“美しくて強い女性には、男性にできないことができる”『最強☆彼女』クァク・ジェヨン監督 合同インタビュー
日本が舞台の映画『僕の彼女はサイボーグ』が記憶に新しいクァク・ジェヨン監督。彼の最新作は、これまでの『猟奇的な彼女』、『僕の彼女を紹介します』、そして前述の前作に見られる“強い彼女と頼りない僕”の構図に、新しくアクションを取り入れた武術映画『最強☆彼女』。
韓国の武術の名家に生まれ並外れに強いけれど、普通の女の子の恋愛に憧れるヒロインのソフィにシン・ミナ(韓国ドラマ『魔王』)、ソフィの幼馴染で、同じく名家に生まれ武術に長けてはいるもののどこか頼りないイリョンにオン・ジュワン(『ピーターパンの公式』)。韓国映画界で今後が期待される若手俳優を起用したことでも話題となっている。
「子どものころからブルース・リーやジャッキー・チェンが好きでした。だからこのような武術映画が撮りたかった。」と話すクァク・ジェヨン監督に、今作品の見所であるワイヤーアクション、そして監督の描く“強い彼女と頼りない僕”へのこだわり、さらには作品の構想に一役買っているという意外な人物についてのお話を伺った。
Q:これまでとは違いアクションの多い映画ですが、撮影で苦労したことは?
真夏に撮影したため、とにかく暑かった。特に俳優陣は、ワイヤーアクションで専用の厚手のスーツを着なくてはいけませんでしたから。オン・ジュワンさんは、ワイヤーアクションで壁にから落ちるシーンで倒れたことがありましたし、水中のシーンで深く潜りすぎて、鼓膜が破れて出血していたことも。もちろんすぐ病院に行ってもらいました。それだけ体当たりで挑んでくれたということですね。
また、劇中で出てくる花畑のシーンは大根の畑で撮ったのですが、大根の花が咲くということは、根元が腐っているということなんです。その臭いの中で10日間撮影した時は大変でした。
Q:今作もヒロインに強い女性が描かれていますね。こだわりは?
基本的に、ヒロインは芯が非常に弱く純粋で少女のようで、見た目は強く見える女性であるようにしています。女性が純粋できれいであれば男性はアプローチしにくいですが、見た目が強いことで男性は気楽に接せるようになりますよね。そのようなヒロインを表現しようと考えています。また、美しくて強い女性には、男性にできないことができると思っています。
Q:そんなヒロインに対して男性は軟弱に見えますね。
映画の中に出てくるヒロインが強いから弱く見えるだけで、本当は強いです。『猟奇的な彼女』の場合も男性が非常に女性に優しいですが、優しいだけであって弱くはない。強い女性とも付き合える強さがある。内的な強さを持っているということです。
Q:キャスティングで重要視していることは?
ヒロインはまず、透明感があること。そして性格は“4次元”であること。“4次元”とは最近韓国の若者の中で使われている言葉で、どこに飛ぶかわからない、突拍子の無い、そういったおもしろい思考の持ち主のことです。相手役はヒロインが決まってからキャスティングするようにしています。
Q:コメディ要素が多くなるのは観客へのサービス精神ですか?
観客がどうすれば喜んでくれるのかまだわからないので、サービス精神とはちょっと違うかもしれません。だからまず自分が楽しめる、笑える作品を作っています。真面目なところにコミカルな部分、コミカルなシーンからまじめな部分へ、というように。自分自身へのサービス精神ですかね。
Q:劇中のBGMで使われている歌が、印象的ですね。
今回の映画の劇中で使われている歌の歌詞は、『僕の彼女はサイボーグ』の撮影時に私が書いたものを歌詞にそのまま引用しました。
Q:『猟奇的な彼女』で主演のチャ・テヒョンさんが、今回、鳩にえさをやる男性役として少し出演されていますが、その経緯は?
チャ・テヒョンさんは、私の作品にこれからも必ず1シーン以上出てほしい俳優です。彼は私のペルソナ、一番性格の近い俳優ですね。出演の経緯ですが、直接出演を打診したら快く受けてくれました。撮影では鳩がなかなか集まらず、当初1日だけだった撮影が翌日早朝に延びても来てくれました。
Q:撮影から1年以上経っての韓国公開、そして今回の日本公開ですね。
この映画を撮影した時期は、韓国ではたくさんの映画が撮影され、資金の投資も盛んでした。その後、投資会社の事情が変わり、公開が難しくなってしまった。1年以上経って韓国でこの映画が公開された頃は社会全体に元気がなく、映画の明るい部分が伝わらなかったのはとても残念です。
Q:監督の作品には韓国のリアルな恋愛が描かれていますが、リサーチはどうやって?
リサーチは特にしていませんが、私にはちょうど今回のヒロインと同じ年頃の娘が2人おりまして、彼女たちと仲良くすることがリサーチになっているのかもしれないですね。よく彼女たちの聴く音楽を聴いたりしています。私は常に娘たちと一緒に観られる映画を作っていますし、これからもそのつもりです。
Q:北海道で作品を撮りたいと聞きましたが、次回作は?
北海道を舞台に作りたいですね。今は構想と準備中です。冬に北海道で流氷を見て感銘を受け、作品には流氷のシーンを入れたいので今冬か来年になりますね。次回作はこれまでとは違うまじめなものにするつもりです。
執筆者
Michiko TANAKA