芸人・前田健が初監督、脚本を担当した話題作『それでも花は咲いていく』が5月7日遂に公開された。
原作も前田自身が書き上げた同名小説であり、セクシャルマイノリティーな人々を題材した9つの短編からなる。その中の「エーデルワイス」「ヒヤシンス」「パンジー」の3つを映画化。
今回は「エーデルワイス」に主演される俳優・仁科貴に話を聞く。

Q:撮影時の印象的なエピソードをお聞かせください。

この作品の撮影は、まず京都から始まったんですが、タイトなスケジュールだった為に、
せっかくの生まれた土地なのに、お墓参りもしないで後にしたのは初めてでしたね(笑)
でも京都ロケは少人数だったので、ワンテイクごとに皆でモニターをチェックしながら
撮影が進んで行ったんです。とても家族的な雰囲気で、しかも生まれ故郷で撮影を
スタート出来たのは良かったと思ってます。
本作では過去に傷があり、ひっそりと健気に生きている主人公に共感しました。
台本を頂いた時、自分の持ってるきれいな部分もそうでない部分も
全て吐き出せるような気がして、この役だけはどうしても演りたいと思いました。
この作品を演じるにあたってうまくいかなければ死ぬ覚悟で演じました。

Q:主演の「エーデルワイス」での印象的なシーンは?

全て印象的なんですけど…
相手役である子役・ 大出菜々子さんが泣く演技があるんですが
自然と涙が流れていて、役者として持っていかれたなって思いましたね(笑)
感情込める時なんかは、段取り、テスト、本番、さらにアングルが変わったり、気持ちをキープするのが難しいんですが、プロフェッショナルだなと関心しました。

Q:本作では「禁断の恋」をしてしまう役でしたが
演じるにあたってのポイントはありましたか?

ただただ恥ずかしかったですね(笑)
相手役の大出菜々子さんからどう見られているのか気になりました。

Q:本作で初めて監督を経験している前田健さんについてお聞かせください。

前田監督とは深作健太監督の『完全なる飼育 メイド、for you』という作品で演者同士として知り合い、一年後に突然この作品のオファーをいただきました。
普段監督とは積極的に関わったりしないのですが、僕も初主演でしたし、前田監督も初監督という状況なので、監督と一緒になって作品を作り上げているという感じがしました。
監督ご自身も演者をやられてるからか、こちらが迷ってる時にはいち早くキャッチして、日常的な事に例えて教えてくれたり、ヒントを下さったり。
今回の現場はほとんど初めての方ばかりだったんですが、直ぐにうち解けて信頼関係を築く事が出来ました。かと言って決して慣れあう事もなく、友達以上、友達未満といった感じの、大変心地よい緊張感の中でお仕事させていただきました。これもひとえに前田さんのお人柄によるものだと思います。

Q:タイトルになっている「エーデルワイス」ですが
「尊い思い出」「大切な思い出」という花言葉があるのですが役者としての「大切な思い出」などありましたらお聞かせください。

あ〜ツライ思い出しかないですよ(笑)
でも今回の作品は本当に「大切な思い出」になりました。
初主演ということもありましたが、タイトなスケジュールだった事なんかも全て含めて。毎日こんな日が続けばいいのになんて思ってました。
それと僕は京都出身だからか、やっぱり自分なりに分岐点となる作品は結構関西弁の役であることが多い気がします。今回の舞台も京都ということで、書かれた台本もより京都弁らしく工夫させていただきました。

Q:本作も含め今年は7月公開の『極道兵器』などの出演作もありますが今後はどういう俳優を目指していくのですか?

『極道兵器』では父のように演じてみて欲しいと言われて、一生懸命に演じてみました。でも到底敵いませんし、やっぱり父と自分は違うんだな…という想いにも駆られましたね。
どの作品も、全ての作品が僕にとっては人生の「エーデルワイス」です。
今後もいろんな脚本に出会いたいですし、いろんな役にチャレンジしていきたいと思います。

6月4日からは山田風太郎原作の『くの一忍法帖 影の月』で「くの一」のお頭役を演じる(銀座シネパトスほかにてレイトショー)7月からの出演作『極道兵器』はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2011でワールドプレミア上映され好評を得た作品である。本作では「静」の演技を好演している仁科だが『極道兵器』では「動」の演技、その幅の広い演技力に今後も期待したい。

公開情報
5月7日より、テアトル新宿、キネカ大森ほか全国順次ロードショー
©2011 「それでも花は咲いていく」 フィルムパートナーズ

執筆者

有城裕一郎

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