“私は動物の神様になりたいです”『受験のシンデレラ』寺島咲インタビュー
「受験指導のカリスマ=和田秀樹」の受験に役立つ必勝テクニック満載の本作『受験のシンデレラ』は、「映画監督になるために東大に入った」という和田の長編映画監督デビュー作。 “東大受験”“緩和ケア”“格差社会”といったテーマを盛り込み、これが長編デビューとは思えないほどの力量ですばらしい感動作を生み出した。
タイトルにあるように、今回シンデレラとなったのは寺島咲。恵まれない環境に育ちながらも、受験の神様である<五十嵐>に見出され、東大受験の道をひた走ることになる<真紀>を凛とした表情で演じきる。
2007年モナコ国際映画祭4冠達成(最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞)という快挙を成し遂げた本作への想いを聞いてみた。
本作で、「モナコ国際映画祭」最優秀主演女優賞を受賞されたということで、おめでとうございます。受賞されて、今のお気持ちをお聞かせください。
これから先、そのような賞がいただけたらいいなという感じだったので、こんなに早く夢が叶ってびっくりしました。まだモナコ国際映画祭には作品を出すかどうかもわからない状態でしたので。
受賞を聞いた周囲の反応はいかがでしたか?
うちの母はけっこうさっぱりしていて「おめでとう」と一言言われただけでしたけど、うれしかったです(笑)。
最初に脚本を読んだときの感想。
最初にこの話を聞いたとき、単純に受験合格を目指す女の子のシンデレラストーリーだと思っていたんですけど、実際は緩和ケアや格差社会といった色々なテーマが含まれている作品だとわかりました。一見重くなりがちなテーマを扱っているけど、私が演じた<真紀>が、恵まれない環境でありながらも明るく突き進んでいくといった部分が印象的でした。
<真紀>にとって、受験のカリスマ<五十嵐>とはどのような存在だったと思いますか?
ただの受験の先生ではなく、とても大切な存在だったと思います。今まで頼れる人がいなかった<真紀>にとって唯一頼れる存在だったんです。
ラスト、大学生になった<真紀>の表情がとても大人びていたので別人かと思いました。大学生になった<真紀>を演じるにあたって、どのようなことを意識しましたか?
ただ大学生になったから大人びて見えるというのではなく、受験を通して成長することができたからそう見える、それが伝わるように演じました。受験を乗り越えた達成感もあっただろうし、夢が叶って本当にうれしかったと思います。<真紀>ががんばる理由としては、ずっと近くで支え続けてくれた<五十嵐>に対して恩返しの意味もあったと思いますね。
受験の神様と呼ばれる<五十嵐>演じる豊原功補さんがはまり役でしたね。一緒にお仕事してみてどのような印象を受けましたか?
演技についていろいろ教えてくれました。掛け合いのテンポも二人で話し合いながら演じたり。でも、豊原さんは<五十嵐>ほど怖くはなかったです(笑)。
余命1年半を告知された<五十嵐>は残りの寿命を<真紀>の受験に捧げますが、もし寺島さんが余命1年半の告知を受けたら何に情熱を注ぐと思いますか?
楽器やスポーツは1年半では無理だと思うんですよね。私はやるなら完璧にやりたいので(笑)。だから世界一周ですかね? 情熱を注ぐことじゃないかもしれないけど……(苦笑)
<真紀>は<五十嵐>との出会いで人生が180℃変わります。寺島さん自身、自分の人生を大きく変えるような人と出会った経験はありますか?
中学一年のときからこの仕事を始めたんですけど、それが人生変える最も大きな出来事です。今までは大人の中で仕事をする機会もなく、責任なんてほとんど感じていなかったけど、この仕事を始めてからは大人に囲まれることも多くなったので、責任感なども少し出てきた気がします。あとは、やっぱり大林宣彦監督との出会いはとても大きかったですね。
<五十嵐>は受験の神様でしたが、ほかの神様が寺島さんの前に現れるとしたら、どんな神様に何を教えてもらいたいですか?
ピアノです。学校で弾ける子を見ているとカッコいいなぁと思うので。あとは動物の神様になりたいです。『ドクター・ドリトル』みたいな、動物の気持ちがわかる神様になれたらいいですね(笑)
寺島さん自身大学受験を控えているそうですね。本作の中で紹介された受験必勝法の中で実践しようと思ったものはありましたか?
私はせっぱつまらないとやらないので、計画表を立てることの大切さです(苦笑)
この映画は主にどのような方に観てほしいですか? また、その人たちに向けてメッセージをお願いします。
大学受験を控えている人にはおすすめです。受験必勝法も盛り沢山ですし、前向きな気持ちになれます。受験生じゃなくても格差社会や緩和ケアもキーワードになっていますし、ガンの宣告を受けてもまだ生きようと強い意志を持つ<五十嵐>の姿を見て何か感じてもらえると思います。生きることについて深く考えさせられる本作は、幅広い方々に観ていただける映画です。
執筆者
Naomi Kanno