『バットマン ビギンズ』に次ぎクリストファー・ノーラン監督が制作した『ダークナイト』には、バットマン史上最も凶悪と言える宿敵、ジョーカーが登場する。
過去にジャック・ニコルソンが演じたこの個性際立つキャラクターを、今回はヒース・レジャーが演じシリアスな存在として描く事に成功。
まるでピエロのようなショッキングな化粧に、細身のジャケット。“犯罪こそが最高のジョークだ”と不適に笑うこの男が、ゴッサム・シティに新たな悪として舞い降りる。

監督は『バットマン ビギンズ』に引き続きクリストファー・ノーラン、そしてバットマンことブルース・ウェイン役はクリスチャン・ベール。
アーロン・エッカート演じるハービー・デントは、“光の騎士”(ホワイトナイト)と呼ばれる正義感溢れる地方検事。日に日に犯罪にまみれていくゴッサム・シティの救世主的存在として現れ、ブルースはマスクを必要としない素顔のヒーローである彼に街を託したいと思い始めていた。
しかし、そこに「バットマンが正体を明かさなければ、毎日市民を殺す」と言うジョーカーが現れ、街とバットマンは混乱の渦に巻き込まれていく—。
容赦ない犯罪予告の数々、彼らの運命はどうなってしまうのか?

前作同様再びタッグを組んだプロデューサーのチャールズ・ローブン&エマ・トマースに単独インタビュー。




——前作『バットマン ビギンズ』の次に、今回何故ジョーカーという敵役を選んだのでしょうか?

エマ :「『バットマン ビギンズ』の最後の方に、ちょっとジョーカーの事が出てくると思うのですが、今回のストーリーを考えた時に、ジョーカーというのはこの映画の中だけでなく一般的に興味が持てるキャラクターですよね。
ですから、ジョーカーを登場させるのはごく自然な事でした。」

——題名に“バットマン”という名前が入っていませんが、どのような意図があるのでしょうか?

チャールズ :「いくつか理由があって、まずバットマンというのはシンボルを見ただけですぐにわかるアイコンになっているという事です。見ればすぐにバットマンだと皆さんにわかって頂けると思ったので、題名に入れる必要は無いと判断しました。
もう一つ、『ダークナイト』という 題名を聞いた時に、皆さんはこのお話がどういう方向へ行くのかを想像するのではないかと思ったので、“バットマン”という名前は入れませんでした。」

——原作から様々なストーリーを引用していますが、それを一つの物語として組み立てる上で最も重視した点は?

エマ :「ビギンズが終わった時、今度はそこからこのストーリーをどうやって展開させたらいいのか観客の視点で考えました。バットマンが登場した事で、ゴッサム・シティには彼が意図しなかった影響ももたらしてしまったので、そこから発展させて今回のストーリーを作りました。」

——ジョーカーというキャラクターは、人々の想像を絶するような突飛な行動を取りますが、人々を驚かすような人物を作る上で、皆さんの中で共通のイメージはありましたか?

チャールズ :「皆が共通で思っていたのは、やはりジョーカーはアナーキストであるという事です。ただ、普通の反逆者や、ただの悪者とう事ではなく、誰も予測できない、やらない事はないというぐらいに想像を絶するようなキャラクターであるというのが共通のイメージではないでしょうか。」

——ジョーカーを作っていく上で、ヒース・レジャーの考えも含まれていますか?

エマ :「もちろんヒースの考えは沢山入っているのですが、実は最初に監督のクリスとヒースが会った時にはまだ脚本が出来上がっていない状態でした。基本的に、大体のアイディアは固まっていましたが、その時監督は『プレステージ』という映画の撮影中で、ジョーカーをどういうキャラクターにするかというヒースのアイディアは非常に沢山盛り込まれています。」

——『バットマン』(89)のジャック・ニコルソンが演じたジョーカーは、最初に復讐すべき対象が存在していましたが、今回のヒース演じるジョーカーには復讐すべき対象は明確ではなく、攻撃は無差別的です。このジョーカーにとって、世の中とはどういうものなのでしょうか?

チャールズ :「彼の目的というのは、世の中を自分の手によって混沌たる状態にするという事です。普通の社会において、きちんと仕事をし、社会の中で機能し、自分はいい人間であると信じている人たちを破壊させてしまうのがジョーカーです。」

——以前、“今回の作品ではハイパー・リアリズムを出したかった”とおっしゃっていましたが、ハイパー・リアリズムを出す為に心がけた点は?

エマ :「今回の撮影は、撮影所の中ではなく、現地でのロケがほとんどでした。シカゴの街や、実際に香港まで行って撮影したり、そういった意味でリアルと言えますが、それを越えたものであると言えますね。」

チャールズ :「私たちは、ゴッサム・シティでの出来事が、この世の中で本当に起こっているように見せた訳です。バットマンが現れ、ジョーカーのような派手なメイキャップと狂言じみた事をする人物をリアルに感じて頂くためには、撮影場においても現実味を持たせなければならず、実際の出来事かのごとく撮影しなければならないのが、素晴らしいところですね。」

執筆者

池田祐里枝

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