「極道の妻たち」「イエローキャブ」など、体当たりの取材で次々と話題作を発表する女流作家・家田荘子の「バブルと寝た女たち」は過去3度映画化されているが、本作はその4度目の映画化となる。本作ではITバブルにスポットが当てられ、バブルという虚像の世界に翻弄された人間の姿をドラマチックに描き出している。

 本作のメガホンをとったのは金子修介や椎名誠などの監督作品で助監督を務め、04年長編デビュー作『インディアン・サマー』で注目を集めた佐藤太。

 そして主人公の牧田碧を演じるのはグラビアで注目され、最近では女優としての活躍の目覚しい三津谷葉子。ひとりの男を一途に愛しながらもITバブルに弄ばれる純な女の子を熱演している。

 今回はその三津谷さんにお話を伺うことにしよう。



■女の方にも見てもらいたいですね

家田荘子さん原作の『バブルと寝た女』というと、過去の映画などから過激なイメージがあります。この作品をやるにあたって、覚悟が必要だったのではないですか?

「覚悟というよりは、不安ですよね。だから不安に思っている部分を監督さんやプロデューサーさんに正直に伝えました」

具体的にどういった点が不安だったのでしょうか?

「まずベッドシーンですよね。それと大人の話ですから、果たして私にできるのかというところもありました。
 ただ、監督がいろいろな知り合いを通じて、私の話をよく聞いていたらしいんですよ。その上で私とお仕事をしたいと言ってくださって。嫌なものは嫌だと言ってくれて構わないし、出来ないことは出来ないと言ってくれて構わないからと。それでやることになったんです。やると決めたからには精一杯やろうと思いました」

まわりの反応は?

「題名もあると思うんですが、過激というイメージが強いみたいで。今回、雑誌なんかでもパブが載っていたりしているので、『おお、三津谷やったか!』と思ってる方もいらっしゃるかもしれないんですけど」

どうしても入り口が過激な感じですよね。

「でも、そこをきっかけに観てもらえるのもありかな、なんて思ってます(笑)」

佐藤監督ってどういうタイプの人でした?

「こういう作品なので、もう少し年輩の、こういった作品を多く撮ってる方なのかなと思っていたんです。でも、すごくポップな感じの方でした。それがすごくやりやすかったというか。こちらの気持ちも分かってくださいましたからね」

台本を読んだ感想は?

「最初はさらっと読めたんですよ。でも後々監督に細かい話を聞いていくと、実際にITの世界で話題になったことをちゃんとリサーチして書いたということが分かったんです。
 たとえば奥さんを交えて、ティールームで商談をするシーンがありました。本来ならそういう商談は会議室できっちりやらなければいけないものですよね。でもそれが若さゆえに、いつ誰に聞かれてもおかしくないところで商談してしまったことが実際にあったそうなんです。だからすごく奥が深いんだなと楽しくなりました」

よくITの社長さんと女優さんが付き合ったなんて話を聞きます。三津谷さんの周りにいる人に会ってリサーチはしなかったですか?

「それがそういう知りあいが全然いないんですよ。ヒルズ合コンってよく聞きますけど、私なんて滅相もない(笑)。何だか自分とは全然別世界な感じがあって。
 ただ逆に今回の役が、最後までITバブルのことを分からないままでいるという純粋な女の子の役だったので、かえってそういうのを知らない方が良かったのかもしれないですね」

金子昇さん演じるIT社長についてどう思います?

「どこかで男の人ってこうなのかしらと思ってしまう部分や、嫌だわと思ってしまう部分もあるんですけど(笑)。でも、ああやってバリバリ仕事をしていて、お金も持っていて、しかも金子さんみたいに格好いいとなると、女の子はやっぱり惹かれるんだろうなと思いましたね」

アプローチの仕方がすごいですよね。

「女の子だったら一度くらいは味わってみたいかも、という感じはあります(笑)」

金子さんに服を買ってもらうシーンなんて『プリティウーマン』みたいでした。

「男性がキレイになるお手伝いをしてくれるなんて、実際にはないですよね。映画の世界だけなんじゃないの? とか思いながら。でも、実際にされたら、女性はメロメロでしょうね」

ヘリコプターに乗って二人でデートをする場面がありましたが、あのシーンでの撮影はどうでしたか?

