『SUPER8/スーパーエイト』、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』、『カウボーイ&エイリアン』等、地球を狙うエイリアンたちが様々な星から飛来し、我々の生活を脅かしている。そして、お隣・韓国にも地球を滅亡へと陥れる恐ろしいエイリアンがやってきた。そのエイリアンとは、ビキニを着た美女。彼女が求めているのは、純潔の精子。そして、一人の男に狙いを定めた。ひとり立ち向うのは、30年間童貞のピュアな青年・ヨンゴン。生涯にたった一日だけ子供の産める体となった美女エイリアンは、純潔の精子を手に入れるため、あらゆる手段を使って襲い掛かる。誘惑に負けることは地球滅亡を意味する。刻々と過ぎる24時間というタイムリミットのなか、真に愛する人に出会うまで己の貞操を誓ったヨンゴンは、美女エイリアンの誘惑に耐え、地球を守ることができるのか。奇想天外なアイディアと鮮烈なビジュアルセンスで描く、誰も観たことのないSFサバイバル・ムービー、それが『エイリアン・ビキニの侵略』だ。

 美女エイリアンを体当たりで演じるハ・ウンジョンのセクシーな魅力、ピュアな青年を演じるホン・ヨングンがノースタントで挑む壮絶なテコンドー・アクション、VFXを駆使して描かれる独創的なイマジネーションの嵐、SF、ホラー、コメディ、サスペンス、そして、愛……娯楽映画のすべてを詰め込み、観客をとことん楽しませ感動させる本作は全方位型の極上エンターテインメントと言えるだろう。

 本作は『隣のゾンビ』に続く、キノマンゴスチンの第2回作品として自主制作され、2011年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター・コンペティション部門に出品されるや、同部門に応募された347作品の中からノミネートの一本に選ばれ、さらに審査員である林海象監督、『チェイサー』のナ・ホンジン監督ら、錚々たるメンバーからの大絶賛を受け、見事グランプリを獲得。しかも、同部門のグランプリ受賞作としては初の外国作品という快挙を成し遂げた。ゆうばりからは『マイ・バック・ページ』の山下敦弘、『さんかく』の吉田恵輔、『SR サイタマノラッパー』の入江悠ら、新進気鋭の映画監督たちが毎年飛び出しているだけにヨンドウ監督の今後にも期待が高まる。

 今回は、この低予算を全く感じさせない映像センスで、韓国インディーズ映画界の雄として高い評価を得ている新鋭オ・ヨンドウ監督にお話を伺った。


−−いよいよ日本公開が決定しました。おめでとうございます。

「自宅で撮った小さな映画が海を越えて日本で公開されるというのは、不思議でもあり、うれしくもあり、わくわくしています」

−−そもそもゆうばり映画祭に本作を出品しようと思ったのは?

「(前作の)『隣のゾンビ』で夕張に行って、ゆうばりがとても気に入ったので、次回作ができたときからゆうばり映画祭に出したいと思っていたんです」

−−本作でエイリアン、前作がゾンビということは、そういうジャンル映画が好きなんですか?

「たしかにジャンル映画は好きなんですが、映画は基本的にジャンルを問わずに見ています。すべてのジャンルが好きですなんです」

−−主演の二人、ホン・ヨングンさんとハ・ウンジョンさんは、映像製作集団キノマンゴスチンの仲間なんですよね。

「キノマンゴスチンというのは有機的につながっている組織ではないので、この人がメンバーだとか、この人はメンバーではないという形でくくることは出来ないんです」

−−すると、作品ごとに集まってきた人でキノマンゴスチンが形成されるということなんですね。キノマンゴスチンの主催はヨンドウ監督なんですか?

「いえ、ぼくの奥さんです。彼女はプロデューサーであり、料理人であり、メイクなどなんでもこなしてくれます。彼女は、もともと商業映画でメイクアップアーティストをやっていたんですよ」

−−ホン・ヨングンさんとハ・ウンジョンさんをどう評価していますか?

「この映画では、現場でいろんなことを作り上げていくという共同作業という形態でとっています。アイディアも必要になりますし、現場で起きたことに対応できるオープンマインドが必要となる。こういう共同作業がないと一緒にできない、そういう意味で二人はすばらしい俳優だと思うし、俳優というよりはむしろ映画人だと思いますね」

−−脚本のクレジットに、「オ・ヨンドウ&アクター」と書いてあったと思うのですが、それはまさにそういうことですか?

「そうです。私が渡したのは、原稿用紙一枚でこういうフォーマットだと示したものでした。とにかくとことん話し合うと、次第にみんながいいと思えるようなアイディアにたどり着くんです。セリフもキャラクターもすべて共同作業をして作り上げました」

−−ゆうばり映画祭でグランプリを獲得して、支援金をもとにした次回作は探偵ものになると聞きました。これはやはりゆうばり映画祭の審査員だった林海象監督の影響なんですか?

「林監督の影響は大きいですね。さらに制作費の一部も負担していただきましたし、林監督抜きには欠かせない映画ですね。メンターとしての役割も担っていただいています」

−−具体的にどういうことを学びました?

「映画つくりにおけるスピリットですね。映画を作るうえでの自信というんですかね。林監督とはいろんな話をしましたが、特に印象深かった言葉は、映画監督は、いつでもくびになったり、映画を続けられないときもある。自分にとっては最後の監督作になるかもしれないという立場であると。だから無条件にやりたいことをやるべきだ。もしやりたいようにやれないうちに映画が撮れないようになってしまったら、それほど悔しいことはない、ということでした」

−−それでは最後に、今後の活動はどのようにされますか?

「映画は撮り続けたいですね。もともとは商業映画の現場にいたので、今後は商業映画も撮り続けていきたいと思っています。インディペンデント映画に関しては、キノマンゴスチンはまだまだ力のない団体ですけども、今はいろんなやりたいことが出てきている段階で、低予算のジャンル映画を作り続けていくことには、ある種のシステムにするということが大事になっていきます。ですから、キノマンゴスチンを会社組織にして、きちんとインディペンデント映画を作っていくためのシステムを作っていきたいと思っています。低予算映画は、情熱だけでは作っていけない。わたしたちにとっては、きちんと生活の手段を解決した上で作っていかないといけないと思います」

執筆者

壬生智裕

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