1996年に創設され、いまやアジアで最も注目される映画祭に成長したといっても過言ではない韓国の釜山国際映画祭。その映画祭と、会場である釜山広域市では長年、釜山を舞台にした映画をつくりたいという思いがあった。2009年、両者の思いは〈釜山プロジェクト〉として具体的に動き出した。
選ばれた三人の監督は、『怪盗ブラック・タイガー』などで日本でも知られるタイのウィシット・サーサナティアン、日本の行定勲、韓国は『地球を守れ!』チャン・ジュナン。

圧倒的な完成度で魅了するのは、行定監督の『Kamome』。少女を演じた吉高由里子の透明感ある美しさと、撮影監督を演じた名優ソル・ギョングの視線、仕草、涙といった演技の一つひとつが心に沁みる。
行定監督と作品に取り組んだソル・ギョングに聞いた。


●「カメリア」に出演した経緯について
今回出演した「kamome」は脚本もとても素晴らしかったし、なにより行定監督からのオファーだったのですぐにOKしました。断る理由は無かったですね。

●共演した、吉高由里子さんについて、印象はいかがでしたか?
強烈な「匂い」をもった女優さんだね。「香り」じゃなくって「におい(日本語で)」。彼女の撮影期間は5日間だけだったけれども、すぐにスタッフやキャストの心をわし掴みにしたんだ。そして撮影が終わってしまうと彼女が演じたカモメのようにこつ然と姿を消した。私たちは彼女の残した足跡寂しさを強く感じたよ。言葉は通じなくてもハートでコミュニケーションをとれる素晴らしい女性だと思う。

●行定監督と仕事をすることについて。
本当に楽しかった。日本の監督とは初めて仕事をしたけれど、ときめくような時間を過ごすことができたよ。最近の韓国映画は、作品も撮影もとってもスピーディーで、じっくり映画について考える暇もないんだ。でも今回、監督は私に十分な時間をくれた。流れに身を任せるように現場に溶け込んでいくことができたし、撮影が始まってもデジタルではなく、フィルムが回るカタカタという心地よい音とともに、とても長い息遣いの中で芝居をすることができた。それは役者にとっては最高に興奮する瞬間なんだ。

●「kamome」という作品について
日本的な情緒を感じる作品だと思う。韓国映画はストレートで、伝えたいことを直接表現することが多いけれど、幻想的な雰囲気、儚い情緒を持った「kamome
は、舞台は釜山だけれども、日本の良さを感じる作品です。

●俳優として常に心がけている事は?
俳優として普段から特別に心がけているということもないんです。毎日学習しているつもりでも、なかなか上手くいかない自分に苛立ちを感じたり、辛くなったりすることもある普通の人間です。でも、「平凡であろう
と努力はしているかもしれない。あなたの隣に住んでいる人を自然に演じるために。だから皆に交じって、街の屋台でビールを飲んだりしているんですよ(笑)

執筆者

Yasuhiro Togawa

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