香港の高級レストランで、殺人事件が発生した。刑事ワイ(サム・リー)は、殺し屋パン(エディソン・チャン)を追いかけるうちに、パンの壮絶な過去を知る。一方パンは少女ユウ(ペイ・ペイ)に出会い、孤独な二人は惹かれ合っていくが・・・。
“生きるため“に、パンとワイの二人の狗が激しく対峙する!!

ドーヴィル・アジア・フィルム・フェスティバル(ドーヴィル・アジア映画祭)では、タランティーノ、北野武に続く逸材と称され、最優秀アクション映画賞を受賞した『ドッグ・バイト・ドッグ』。
本作で、台湾金馬賞の最優秀主演俳優賞候補にノミネートされたサム・リーは「メイド・イン・ホンコン」でデビューしてから10年。今回、スタントなしで演じたアクションシーンはもちろんのこと、ラストの狂気迫る演技には誰もが圧倒されるに違いない。
また、若者のファッションリーダー的存在である彼は、インタビュー時に自身のブランドのTシャツを着て登場。映画本編とはまた違い、合間にはユーモア溢れる表情も見せてくれた。
そんな来日中のサム・リーに、本作について語って頂いた。






——今回、バイオレンスなシーンもありつつ、父との葛藤も描かれていますが、どのように演じられたのでしょうか?

撮影の前に脚本を読み返し、自分の中で消化して、この芝居にはどんな肉付けをしたらいいかというのを色々考えました。それから撮影前に監督や出演者の方々と話し合い、どういう役にしていくか、どういう演技にしていくか、という事を作っていって、最終的に撮影現場で相手を見ながら肉付けの仕方を変えたりしました。それが今回は全て上手くいったという感じですね。

——当初、エディソン・チャンさんが刑事役、サム・リーさんがパンというキャスティングだったとされていますが、もしパン役を演じるならどのようになっていたと思いますか?

キャスティングの予定ではなく、最初に私が脚本を見た時には、自分もパン役をやった方がいいと思っていたのですが、ソイ・チェン監督が「観客が見たら、君がパン役だという事がわかってしまうから、先入観が入ってしまう。だから今回は役を入れ替えてやりたいんだ。」と言ったので、今回は普段と変えて、エディソンとパンの役を変えたのです。
正直、自分がパン役をやったらエディソンよりも怖い芝居ができると思います。実際、それはこの映画のラストで、エディソンを追ってタイに行くというシーンで見る事ができます。闘って人を殺しながらエディソンを待っている時の彼というのが、前半のエディソンの芝居で、あのような芝居になると思います。

——前半とラストでは、まったく違う雰囲気ですが、演じる上で差を付けた点は?

前半と後半の違いを見せるためには、少し変えたくらいではわからないので、特にラストでは、髪もそりあげて、眉もそり、体も少し鍛えて体つきから全部変えて変化を見せました。後半の方では、セリフもなく、とにかく人を殺して闘うというそれだけで変化が見られるとは思うのですが、変えるのなら全部変えようと思い大きく変えました。

——現在、国内外でも評価を受けているソイ・チェン監督との仕事について、現場の様子などは変化していますか?

ソイ・チェン監督と初めて会った頃というのは、コメディー映画だったのですが、ソイ・チェン監督は助監督で年もあまり変わらないので、仲良く冗談を言い合ったり、楽しく一緒に仕事をしていました。その次に会った時は、彼は監督になってホラー映画を撮り、私はその作品に二日間程ゲスト出演しました。その時思ったのは、それ程変わっていないけれど、少し大人になったかなという感じでした。
今回『ドッグ・バイト・ドッグ』で会った時に感じたのは、本当に大人になって、監督として熟練した状態になったという事でした。映画の性質がリアルなバイオレンスアクションという事もあって、厳粛な現場でしたし、演技指導もスタッフのコントロールにしても、非常に成熟した感じを受けました。

——この役で金馬賞にノミネートされましたが、この映画はどのようなキャリアになったのでしょうか。

自分自身、こういうシナリオをずっと待っていました。「メイド・イン・ホンコン」でデビューしてから、ここまで10年の中で色々な役をやってきましたが、ほとんどがコメディーだったので、ずっと自分としてはシリアスな役がやりたいと思っていました。
もちろん、金馬賞にノミネートされた事は非常に嬉しく思いました。あれだけ沢山の映画の中で、4人だけがノミネートされ、その中の1人に選ばれたという事は、コメディーだけではなく、マルチな芝居をできる役者だと見て貰えたと自分では思っています。
この脚本もタイミングが良く、もし3年ぐらい前にこの役が来ていたら、このような芝居はできませんでした。非常にいいタイミングだったので、自分としても一番いい状態で演技できたので大事な映画です。

——これまで様々なタイプの作品に出演なさっていますが、特に作品を選ぶ際のポイントなどは?

まず以前は、監督、脚本、そして共演相手を基準にして大体見ていたのですが、基準といってもそれ程厳密なものではありませんでした。それ程多くの役をやってきたとは思っておらず、似たような役が多かったりしたので、まだまだ色々な役ができると思っています。ただ今回、『ドッグ・バイト・ドッグ』に出た後は、脚本を重視するようになると思います。今後撮る映画が、これ以下の作品にしたくはないのです。そして、監督、相手というのもやはり自分を引き出すという上では大事だと思います。

——「メイド・イン・ホンコン」でデビューして以来10年経ちますが、振り返って見ていかがですか?また、スカウトされてデビューしたのは有名ですが、役者になっていなかったら何をしていたと思いますか?

この10年、役者としてやってきましたが、やはり常に不安感は付きまとっていますね。今は仕事があるけれど、いつ突然仕事がなくなるかはわからない。忙しい時は寝る暇もないくらいだけれど、暇になったら本当に何をしたらいいかわからない状態になってしまい心配になりますが、今度別の仕事をしようとすると、皆が私の事を知っているのでできないのです。ですから、もう後戻りのできない役者という仕事についてしまったという感じです。
もし役者になっていなかったら、元々、内装など電気関係の仕事をしていたので、恐らくそっちの仕事をしていたか、自分で会社を持っていたかもしれません。

——今後の予定は?

現在、フランス映画に出演していて、今クルーはフィリピンで撮影していて9月の下旬くらいには全て撮り終えます。自分としては非常に面白いチャレンジで、「無問題2」で日本語を喋るという役でしたが、今度は全部英語で喋るので、楽しみですね。

執筆者

池田祐里枝

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