『女の子ものがたり』 (2009)、『いけちゃんとぼく』 (2009)、アニメ「毎日かあさん 」(2009)と近年、注目を集める人気の西原理恵子原作『パーマネント野ばら』。

山あいの小さなパーマ屋さんは、女のザンゲ室──。
‘大人の女性の恋心’を赤裸々に描き、西原理恵子の新境地的な作品として話題となった本作。深い愛情と悲しみを湛える女性たちが、自分に小さな嘘をつきながら懸命に生きる姿は、多くの共感と絶大な支持を得ている。女のたくましさ、したたかさ、純粋さ、大らかさ、優しさ、切なさ……など、様々な「女の情」が詰まった珠玉の原作。

メガホンを取るのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)がカンヌ国際映画祭の批評家週間部門に正式出品されるなど国際的にも評価が高く、人間の「どうしようもなさ」や「愛すべき可笑しさ」を描き続ける気鋭の監督、吉田大八。男性である吉田監督の俯瞰した目線が入ることにより、女たちの恋と、女同士の親子間に漂う繊細な愛情、そして人の弱さや痛さをもすべて包みこむ、田舎町特有の大きな友情までもが深みを持って描かれる、多面的な人間の情を賛美する作品へと昇華させました。

いま、注目の監督である吉田大八監督にインタビュー。






——脚本が今回初めてご自分の手ではなく、原作が西原さんということが影響しているのでしょうか?

この話が来た時には既に奥寺さんの最初の稿があったんです。僕が参加してから、月に2回くらい打ち合わせるペースで直しの作業を進めていきました。自分にとってもいろいろ勉強になったし、面白い作業でしたね。

——素晴らしいキャスティングだと感じましたが・・・

そうですね。キャスティングはいつも楽しんでやってます。もちろん最初は主人公のなおこから考えました。強さと脆さが微妙なバランスで共存しているという意味で、菅野さんはパーフェクトだったと思います。

——菅野さんの周りの女の人たちも観ていて素晴らしいなと思ったのですが?

「よくこんなに集まったな」と自分でもそう思いますよ(笑)。小池さんは『接吻』で観て凄いなと思っていて、池脇さんも『ジョゼと虎と魚たち』のときから大ファンでしたから。実際にお二人とも撮影していてブレないし、魅力的だなと改めて感じました。

——劇中のセリフひとつひとつが生きていて、そのあたりの言葉選びは相当考えられたのではないですか?

原作の台詞が既に素晴らしいし、映画オリジナルのセリフもありますが、やはりそう聞こえたとしたら、役者さん自身が“役を生きた”結果ではないでしょうか?
原作は関西弁で描かれているんですが、今回は西原さんの生まれ故郷である高知で撮影するということもあって、地元の言葉を使おうと考えました。やっぱり方言でセリフを喋ると、いい感じに言葉のひとつひとつが生きてくるんですよ。それは発見でしたね。

——撮影前の西原理恵子という作家に対してはどのような印象をもっていましたか?

すごく好きでしたよ。『ぼくんち』とか『まあじゃんほうろうき』とか。自分を汚しているようで、ギリギリで品性を保つという、見せ方が実にプロで。熱いように見えて実はクールな感じが、まあ単純にカッコいいです。

——どういうスタンスでこの原作と関わっていこうと思いましたか?

やっぱり映画は映画としての価値を持たなければならないし、「原作の方が良かった」と言われるのは悔しいので…。もちろん原作をリスペクトしてますが、魅力的な登場人物やグッとくるセリフも、原作ほどには映画で生かしきれないと判断したら、涙をのんでカットしました。結果として原作を好きな人に納得してもらえればと思いますね。

——出てくるおばちゃんたちがすごく良いように思いましたが?

そうでしょう!いつもは東京でオーディションするんですが、それだといつもの結果を超えられないと思ったので、今回は大阪と高知で行ったんですよ。大阪では一日100人くらいの役者と会いましたが、それは凄い体験でしたね…いや、いい意味で(笑)。こんなに豹柄の服ってバリエーションあるんだって思い知りました(笑)。
高知のおばちゃんたちも、パンチパーマを頼んだら次の日にはもうかけてきてくれる(笑)という、素晴らしい思い切りの良さで、ほんと助かりました。

——主演の菅野さんに対して、可愛いという女性的な部分と内面に悩みを抱えているというキャラクターに関して、どのようなアドバイスを?

菅野さんには、前半は周りの強烈なキャラクターに振り回されず、その浮き沈みについていきすぎないようにと。菅野さんは本来動きも表情も豊かな方なので、主人公なおこに焦点が当たるラストシーンに向かうまでは、それをすこし抑えるように気をつかってもらいました。

——次はどのような作品を撮ってみたいですか?

今は、何も考えて無いです(笑)。
この作品をきちんと自分の中で総括してからですね。自分に嘘をつかないことを前提に、大事にできる映画をと思います。
 
 
 

執筆者

Yasuhiro Togawa

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