけですね。ただし彼も、撮影前までに大型の免許を取ってもらって。クランクイン前ギリギリで間に合いました(笑)」

−−バイクを使った撮影は大変だったのでは?

「バイクはやはり距離が必要になりますからね。ロケ場所も含め、撮影方法など、スピード感を活かすためになかなか大変でした」

−−あれは一般の公道で撮影をしているんですか?

「そうですね。基本的には大分県の一般道を封鎖したり、北九州の高速道路で撮影したりしました。やはり法定速度を守って撮影しているとスピード感が出ないので、きちんと封鎖して撮影しないと成立しないんですよ。ですから、一時的に占有許可をもらって。ただ、封鎖すると誰もいない道路になるので、逆に地元の人たちに車で来てもらって、エキストラとして走ってもらっていました」

−−原作ファンの多い作品だと思いますが、これから映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

「いろいろな世代の男の子、女の子が観て楽しめる映画になったと思います。『ワイルド7』は原作が面白いですが、若い世代では読んだことがないという人も多いと思います。そんな若い人にとっては、見たことのない新しい映画が来たぞと思ってもらえればいいですね。原作をまったく知らなくても楽しめる作品だと思うので。そこから原作に興味を持ってもらえればいいわけですしね。もちろん原作ファンにも楽しんでもらえると思います。最初は(原作と)ここが違う、といったことを感じるかもしれませんが、観ているうちにそんなことを忘れて楽しんでもらえるような映画になったと思います」

執筆者

壬生智裕

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