“弥次喜多コンビ”と“売れっ子おいらん花魁”が繰り広げる笑いと涙の珍道中!

今まで数多くの映画や芝居などでモチーフとされた、ご存知「弥次さん喜多さん」が勘三郎&柄本コンビで新たに誕生!!

弥次さんこと弥次郎兵衛を演じるのは、日本だけでなく世界が注目する歌舞伎俳優、十八代目・中村勘三郎。本作が46年ぶりの主演作品となる。喜多さんこと喜多八を演じるのは、名優・柄本明。そしてヒロインの花魁・お喜乃を小泉今日子が魅力的に演じ、さらに珍道中を楽しくしている。この他に、藤山直美、ラサール石井、間寛平、國村準、笹野高史など豪華キャストが勢ぞろい。

今回は珠玉のキャストとベテランのスタッフが集結した映画のメガホンをとった平山秀幸監督にお話を伺った。







落語に関連した作品が続いてますね。

「『しゃべれどもしゃべれども』は噺家の物語でした。現実の東京が舞台なので、ある程度のリアリズムが必要ですし、あまり無茶は出来ません。今回は『しゃべれども〜』でやろうとしたことの、揺り戻しがたくさん入っています。ある種の濃さ、キャラクターの強さなどは突き進んでいいだろうというのがありました。同じ落語という土俵の上で、その差は面白かったですね」

人情劇という意味で、根っこは一緒ですよね。

「そうです。一緒ですね。日本人的な世界という意味では」

最初にこの企画の話が出たのが2000年頃だったそうですが、そこから時間がかかったのはなぜですか?

「実際に映画を作るためにはお金もかかるわけですし、配給なども決めなくてはいけません。18代目勘三郎襲名もありました。公演が2年間。時間がかかったのは、そういうところも大きかったですね」

勘三郎さんはその間はこの企画のことは?

「電話では何度か、忘れてないよね、とクギを差しておきました(笑)。おそらくそれに応えてくれたんだと思います」

その間に勘三郎さんの息子さんである七之助さんが主演した『真夜中の野次さん喜多さん』が公開されました。勘三郎さんもアーサー王の役で出てましたが。

「勘三郎さんは、あっちの方がニセモノだ、なんて冗談で言っていますが(笑)。ただ、こちらとしてはそんなに意識はしていないですね。台本もまったく違いますから。向こうはいわばヒップホップのようなものですが、こちらはどちらかというと、民謡、演歌といった類のものです(笑)」

いい顔をしている役者が多く出演してますね。

「そうですね。やはりそれぞれが今までに何をしてきたかが明確に見えると言いますか。生き方が見える役者さんばかりですからね」

柄本明さんが歌舞伎をやっているシーンがありました。最後こそ失敗してしまうという設定ですけど、柄本明さんという役者の底力を見たように思います。

「この映画は歌舞伎役者、中村勘三郎さんの前でヘマは出来ないということで柄本さんは現場で緊張してましたよ。当然、歌舞伎について一番詳しいのは勘三郎さんなんで、撮影した素材は全部チェックしてもらいました。
僕らは柄本明の白塗りは笑えるだろうという発想から始めたわけですが、勘三郎さんはたたずまいが綺麗だと言っていましたね。歌舞伎に出てもらいたいと言ってましたからね」

勘三郎さんと柄本さんとのやりとりがいいですよね。名優ゆえだと思いますが。

「そうですね。その理由のひとつには、彼らと藤山直美さんが一緒に新橋で2年に1回くらいやっている『浅草パラダイス』という芝居もあるでしょうね。芝居の呼吸は大丈夫なんです。そこはまったく心配してなかったですね」

出演者についてお聞きしたいのですが。監督の目から見た勘三郎さんの良さとは?

「中村勘三郎といえば天下の名優ですよね。映画の中でこんなに綺麗な江戸弁を使う俳優さんは、今まではなかったと思います。舞台ではよく見ますが。綺麗な江戸っ子だったと思います」

小泉今日子さんは?

「素敵な透明感のある、なかなか身近にはいないタイプの人ですよね。生活感というか、普段の暮らしのノイズに惑わされないというか。すごくマイペースな方なので。不思議な雰囲気を持った女優さんだと思いました」

この映画の中でもとうが立ってるとか、年齢的にも下り坂とか、ひどいことを言われてましたね。

「ああいうのを嬉々として、嫌がらずにやってくれる。その楽しさがありますよね」

では、柄本さんは?

「僕は東京乾電池の頃からずっと柄本さんのファンだったんですよ。僕の一本目の映画『マリアの胃袋』というのが柄本さんだったんですよ。それからは時々ゲストでは出てもらってたんですけども、今回、がっちり組むのはそれ以来で。
東京乾電池の頃の柄本さんは、ものすごくエネルギッシュですごかったんです。でも年齢を重ねてくると、それなりに落ちついてくるわけですよね。でも、もう一度、アナーキーな柄本明を見てみたいと思ったんです。たとえば今度の柄本さんの酒の酔い方というのは、なかなか普通の方には出来ないですね」

たぬきの子供役をやってるささの貴斗さんは、笹野高史さんの息子さんですよね。

「そう、一番末の息子さんです。柄本さんもそうですが、あそこも芸能一家ですよね」

この映画には場面こそ違えど笹野さんも出演してますし、くしくも親子共演となったわけですが。お父さんは何か言ってましたか?

「自分の芝居を見るより緊張すると。そういえば勘三郎さんは言うんですよ。『お前じゃないんだよ』、と手をかわす時のあの嫌な顔はオヤジそっくりだなと(笑)」

では最後に、これから映画をご覧になる観客の方にメッセージを。

「勘三郎さんを中心にして、お祭りのようにわっせわっせしたところを楽しんでもらいたいですね」

執筆者

壬生 智裕

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