01年に渡米してから『ザ・リング2』でハリウッド進出を果たした中田監督が自らの経験から語るドキュメンタリー。今やジャパニーズ・ホラー映画を代表する中田監督のドキュメンタリーは、01年の日活ロマンポルノにオマージュを捧げた『サディスティック&マゾヒスティック』以来8年ぶり。独自の視点で綴られるハリウッドでのご自身のプライベート映像も加えて彼を取り巻く人たちの証言は、とても興味深い。
次回作は、イギリス映画となる渡英直前の監督にインタビューをしました。




——撮影開始を示す“グリーンライト”が点灯するまで待つということは、大変じゃないですか?

この映画の中にあるように、多数届くシナリオを読んだり、体を作ったり、耐えられない人もいるかもしれませんが、企画があれば、そんなに苦痛ではないです。

——この映画を見て、ハリウッド監督を目指したいと思う人もいるかも知れませんね。

自分の場合は、ハリウッド来て個人的なフラストレーションがあってから仕事を始めているんですが、この映画を見てハリウッドに来いと言っている訳ではなく、自分の場合は、こうだったんだよと伝える作品で、ハリウッドを目指す人に参考になって欲しいと思います。

——ハリウッドで仕事して帰ってから生かされたことは?

“タフ”になったということですね。プロデューサーとの付き合い方とか、アメリカの政治みたいですが、議論好きというか、映画を作る上で、プロデューサーや作品に関わっている人たちと一緒に激しく意見交換をしていきながらいい作品を作っていこうという姿勢がハリウッドの映画会社の中には文化としてあって、自分の経験では、こういった議論に揉まれて学ぶことは多かったですね。商業主義に徹底しているハリウッドから日本映画を批判的に見つめると、日本は良く言えば、作家主義であって、悪く言えば、監督のもので、監督に任せてしまっている傾向にあるんです。それが、後になってみると「こうすれば良かったよねぇ」なんて語ってします。本当は、その両方のバランスがあるほうが望ましいのです。ハリウッドで仕事をした後に、日本で映画を撮ったときは、ハリウッドの国際的なスタッフの中で仕事したことがかなり生かされましたね。

——次回作は、イギリスで映画を撮られるそうですが…

 脚本はエンダ・ウォルシュというアイルランド出身の劇作家で、彼の演劇を映画用に脚色した作品なのですが、最近、アイルランドのアカデミー賞を受賞した「ハンガー」という映画の脚本などを担当した人で、ネットのチャットルームを通じて、社会に対する不満をぶつけあいながら、進んでいくドラマなのです。舞台版は、世界中で上演されているんですが、映画版は、かなり異なるかもしれません。イギリス映画は、またハリウッドと違ってシビアかもしれません。(「ハンガー」は、08年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールを受賞した作品)

——今後の活動についての方向性は?

最初にハリウッドに呼ばれたときは、よしここでずーっと仕事をやるかと考えていましたが、今は、そうではなくってハリウッドで仕事をしてみてからは、日本をベースに、基本的には話が来て自分が面白いと思えば、どこにいってもやります。
次回のイギリス映画の話も、香港の映画祭に映画の企画をプレゼンしに行ったときに、逢った人が今回のイギリス映画を推薦してくれてロサンゼルスに滞在している1年前に話が来ましたので、今は、出稼ぎみたいですが、基本は日本に拠点をおいて、面白い仕事を場所を選ばずに仕事をしていきたいと考えています。

※ドキュメンタリー『ハリウッド監督学入門』は、ハリウッドで作られる映画とそれ以外で作られる映画の製作過程から生まれる3つのキーワードについて語られる内容で構成されています。世界的な映画マーケットに向けられて作られる映画ゆえの苦労な貴重な経験を監督自ら語る内容は、実に多くの面白い内容に仕上がっている。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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