美しいパリの地下には、700万体の遺骨が眠っている——。
今からおよそ200年前に作られ、パリに実在する巨大地下墓地、カタコンベ。
近年、実際に「カタファイルズ」と呼ばれるカタコンベ愛好家の若者たちがカタコンベでパーティーを開催したりしているという。この映画『カタコンベ』は、その事実から着想を経て作られた。
そこで想像して頂きたい。そこは全長500kmという道が把握しきれない程の規模であり、壁一面に死者たちの遺骨が並んでおり、普段は地下なので電灯もない暗闇である。
もし、そのカタコンベにたった一人で閉じ込められてしまったなら・・・!?
主人公も、パーティーに参加しカタコンベにまつわる恐ろしい話を聞いてまもなく道に迷ってしまい、暗闇の中で一人出口を探してさまよう事になる。迷う、逃げる、叫ぶ!絶体絶命の恐怖が彼女を襲う!!

大ヒットシリーズ『SAW』の製作チームが参加、さらにメインテーマソングは元・X JAPANのYOSHIKIが担当し、本作でハリウッドデビューを飾った。ダークな世界観に見事にマッチし、悪夢のような恐ろしい物語を盛り上げている。
主人公を演じるのは、今後の活躍が期待される若手女優、シャニン・ソサモン。その姉を演じるのは、グラミー賞ロッカーであるP!NKことアシリア・ムーア。

今回は、仕事のパートナーであり友人のトム・コーカーと、同で脚本・監督を担当したデヴィッド・エリオット監督にインタビューを行った。




——カタコンベを舞台に選んだ理由とは?

「とにかくユニークで、こんな場所は他にはないと思ったからです。恐らく世界最大の集団墓地で、その中で未だに色々な人が忍び込んでパーティーをやったりと、サブカルチャー的なものを展開したりして面白いと思ったので選びました。」

——カタコンベに実際に訪れた事は?また、その時の印象は?

「4回くらい行った事があります。最初は、この映画の事とは全く関係なく20歳くらいの学生の頃に観光で行った事があるのですが、その時の強烈な印象があり、それで何十年後かにこの映画の企画があって、その時は映画が念頭にあった訳ですから違った見方になったのですが、とにかくダークな場所だと感じました。」

——映画の中にも登場する、「カタファイルズ」と呼ばれるカタコンベ愛好家の人々は、カタコンベの何に惹かれているのでしょうか?

「これといって私も一つの理由はわからないのですが、ある種アドレナリンというか、バンジージャンプをしたり、スカイダイビングをしたりという体験に近い緊張感や興奮感があるので、そういうところかと思います。」

——映画のように、怖い話や伝説は実在するのでしょうか?

「一つだけ話を聞いた事があるのは、昔も今も有名なレストランというのは地下にワインの貯蔵庫を持っていて、ある男が大昔のヴィンテージのワインを盗みに入って迷子になって死んでしまったという話を聞いた事があります。」

——キャスティングについてなのですが、主演のシャニン・ソサモンとアシリア・ムーア(P!NK)に決定するまでの経緯を教えて下さい。

「シャニン・ソサモンに関してなのですが、我々は最初から彼女がいいと思っていました。とにかく一人のシーンが多いという事もありますし、完全に観客が主人公に共感して感情移入できないと、この映画は成立しないので完璧なキャスティングを慎重に進めました。最初、シャニン・ソサモンにアタックしたのですがスケジュールの都合で断られてしまい、再度アタックしてなんとか予定を合わせてもらったという形です。
P!NKは、本格的に女優をやるのはこれが初めてでした。重要な役で、主人公を説得してカタコンベへいざなうというパワフルな個性がなければならず、非常に難しかったと思います。」

——シャニン・ソサモンの、恐怖を感じている様子がとてもリアルでしたが、どのような演技指導をしたのでしょうか?

