2/5(土)より十三・第七藝術劇場を皮切りに関西で順次公開となる『たまの映画』。
元メンバーの石川浩司さんと今泉力哉監督のインタビュー後半をお届けします。
(合同取材:IN/SECTS 辰巳春香さん)













■■たまの曲は怖かった?■■■■■■■■■■
【たまの曲の中に見え隠れする「死」の匂い】
——本編の中でヨーロッパ企画の上田誠さんが「初期のたまの曲は怖かった」っておっしゃってましたが、それは何故だと思いますか。
石川:たまの曲って、幼児退行じゃないけど嬉しかったことや悲しかったことを初期衝動に戻って表現した部分があって。子供のピュアな面を別の見方をすると、残酷だったりしますよね。昆虫を解剖したり。大人になったらできないことをしちゃう怖さを表現として出していたこともあったので、「こいつらいい年のおっさんなのに何考えてるか読めねー」「音楽のジャンルもよく分からないし、詞も時々不気味だし」「姿形もオカシイし」ってみんなが混乱して、怖いと思われたんじゃないかな。

——今の音楽はその頃とどういったところが違いますか。
石川:20歳の頃と今と、意識して変えているつもりはないんですが、そこは自然に。今年で50になるんですけど、意図して表現方法の方向転換だと思ったことはないですね。自然に変わっていったのがそういう風に見えたのかな。

【みんな恋愛のことを日常の9割考えてる?(笑)】
——死のイメージがメンバー内で共通していて、そこが結びついたんじゃないかっていうお話がありましたね。
石川:メンバー同士で人の死についてどうとか話したことはないんですが、みんなが音楽性よりも、「死」がふらっと出てくるを歌詞を共通して書いていて、それは後で気付いたことで、最初から「死」をテーマにモチーフに書いている人たちを集めてバンドを作ろうなんてコワイこと考えてない(笑)

今泉:それくらい自然に意識的じゃなく歌っていたんですね。

石川:映画の中で知久くんが自分の父親が死んだ時のエピソードを笑えるって話があったけど、「死」って怖いことじゃない。人間だって生物だから唯一絶対来るのが「死」な訳だから、生きている限りは意識するのは当然な気がして。世の中の9割が恋愛ソングじゃないですか(笑)。そんなにみんな恋愛のことばかり9割考えているかなって(笑)。まぁ、こっちが変ってるんでしょうけど、「死」について考えたりすることを歌にしたり。「死」を含んだ日常の中の非日常を。「ケ」の中の「ハレ」というか。そういうものが垣間見られるような世界が面白くて、友達になっていったという所はありますね。                    

■■ドキュメンタリーはこうだという常識に囚われずに■■■■■■■■■■
【秘蔵映像より今の活動】
——始まりがあって終わりがある映画ではなく、生き方の一部を切り取った映画ですが、気をつけたことはありますか?
今泉:秘蔵映像どころか「たま」の映像がないじゃないかって言われて(笑)今の活動を追えば何か伝わるよなーとか思ったんでしょうね。いろんなドキュメンタリーを見たんですが、邦楽や海外のロックバンドとか。「あいつらはよー」って文句を言ったりカメラの前で喧嘩したりするんですけど、一ヶ月くらい撮影して「この方たちは他人の悪口は言わないな」って気付いて(笑)。ドキュメンタリーってこうだ、映画って山場があってこうだって常識に囚われなくてもいいんじゃないかって。最後の方は、泥っぽいところはなるべくそぎ落として自然に自然にしていきました。不安は物凄くありましたが…。

【俺が組んだ相手は間違っていなかった!】
——石川さんは本編をご覧になっていかがでしたか。 
石川:滝本がやっぱりハンサムに写っていて、女性ファンがまた増えちゃうな(笑)。

今泉:最初の印象がそこですか!(笑)。

石川:バンド仲間で普段友達関係でいるのとちょっと違うね。客観的に映像で見たらやっぱり(笑)。

今泉:逆に滝本さんは先行上映でゲストで来られた時に感想をお聞きしたら、「ホント石川さんって面白い人だな」って。一歩引いてお互いに(笑)。

石川:(爆笑)やっぱり俺が組んだ相手は間違っていなかったと思いましたね。この人たちだから面白い19年間を送れたし、終わりはあったけど関係は未だに続いていて。たまに一緒にセッションしたり。知久くんとは未だにパスカルズで一緒にやってるし。映画で自分のことは客観的にはなかなか見れませんけど、知久くんは抜群に上手い。歌もね。こりゃさすがの組み合わせだなーって(笑)。

■■「やりたいことをやる」という生き方■■■■■■■■■■
【死ぬまでの時間の使い方は自分次第】
——最近就職難で安定を求める若い人が多い中で、自分の道を貫いていることが素晴らしいと思います。若い人にエールをお願いします。

石川:明日か50年後かは分からないけど人間は死ぬから(笑)それまでをどう使うかは、大人になったら自分に任されている。それはちょっとだけ考えてベストな形を。この映画見たからって誰でも腹太鼓を叩けば食っていけると思ったらそれは間違いです!(一同爆笑)自分が一番いいバランスで長所を生かして「自分にとって一番楽しいことって何だろう」って原点に戻って考えた方がいい。他の人の言ってる例えば「結婚が幸せだよ」とか。全然聞かないのもダメでしょうけど、自分は何を優先させたらいいのかは考えた方がいいんじゃないかな(笑)

今泉:メンバーの方々は自分の価値観を持っているし、その上でのやりたいことであって、「人に迷惑をかけてまでやり続けるんだ」ってスタンスではないし。枷が社会的な目線だったらやりたいことをやればと思うけど、迷惑したり苦しむ人が周りに出るんだったらそっちを守ってもいいのかな(笑)

石川:それによって精神的ストレスがあるならそれは本当にやりたいことじゃない(笑)

今泉:目先だけで「仕事やめる」とか、「つらい。これは違う!」だと大変なことになりますよね。誰も働かない世の中になっちゃう。全員ゴロゴロし始める(笑)

【20代での決心をとことんやって来た】
石川:20代の頃バイトをやりながら「俺は一生ライフワークとして音楽をやってくんだ」って腹を決めたのが良かったのかなと。売れたら続けよう、売れなかったら辞めようだったらそれは本当に好きなことじゃないのではないかと思いますね。

——決心できたのは何故ですか?
石川:くうたらだったからそれが一番正しいと思ったんです。お金持ちになったり肩書きを得るために働くくらいだったら、生活できるだけ働いてあとはゴロゴロしてる方が僕にとって幸せだったんですよ。それが商売になるとは思っていなかったんですけど、それをとことんやっていたら、今のところ50までは食えてくてるなと(笑)

【関西公開情報】
●<大阪>第七藝術劇場
2/5(土)〜2/18(金)レイトショー 連日21:00より
●<神戸>アートビレッジセンター
3/19(土)〜25(金)(22(火)休映)レイトショー 連日20:00より
●<京都>京都シネマ
4月より公開予定

執筆者

デューイ松田

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