今年の春、米倉涼子と高岡早紀が出演し、ドラマ化されたのが記憶に新しい唯川恵原作の恋愛小説「肩ごしの恋人」が、遂に韓国で映画化!
性格は全く正反対だけれども、親友同士のヒロイン二人。恋に、そして仕事に頑張る30代前半の女性たちを描いた映画『肩ごしの恋人』のメガホンを取ったのは、実際に同世代である女性監督イ・オンヒ。
飛び交う女同士ならではの本音トークは、監督のアイディアも交えてリアルな今を捉えている。
『アメノナカノ青空』でデビューし、今作が監督二本目となるイ・オンヒ監督に本作についてお話を伺った。








——まず、映画化に至ったきっかけは?

「唯川恵さんがお書きになった原作は、韓国ではあまり有名ではなかったのですけれども、日本側からの映画化のオファーがあったので、原作を読んで監督をする事になりました。」

——原作を読んだ時の感想は?

「キャラクターが新しくて、特に、ヒス(原作ではるり子)がとても気に入りました。それで映画を撮りたいな、と思ったのです。」

——ジョワンとヒスの二人はバラバラな性格ですが、それぞれどのようにキャスティングを行ったのでしょうか?

「こういうストーリーの場合、韓国で象徴的な年齢というのは29歳くらいなのです。けれども、この映画の中で29歳というのは自分は不釣合いだと思い、それよりも少し年齢が高くて成熟した方がいいだろうという事で、探した女優さんたちがイ・ミヨンとイ・テランでした。
最初にイ・ミヨンからキャスティングして、それでヒス役を色々と考えたのですが、イ・テランはそれまでにTVで仕事をなさっていて、素晴らしい演技力だなと思っていました。映画は初出演だったのですけれども、映画の中でもその素晴らしい演技が見れると思います。
イ・ミヨンは、十代の頃から演技をしている方なので、ハイティーンの時にはスター的な存在でした。私は小さい頃にそういうイ・ミヨンを見ていて好きな女優さんだったので、今回一緒に仕事ができて凄く嬉しく思います。」

——イ・テランさんは映画初主演という事ですが、何かアドバイスはしましたか?

「特にしませんでした。元々高い演技力を持っていらっしゃる方だったので、いままで映画の経験が無かった事の方がむしろ不思議なくらいでした。」

——映画の中でイ・ミヨンさんとイ・テランさんは親友同士を演じていますが、実際撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

「イ・ミヨンの方が少し年齢も高いですし、映画経験も多い先輩ですから、現場に慣れの無いイ・テランさんに対して気遣いをかけて、イ・テランさんもイ・ミヨンさんを慕うという関係で凄く仲が良かったです。自分がむしろ疎外されたような感じでした。」

——一方はサバサバとした感じで、一方は女性であるという事を武器にしていますが、実際のお二人はどのような方なのでしょうか?

「二人とも凄く芸能人としてはサバサバとした正確ですね。片方は仕事をしている女性、片方は結婚している女性という設定なのでそのように見えたのかもしれませんが、ヒスの方がサバサバしていると物語の中から感じられるのではないでしょうか。
ジョンワンは、見た目よりも割りと女性らしいというように描かれていると思います。
でも、いずれにせよ実際に二人はサバサバとしていて、監督である私も女性だったからかもしれませんが、変な気遣いのいらない現場でした。」

——監督ご自身としては、恋愛至上主義のジョンワンと、結婚至上主義のヒスの二人のどちらに近いと思われますか?

「ほとんどのこの年代の女性というのは、その中間で悩んでいるのではないかと思います。なので、自分はもちろん恋愛もしたいと思うけれども、やはり結婚もしたいと思います。どちらにせよ、幸せであればいいと思います(笑)」

——女性同士の本音トークや、ファッショナブルさもある等身大の女性を描く上で、『セックス・アンド・ザ・シティ』など影響を受けた作品はありますか?

「『セックス・アンド・ザ・シティ』は好きで全部観ていますから、当然映画の中にも参作したものを使用していると思います。
元々、私は映画を作る時に準備段階で色々なものを観て参考にする方なのです。今回も観て参考にしたものもありますし、避けたものもあります。二年間の間、凄く沢山この類のものを観ましたね。」

——日本でも今年ドラマ化されましたが、そちらはご覧になりましたか? 

「観ていないです。一連の作業が終わったのが今年の三月で、ドラマがオンエアしたのがそれ以降だったので、この作品の為にその類のものを沢山観たので、もう当分はいいと思いました(笑)」

——原作には登場しない、女性同士のリアルな会話は監督のアイディアですか?

「脚本家とプロデューサーと色々話をしながらアイディアを出し合いました。撮影が始まってから、女優さんたちとの話の中で出来上がったセリフもあります。」

——特に印象的なセリフは?

「脚本家の方がつけたセリフで、ヒスが“ママもかつては女だったでしょ”という場面がとても好きです。」

——では、気に入っているシーンは?

「ラストで、それぞれがそれぞれの道に行くというところが好きで、映画撮影前からシナリオを読んで凄くいいシーンだなと思っていました。
もう一つ、全部撮影が終わった後に見直してみていいなと思ったシーンは、二人が初めてジョンワンの家でワインを飲むシーンです。普通なら男女がああいうロマンチックな状態になるものですが、今回は二人が楽な感じで楽しくお酒を飲み交わすというシーンでいいなと思いました。」

——最後、福山雅治が登場しますが、どのような経緯があったのでしょうか?

「色々考えたのですが、ジョンワンの仕事はカメラマンですし、私が福山さんを知ったのは写真集を通してで、写真を撮る歌手というおは面白いなと思ったのです。
特に写真集の中で、福山さん自身がカメラを持って自然に幸せそうに笑っていたのが印象的でした。」

——劇中で、離婚歴を削除するというサービスが登場しますが、実在のものなのでしょうか?

「ありますね!(笑)実際離婚をしようとしている人から、そういう事ができると弁護士から聞いたというのを私が聞いたので、登場させました。」

——同世代の女性たちにエールを送るとしたら、どんなメッセージを送りますか?

「人の視線を気にするがあまり、自分の本当にやりたいという気持ちを押し殺してしまったりするのではなく、自分が満足できるような道に行ってほしいなと思います。
そして、そのようにエールとして人に伝えるのであれば、難しい事ではありますが自分自身がまずそう行きたいと思います。」

——今後、撮ってみたい作品は?

「これも前作も、ジャンルを無理矢理かぶせるとしたならば、メロというように言えるかもしれませんが、いわゆるジャンルというものに当てはまらない作品だと思います。
今後は、もっとジャンル寄りなものに近い方向にいければ良いなと思います。」

——今後の予定は?

「次の作品の為に話を書いています。フランスの童謡がモチーフで、青髭という話があるのでその話を引っ張ってきて膨らませている最中です。
ですが、果たしてそれが完成するのかどうか、他の作品の方がもしかしたら先になるかもしれません。」

執筆者

池田祐里枝

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