監督、脚本家、俳優、製作者としての才能を併せ持つ、素晴らしい才能の持ち主、ピーター・バーグは、キャメロン・ディアス主演のカルト映画『ベリー・バッド・ウェディング』で、監督としての本格的デビューを果たしました。その後アクション映画の世界に足を踏み入れ、『ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』、そして評論家に高い評価を受けたアメフト映画『プライド 栄光への絆』を手がけました。『プライド 栄光への絆』はその後、大人気のテレビシリーズとしてリメイクされました。テレビでは、ドラマ『Wonderland』を手がけ、『シカゴ・ホープ』では脚本、監督として参加しました。俳優としても、『甘い毒』、『コラテラル』、『コップランド』、『ファイト・マネー』など数多くの作品に出演しています。また、『キングダム‐見えざる敵』に出演したジェニファー・ガーナーが主演するテレビシリーズ『エイリアス』にも、数回ゲスト出演しました。



−−−撮影はかなりハードでしたか?
ピーター・バーグ: 大変な撮影でした。アリゾナとアブダビで撮影をしたのですが、夏だったので華氏120度(摂氏48度)近くにも気温が上がりました。アクションが満載で、タフなロケでした。

−−−映画はアリゾナとアブダビで撮影されましたが、あなた自身はサウジアラビアに行きましたか?
ピーター・バーグ: 脚本を書いているとき、当時の在英サウジ大使に会って、サウジアラビアに行く許可を出してくれるよう頼みました。彼はビザを出してくれました。映画の取材のためにサウジへの入国ビザを発給してもらえたアメリカ人は私だけだと思います。現地では2週間滞在し、このときの取材は映画のいたるところに生かされています。多くのことが事実に忠実ですが、ストーリーの細部はそうでない部分もあります。 サウジアラビアではアメリカ人の拉致事件や斬首事件などもありました。大変敵対的な、最終的な戦闘が繰り広げられる町も実際にあります。異なる警察の派閥もあって、これは映画の中でも描きました。多くのことを正確に描写しています。

−−−現地にいるとき、危険を感じましたか?
ピーター・バーグ:撮影をしているときには感じませんでした。アブダビの人々は私たちが安心できるようにしてくれましたし、とても親切にしてくれました。UAEでは、ドバイとアブダビの二つの都市が中東でも商業的にもっとも高度 に発展していますから、安心感はあります。でも何が起きても不思議ではない、という気持ちもありました。当然、私たちを殺したいと思っている人たちのかなり近くにいるわけですからね。

−−−キャストの決定はどう行ったのですか?黒人俳優、女優、年配の俳優、若手のコメディー俳優、と多彩な顔ぶれですが、これは意識的にそうしたのですか?
ピーター・バーグ:彼らは単に、私が好きな4人の俳優ということです。特に4つのタイプの俳優を、と考えたわけではありません。女性は必要だと思っていました。サウジという環境で、作業がより難しくなるという設定上でね。でも彼らは映画の各場面に真実味を与えてくれると私が考えた4人、ということですよ。

−−−マイケル・マンはどの程度映画作りに参加しましたか?
ピーター・バーグ:彼は全く干渉してきませんでした。マイケルを製作として迎えて素晴らしいのは、映画監督という概念に信念を持っていることです。映画制作にはビジョンはひとつであるべきで、おそらく私は彼と意見を異にする部分もあると思います。私はどちらかというと協力するのが好きで、他の人たちの考えを聞きたいと思うほうです。でもマイケルは私をとても尊重してくれて、私がやりたいようにやればいいと言ってくれました。他の人たちにも、後ろに下がっているように言っていましたね。

−−−この映画では手持ちカメラの映像が多用されていますね。
ピーター・バーグ:私は手持ちカメラが大好きなのです。私が約8年前に初めて制作面を担当した『Wonderland』というテレビ番組は、すべて手持ちカメラとバンジーカムで撮影しました。映画『プライド 栄光への絆』もその手法で撮影しましたし、テレビ版のほうも同様です。それに私が今取り組んでいるスーパーヒーロー映画『Hancock』も同じように撮影しています。もっと腕を上げれば、もう少しブレを無くすことができるかもしれませんが、手持ちカメラの感覚が好きなのですよね。

−−−エンディングは寒々としたものですね。中東の状況に対してそのように感じているのですか?
ピーター・バーグ: パレスチナ人たちがどうして、テルアビブでバスを爆破する以外にオプションがないという状況に追い詰められるのか、すんなりと理解できます。私としては、中東を政治的に立て直すやり方、人々がテロ行為をやめるだろうという考え、そして私たちが暴力を通じて彼らにやめさせようとしているという事実は、不合理だと思います。映画のラストシーンを観ていただければ分かると思いますが、それが私たちのメッセージです。問題解決への道を断ち切ってしまうことはできません。 そして、新しいアプローチが考え出されない限り、事態は悪くなる一方でしょう。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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