香港警察のジムは女子トイレを盗撮していたクワンを取り調べる。しかしクワンは「盗撮などしていない。女たちの“組織”が世界規模の陰謀を企てている現場を撮ろうとしていた。」と真剣に語り始める。
信じがたい現実が起きたときどれだけの人がその真実を信じてくれるのだろうか・・・サスペンスフルな映画『出エジプト記』。
本作のメガホンを撮り『AV』(05)『イザベラ』(06)などで今年を含め東京国際映画祭へ4回目の参加となったパン・ホーチョン監督にお話をお伺いしました。





——本作のアディアはどこから生まれたのですか?
私が中学生の時女子生徒がみんな誘い合ってトイレになぜか行っていたのです。行くと凄く長くて何か人に知られてはいけない話をしているのでないのかと思ったことから空想が膨らんでいってこのストーリーになりました。

——本作で描かれている女性が男性を世の中から消し去ろうと考えだすというアイディアもその時のイメージから来ているのですか?
その頃不思議に思っていた事の空想から女の組織が男性を殺すという所まで話が広がったのでそこから来ているというのは間違いないです。そして数年前に脚本を担当した方と具体的なストーリーにしていきました。

——殺人のシーンは結構笑えるような演出をされていたと思うのですかそれも監督の空想ですか?
殺人の場面はわざと暴力的にはしたく無かったので、軽く生活の中のただの一部分というような形で描きたかったんです。

——対照的に冒頭のシーンは暴力的に描かれていましたよね
あのシーンは私が幼かった頃に当時警察の仕事をしていた父から警察では犯人に対して拷問を行う時にはダイバーの格好をしてやるのだという話を聞いていたのでそれをどこかで使いたいと考えていたのです。
今回冒頭で使ったのは、実際にあった話でもあってもあまりにもばかばかしいしく現実離れをしている事というのは誰も信じないということを意味しているのです。
ダイバーの格好をするのは仮に警察が告発されても裁判官は絶対に信じないという考えからきているのです。
それは男性を抹殺しょうとしている女性の組織があるという事に繋がってきますし、非常に現実離れしたことですがもしかしたら本当にあるかも知れないということを繋げる意味として入れました。

——『出エジプト記』というこのタイトルは旧誓約書からきているとお聞きしましたがなぜこのタイトルにしたのですか?
旧約聖書での話はイスラエル人がモーゼに連れられてエジプトを脱出するというお話です。導く人と導かれる人という意味で例えば、本作の女性は女性の組織に導かれて男性を抹殺しょうとしていきます。その導くものと導かれるものとの関係を描きたくてこのタイトルにしました。

——映画の最後のシーンで結末までは描いていませんでしたが・・・
作者としては最後を描く事よりも観ている観客のみなさんに想像してもらった方がきっと面白いと思ったからです。
また映画の結末というのは観て下さった方に最後を考えて想像してもらうのが一番良いと思っているので自分の撮る映画の中ではすべて結末を画面で見せるということはしていません。

——観客が考える結末を想像したりしますか?
別にそこまでは考えません。私は映画というのはスーパーマーケットのようなものだと思っているのです。色々な価値のものが売られていてもちろん私が観客の人に買ってもらいたいと思うものもありますしそれを買ってもらえれば嬉しいですが、しかし別なものが選ばれたとしても良いのです。何かそこらか別のものでも感じ取ってもらえればいいのです。

——四年連続東京国際映画祭へ参加してみて今年の映画祭の雰囲気はどうですか?
毎年とても良い雰囲気で見ていただけてとても嬉しいです。特に日本のファンは熱く情熱的です。映画以外にも美術館に行ったりしています。またそれ以外にも築地ですしを食べることを楽しみにしています(笑)

——日本で映画を撮ってみたいという考えはありますか?
まだ話をしている段階ですがぜひ撮りたいと思っています。
もし日本で撮影が出来るのであれば築地あたりで撮影を行って毎日トロの手巻き寿司を食べたいです(笑)

——今後どのような作品を作っていこうと考えていますか?
今一番撮ってみたいと思っているジャンルはスリラーです。チャンスがあれば怖くて血なまぐさい恐怖映画を撮ってみたいと考えています。
高校生の頃に少しエッチな内容の入った恐怖映画を借りてたくさん観ていました。そういう映画が何で良いのかというと暴力、血なまぐささ、特殊撮影、笑い、ちょっとエッチといったすべての要素が盛り込まれていて面白いと思ったからです。

執筆者

大野恵理

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