巨乳願望のある女優志望のミカ(秋山莉奈)と出会い、彼女を主演に映画を撮り始めてしまったことから、冴えない自主映画監督・真島(佐藤佐吉)の人生はかつてないほどに転がりはじめた。

そんな2人の撮影風景を撮影するという、ちょっとおかしなスタイルの映画『平凡ポンチ』は、ジョージ朝倉原作の同名漫画の実写化。
今作が、前作『東京ゾンビ』から約3年ぶりの長編映画であり、監督・脚本そして出演までこなした佐藤佐吉監督にお話を伺った。




Q:この作品では、通常の撮影用のカメラと監督自身の手持ちのカメラの映像からの、交互に2つの視点で撮られていましたが、元々このスタイルで?
シナリオ上で、客観的視点と主観的視点に分けるというのはある程度見えてはいましたが、自分で追っかけて撮った映像をここまで多用するとは思わなかったです。僕の方のカメラは役者として芝居しながら無意識で撮っているので、秋山さんの胸から下しか写っていないというのもありました。しかしそれを当てはめてみると、主観でありながらそうでないというか、妙におもしろい流れが出てきて、それでだんだん無意識で撮った絵を使うようになったんですよ。後半ではそれがメインになりました。

Q:人気漫画の映像化ですが、最初の構成は?
カット割りに関してはあまり思い浮かんでいませんでした。監督として考えなければいけないことをどんどん捨てていって、本番では役に集中していました。

Q:では逆に脚本はしっかりと作った?
きっちり作りました。僕が役に集中してしまうと予想されたので、シナリオどおりに撮れば映画として話が進むように。

Q:原作漫画から脚本にする上での苦労は?
絵というよりも、真島を撮っていきたかった。当初は原作に忠実でしたが、本当に残したいところを残していきました。また、原作者のジョージ朝倉さんと脚本について話してからは、台詞をどんどん変えていきました。リスペクトしている作品ですが、今回は僕がこうしたいああしたいというのが出てきたんです。

Q:監督と役者の切り替えは大変でしたか?
シナリオの時点ではまだ自分がやるとは決まってなかったので、台詞も膨大で長いままで、覚えてられなかったです。自分で書いたシナリオだから、自分の中でどっかで覚えているだろうとやっていました。だから、シナリオ通りじゃない台詞がたくさんあります。その空間がすでに平凡ポンチの精神性だったのかもしれないです。

Q:自分でカメラも撮って、役者もして、監督して、自分自身が『平凡ポンチ』になる!みたいでしたね。
こんなに自由にやらせてもらってありがたいくらいに。現場は大変でしたけど。勢いでやっていったのもポンチの勢いに近づいたのではと思います。

Q:秋山さんは劇中で結構はじけていましたね。
僕が真島を演じる上で、相手役の女優さんは人気のある人にしたくて、秋山さんは奇抜さもあって良いなと思い、キャスティングしました。リハ中はもうちょっと緊張した感じでしたが、本番ではポーンと飛び越えてくれました。そこから信用してくれて、しだいに暴走していきましたね。また、撮影が追うごとに彼女の負けず嫌いな部分が出てきて、要望にもどんどん答えてくれました。後から聞くと、結構びびっていた部分もあったらしいですけど。彼女が演じてくれたのは幸運でしたね。

Q:音楽がKUJUNですね。
音楽を考えていた時にたまたま聴いたKUJUNの最新アルバムが作品にぴったりだったんです。アルバムの曲順をほとんど変えずにそのまま使いました。ラストシーンではサントラの曲しか使っていないんですよ。シーンと曲名もぴったり合ったんです。

Q:佐藤監督は関わっていく作品の「映画」という枠を、良い意味で壊していくクリエーターだという印象があります。
今まで誰かがやってきたことをやっても意味がないと思うので、自分なりに面白いと思う作品を作るようにしています。それが映画に対しての礼儀ですね。自分なりに、その映画に関わった意味を考えていく。基本的にまじめなので。

執筆者

Michiko TANAKA

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