人生の選択には、意味がある— 一人の男が語るいくつものストーリー。誰でもない男が本当に歩んだ人生は?

2092年、人が死ぬことがない世界。ニモは118歳の世界最高齢で最後の”死ぬ”人間である。死を目前にしたニモに世界が注目する中、一人の新聞記者が質問する。
—不死となる前の世界とは?ニモは今まで語られる事のなかった誰も知らない過去を語りだすが—

『トト・ザ・ヒーロー』『八日目』から13年ぶりのジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作映画『ミスター・ノーバディ』が待望の公開!舞台は2092年、人が死ぬことのない世界。118歳で世界最高齢となった主人公が最後の死を迎える運命にだった。

デビュー作『トト・ザ・ヒーロー』でカンヌ国際映画祭・最優秀新人監督賞を受賞し、最新作では死を目前にした老人を主人公に壮大なスケールで描く。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督に撮影秘話を聞く。





−−−子供たちが沢山登場しますが、撮影する際のエピソードを

ほか人は、子供と一緒に仕事をすると大変だと聞きますが、私にとっては難しいことではないです。俳優にとって最大の資質はすばやく感情を理解することで、5歳の子供でも備わっているものです。『八日目』に出演していたパスカル・デュケンヌもそうであって人の感情を読み取る力は優れています。

子供は自分の演じることに対してそれほど自信をもっているわけではないので、
今回ティーンエイジャーの俳優も起用していますが、彼らは思春期の真っ只中で、その思春期の分岐点でもあって、いろんな可能性をもっています、彼らにも演じる人物と共感する点もあったようです。

−−−監督の創作活動は、今回は長い期間かかっていますが、どのように作られるのでしょうか?

映画学校に通っているときは、先生が脚本家がどれだけ執筆活動をやっているかは、パンタロンの裾をみれば分かるものだと言われました。どれだけ動き回っているか分かるんだと。
毎日毎日、集中して約3時間、約3ページの執筆活動をしています。その中で最後に1ページくらいしか残らない場合がもあります。そんな私の創作活動はゆっくりと進むのですが、いろんなカードにアイディアを書いて、そのカードをいくつもいくつも積み重ねて、その間には自分がどの方向に向かっていくのかも分かっていません。その中で同じアイディアがいくつか表れる場合があります。100数のアイディアを3つのテーブルにわけ、第一幕、第二幕、第三幕・・・と作られ、その中からアイディアをまた積み重ねて、そこから実際にストーリーを書いてみます。そのストーリーをまたカードに分解してみたりします。オーソドックスかもしれませんが、カード分類とストーリー作りの往復をしながらやっていくと1年くらいかなぁと思っていると実際には6年くらいかかってしまいます。この方法は、私が唯一の驚きをもって書き続けられる方法だったりします。
もし、最初っから行き先が決まっていて書いているのなら、飽きてしまうかもしれないですね。

−−−今回のストーリーには監督個人の実話があるのでしょうか?

無いようにしています。具体的なエピソードは無いとは思いますが、感情面ではティーンエイジャーの頃のどういうものを選択したらいいのだろうかなどを悩む心、大人になったらこうしたほうが良かったなぁと思う気持ち、老人になったら、まぁすべて良かったんだよなぁと想う感情面はあると思います。1つあるとすれば、映画の中にはありませんが、自分が8歳の頃にドイツからベルギーに引越しをしたときに、このままドイツに残っていたらどうなっていただろうかと想像するということは私にはありました。

−−−個性的な演技をするサラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファンを起用した理由は?

キャスティングに関してはティーンエイジャーの俳優選びは一番時間がかかるだろうなぁと思っていましたが、実際には早く決まりました。特に16歳のニモを演じたトビー・レグボ 、彼にいたっては撮影の2年前に決まっていました。サラの場合は、即答で出演を快諾してくれました。 ダイアン・クルーガーの場合は、すでに撮影中でシナリオを読んで頂き、翌日には撮影現場に来てくれました。
リン・ダン・ファンに関しては、自分が思っているアジア女性にもつイメージにあっていました。

−−−このようなスケールの大きい映画になることは、執筆中に作れのだろうか恐怖心は無かったですか?

無い!
この映画を作るんだという強い意思がありました。

  
  

執筆者

Yasuhiro Togawa

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