「彼女はとても自然体の演技をする女優で、凄く焼くに入り込むタイプなので、あまり演技指導をする必要はありませんでした。できるだけ環境をリアルにセットアップするという事に気を付けて、本当に真っ暗なセットの中で、そこにいるだけで何も見えず怖い、という気持ちを引き出したのです。あとは彼女が自分自身を追い込む、という感じで演じていました。」

——撮影期間が短かったそうですが、一番難航した点は?

「一日何ページ分もの脚本を撮らなくてはいけなくて、それを見た時にびっくりしてしまい、どうしたらこんな風に撮れるかと困り果てたほどでした。
カメラと照明を据え置きで撮ると時間がかかるので、ほとんどカメラは手持ちにして時間を稼ぎました。苦労したのは、リアルな環境の中で、一人で静かに取り残され恐怖で動けないというシーンなのに、実際の撮影現場では次々素早く撮っていくので、カットの声がかかった瞬間に200人のスタッフが一斉に走り出すような状況でした(笑)
そんな中、シャニン・ソサモンの気持ちを役柄に戻すという事にも気を付けねばなりませんでした。」

——撮影ではカタコンベのセットを制作して使ったそうですが、非常にリアルで本物のようでした。パリのカタコンベを再現するにあたって注意した事は? 

「私が指示をしたというよりは、カタコンベの何百枚というスチール写真を撮って見せて、優秀な素晴らしい美術スタッフが精魂込めて作ってくれたので、その通りに再現する事ができました。装飾的にも、壁の高さなどを全く同じに作るように心がけました。そのお陰でかなりリアルなものに仕上がったので、よく皆から“これってどこで撮ったんだっけ?”と聞かれ“だからこれはセットだって言ってるじゃないか!”というやり取りをしています。」

——暗くて不気味なカタコンベとは対照的に、美しいパリの町並みの対比が印象的でした、ラストも青空がきれいだったのですが、何か意図があるのでしょうか?

「最後のショットというのは、撮影順でも本当に最後に撮ったもので、とても気に入っている素敵なショットです。意図というよりも、ラッキーで、ほとんどゲリラ撮影と言ってもいいような形だったのです。一応パリ市内の撮影許可はもらっていたのですが、オペラハウスなどの有名どころは許可してもらえず、30秒ぐらいで祈るような気持ちで撮ったものがあのベストショットなのです。」

——ラストは、文字通り主人公の人生がある意味変わってしまうという、ショッキングな結末でしたが、あの終わり方は最初から決まっていたのでしょうか?

「ショッキングだと感じてくれたのは成功の証しだと思います。最初は、うっかり殺してしまったという感じだったのですが、それだけでは少し弱いのではないかという話になり、姉との関係を見直したりして最終的にあの形となった訳です。」

——メインテーマソングはYOSHIKIが担当していますが、起用のきっかけは?

「元々は編集段階にプロデューサーから話があり、YOSHIKIが音楽をやりたいと言っているがどうかと聞かれ、その時は気にもとめず承諾したですが、実際出来上がった曲を聴いてみたところ、あまりに素晴らしかったのでエンディングだけだったのをオープニングや途中にも、挙句の果てには予告編にも使わせてもらいました。この映画全体を引っ張ってくれる形になって、凄く感謝しています。」

——プロデューサーが、『SAW』チームという事ですが、本作は『SAW』の影響を受けているのでしょうか?

「『SAW』のような映画が好きな人というのは、ハリウッド映画を求めていません。ビッグネームの出演者、巨額の制作費というのとは全く逆行するようなカルト的な違うタイプのものを求めているので、そこは念頭に置きました。」

——これまで監督だけでなく、脚本も担当なさっていますが、作品を作る上でのこだわりは何でしょうか?

「全体的に、作品が勢いを持っているという事を心がけています。観客があまりに勢いがあって、展開が早すぎてついていけないというのでは困りますが、その一歩手前まで押すような作品を作るようにしています。」

——今後の予定は?

「一番大きいプロジェクトは、『グエムル』のリメイクで、脚本を担当する事になっています。」

執筆者

池田祐里枝

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