映画『たまの映画』「やりたいことをやる」という生き方〜石川浩司、今泉力哉監督インタビュー(1)
2/5(土)より『たまの映画』が十三・第七藝術劇場を皮切りに関西で順次公開となる。
1/15(土)に第七藝術劇場で行われた先行上映は、立ち見を含む140名の観客で満員となった。
“たま”で“ドキュメンタリー”。
結成・ブレイク・解散をメインに描いたものだろうという先入観は軽くかわされた。
映画は、元メンバー(石川浩司さん・滝本晃司さん・知久寿焼さん)の現在の活動を追うという独自の視点で描かれたものだった。
閉塞感漂う現在にあって、やりたいことを続けるという生き方を貫く元メンバーの姿は清清しい。それがシンプルだからこそ難しいことを、誰もが実感しているからだ。
劇場を訪れた仕掛け人のプロデューサー三輪麻由子さん(株式会社パル企画)、石川浩司さん、今泉力哉監督にお話を伺った。
(合同取材:IN/SECTS 辰巳春香さん)
■■なぜ今『たまの映画』だったのか?■■■■■■■■■■
【まずはプロデューサー三輪さんの熱意があった】
——映画の冒頭に「誰も死んでないし、再結成でもない、何周年でもない」という言葉がありますが、この企画が始まったのはどうしてですか。
三輪:たまのブームの頃は小学生だったんですが、何年か前に石川さんのライブを見て衝撃を受けたんです。その時くだらないことを全力でやっていらっしゃる姿に涙が止まらないくらい笑って。振り切っている姿がかっこ良かったんですね。『たま』は普遍的なバンドで、いつ聞いても懐かしいし、今の歌でもあります。それから元メンバーの方々のソロをチェックするようになって。自分のペースで頑固にしなやかに生きる姿を見て、なんて素敵なんだろうって、生き方に憧れたんです。その姿を一つの作品として残せたら、今の若い人たちの一つの救いになるのでは、という思いがありました。
——企画はすぐ通りましたか?
三輪:企画は「通す」というよりは「練っていく」というような作業でしたね。会社でGOが出てもメンバーの皆さんが応じてくださらないと企画が成り立ちませんし、メンバーの皆さんとスタッフの相性もありますので、企画がぼんやりと形になった時からお話させていただきました。
【石川さん驚愕のオファー】
——石川さんは初めてお話を聞いていかがでしたか?
石川:なんてことを…!(笑)デビュー当時とか、解散のタイミングならともかく、7年もたっているわけですからね。それぞれソロで活動はしてますけど、ライブハウスでせいぜい100人くらいの動員で、「自分たちが暮らせたらいいや」ってぐうたらな感じで好きなことやってますからね。「お客さん入らないよ!」って心配して(笑)それがどう会社を丸め込んだのか(笑)。東京で公開したら期間延長が決定して、レイトのみだったのが、他の時間帯にも上映が決まりました。どーしちゃったんでしょうね(笑)
【元メンバーの今の活動に惹かれた今泉監督】
——今泉監督はオファーが来た時はいかがでしたか。
今泉:僕は元々たまのファンではなくて、『さよなら人類』とかランニングの方がいることは知ってたんですけど、たまの人数すら知らなかったんです。そんな自分が引き受けていいのか迷ったんですが…。ライブ活動を見させていただいて、音楽はもちろん活動のスタンスが凄くいいなと思いまして。しかも会場はお客さんで満員で。そんな様子に興味を引かれて、やらせていただくことになりました。
【ドキュメンタリーのイメージを覆す『たまの映画』】
——構成を決めて撮り始めたんでしょうか。
今泉:最初は撮ってから決めた方がいいんじゃないかって思ったんですが、撮り出して何日かたってプロデューサーの三輪と「何で今この映画なんだろう」って話をしまして。バブルの頃のようにお金があったら幸せとか、大きい会社に入ったら安心っていうようなことは今の世の中ぶっ壊れていて。好きにやりたいことをやった方が幸せなんじゃないかっていうモデルになってる気がしたんですね。
そういうアーティストはたま以外にもいますが、たまは名前がメジャーになったのに今は独自のスタンスで活動している。中々出来ないことですよね。そういう意味でたまの方々で良かったなって思います。
——過去のヒット曲が本編に出てこないのは何故ですか。
今泉:最初にプロデューサーの三輪が惹かれたのも現在の活動でしたから。過去の映像を使って過去の活動を見せるより今を描きたかった。話を作る上で、過去の活動は最低限に留めるように。音楽は凄くいい音楽なんですけど見る人によって好みがありますよね。それよりも自分が最初に惹かれた人柄、スタンス、生き方をに寄った描き方にしました。
——それは編集する段階で見えてきたんでしょうか。
今泉:そうですね。最初につなぎ出した時は、結成からイカ天ですでに1時間(笑)。歴史紹介ビデオになってしまうし、それこそ三部作ですよ(笑)。これでは映画になってないといろんな人にアドバイスをもらって、何度か作り直しました。
——撮影期間は?
今泉:半年間で撮影が2009年の7月から12月。最初カメラは自分で回してなかったんですが、ドキュメンタリーって自分で回した方がいいよねってことになって。何を撮るかその時の判断になってくることが多いですから、分からないなりに少しずつカメラも覚えました。編集が翌年1月から9月半ばで、三輪が相当会社に無理言って延ばしてくれたんですけど、毎日編集をちゃんとやっていたかと言うと、意外とサボり続けて(笑)。毎日見てると、どこがいいと思ったのか分からなくなってきました(笑)。
——撮られる石川さんとしてはいかがでしたか?
石川:ライブが終わってから「あ、今日撮影入ってたんだ」ってほとんど意識せずでしたね。インタビューで、しらふで話しているところはほぼ前面カットで(爆笑)僕と知久くんのコメントはほとんど酔っ払ってましたね。
今泉:ライブ後にファンの方と飲んでいるシーンがあるんですけど、その距離感もいいなぁって。メジャーで売れて何千人の規模だったら終わった後に飲みに行こうかって絶対出来ないから。
——若い女性ファンも多かったですね。
石川:そうなんですよ。リアルタイムを知らないような20代の人とか結構多いんですよね。親がCDを持っていたり、『さよなら人類』以外でも『ちびまる子ちゃん』のエンディングや『みんなのうた』がきっかけだったり。最近はYouTubeを見て、気に入ってライブに来てくれたりって人も多いですね。
→石川浩司、今泉力哉監督インタビュー(2)へ続く
【関西公開情報】
●<大阪>第七藝術劇場
2/5(土)〜2/18(金)レイトショー 連日21:00より
●<神戸>アートビレッジセンター
3/19(土)〜25(金)(22(火)休映)レイトショー 連日20:00より
●<京都>京都シネマ
4月より公開予定
執筆者
デューイ松田