第20回東京国際映画祭・単独インタビュー:『数日後』ニキ・カリーミー監督インタビュー
多忙な毎日を送る一人の女性グラフィックデザイナーを主人公にテヘランを舞台に仕事と私生活の間で揺れ動く現代のイラン女性“ワーキング・ウーマン”の姿を繊細に描いた『数日後』。
本作を監督したのは『サラ』(92)でサン・セバスチャン映画祭ほか数々の映画祭で主演女優賞を受賞し、イランではスター女優としての地位を確立しているニキ・カリーミー。
本作では監督兼主演を務めている。ニキ・カリーミー監督にとって本作は劇映画第2作目となる。
このたび10月22日から28日まで六本木と渋谷で開催された第20回東京国際映画祭のアジアの風部門での上映に際し来日したニキ・カリーミー監督にお話をお伺いしました。
——本作を撮ろうと思ったきっかけは?
最初は一人の人間の数日の生活を描こうと思っていました。生活をただ描くだけではありきたりだったので、主役に仕事をしている近代的なイランの女性にしました。
——タイトルの『数日後』は撮影前から決まっていたのですか?
最初は『逃げ』というタイトルにしようと思っていました。
今の自分がいる状況から逃げるという意味です。しかし編集が終わり全体を見終えてから『数日後』というタイトルに変えました。
——はっきりとラストは描いていませんでしたが・・・
自分が見ている映画のエンディングをはっきりさせたくないという思いがあるのでそうしました。
——現代のイラン国内での働く女性“ワーキング・ウーマン”テーマに撮ろうと思ったのはなぜですか?
私も社会で働いている女性ですし、今のイラン女性は仕事をちゃんと持っていて自立しています。しかし映画祭といったイベントで海外に行くと「イランの女性って働くのですか?」と尋ねられることが度々あって、国外からのイメージが違うなと感じたのです。ですからもっと近代的なイランを描くべきと思ってこのテーマに決めました。
——本作のモデルとなった女性はいますか?
一人ではないですけど、自分や友達何人かの話を合わせて一人の人物になりました。
——イランで女性が働くことに関して監督はどう考えていますか?
女性は仕事をしながら家庭を持たなければいけませんので必ず同時に二つ仕事をします。しかしそれはどこの国でも同じだと思います。むしろ他の国に比べるとイラン女性の方が働いていると思います。
——女優から監督に転進したきっかけは?
私は女優として色々な監督の作品に出演してきました。それと同時に自分の頭の中には自分の考えるストーリーやイメージもありましたのでそれを私のやり方で撮ってみたいと思ったのです。また私は飽きっぽい性格でして毎回違った人達と出会うことの出来る映画製作は凄く私の性格に合っているんです(笑)。
女優としては色々な映画に出演しすべてを出しきて賞もたくさん貰ってきましたがもうそれ以上はないのです。しかし監督としては色々な話が作れるのでとても楽しいのです。
——監督ご自身の女優経験が監督としての立場に立ったとき一番生かせれているなと思う瞬間はいつですか?
女優として16年間以上もの経験がありますし色々な現場に行き、さまざまな監督の演出や指示の出し方を見てきて悪い面も良い面もたくさん経験してきました。自分が映画を撮る上で、良い意味でも悪い意味でもいろいろな監督のやり方を思い出しながら撮影しています。
——今後女優業は続けますか?
一年に一度くらいはやっています。映画つくりはお金が出て行くばかりなので、女優業もやらなくてはいけないので(笑)
——今回東京国際映画祭に参加されて他の国の監督とも交流され新たなアイディアがなどは生まれたりしましたか?
凄く面白い所は言葉も国も違うのに作っているものがたまに似たりしている事あるのです。話していることも映画という言葉を使うと何か同じ考えを持っていているのかなと思うととても面白いのです。
例えば全然違う国の監督に自分の作品に似ているとい観に言われて見に行くと本当に似ていたりするんです。交流できることがそれが映画祭の魅力だと思っています。
——今後作ってみたい作品のジャンルやテーマは決まっていますか?
新しいジャンルをやってみたいと思っています。
執筆者
大野恵理