「あれ、ヘリコプターが本当に来たんですよ。感動的でしたね。本当は私、乗り物が苦手で、ジェットコースターとかも駄目なんですよ。周りの人からさんざん脅かされて、『無理!無理!無理!』とか言ってたんですけど。実際に乗ったら素で楽しんでました(笑)」

そういう意味では、この映画は意外に女性が見たら楽しいんじゃないかと思うんですが。

「そうですね。過激な映画だと思われがちですが、実はけっこう深いんですよね。女性が見ても、友だちは大切にしようとか、お金だけが大切なのかとか、愛って何だろうとか考えさせられますからね」

女性である家田荘子さんが原作というのもあるんでしょうね。

「そうですね。だからぜひ女の方にも見てもらいたいし、カップルで見に行ってもいいですよね」





■正直、不安で悩んだ部分もあった

この映画のオファーを受けて、どう思いましたか?

「映画の『東京大学物語』をやった後に、20歳を越えたんですよ。そのときに、10代の時とは違う内容の仕事をする時が来たのかな、と思ったんです。
 それがきっかけで肌の露出だったり、今まで出来なかったベッドシーンだったりに挑戦する。自分の転換期だと思ったんです。
 でも複雑な気分にはなるんですよね。これをやって後悔しないか。私がそれをやることで、みんながどう思うんだろうか。逆にこれで三津谷葉子を知って、好きになってくれる人もいるのかなとか。すごく悩みましたね」

それって、すごく正直なところのような気がするんですが。

「すごく正直なところです(笑)。だからやってしまってから後悔するのだけは嫌で。それなら最初からやらないという道を選んだ方がいい。
 でも、いろいろ考えた時に、自分の中で幅を広げたいという思いもあるし、自分がどこまで出来るんだろうという思いもあって。
 撮影が始まっても、正直不安で悩んだ部分もあったんですけど、実際にやってみると、自分はここまで出来るんだという自信がついてたんですよ。だからやって良かったと思いますし、勉強にもなりました」

これからも女優として活躍される三津谷さんにとって、この作品はどういう位置付けの作品になりそうですか?

「まだまだ全然いろんな経験をしなくてはいけないし、少しづつやらせていただく中で、1歩ずつ、大人の考え方に近づいた気がするんですよね。山を越えられたというか。
 今までだったら最初から出来ないだろうなと諦めて、やらないという選択をしていたと思うんです。でも挑戦することによって、やって良かったと思えたんです」

ステージをクリアするといった感じですね。

「監督さんには、私がこれから女優として長く続けていく中での通過点としての作品になってもらえればいいと言ってもらって。まさにそういう作品なのかなと思うんです。
そういう部分で、自信をつけさせていただいたし、逆に何も怖くなくなったというか」

強いですね。

「強くないですよ! 日々、迷いながら、夜はベッドの中で泣いてるんですから(笑)。でも、後悔だけはしないように。やっぱり三津谷葉子で良かったと一人でも多くの人に思ってもらえるように頑張ってます」

三津谷さんにとって、映画のお仕事はどういう位置付けにありますか?

「自分の中では、映画だからドラマだからとか、あまりそういうのは考えてないですね。というより、考えられるほど経験もないし、どのお仕事も毎回必死ですから。
 私が演技をやってると知らない人もまだまだ多くて。グラビアのイメージが強かったり、三津谷葉子のことを知らない人も多いだろうし。スタッフの方でも『あれ、葉子ちゃんってドラマ初めてじゃないよね』と言われたことがあったんで、『ちょこちょこやらせてもらってます』なんて答えたんですが(笑)」

僕なんかは映画にテレビにと、かなり活躍しているように見えますが 

「でも、今は『大丈夫なの?』という状況で呼ばれて部分もあると思うんですよ。そういう人たちに、三津谷葉子を呼んでよかったとか、また一緒に仕事をしたいとか、思ってもらえるように。そういう山を越えるためのポイントというんですかね、1個1個そういうのをクリアしていって、いろんな人に演技をしている三津谷葉子を知ってもらいたいというのがあります。だから自分の中で区切らずにやっていきたいし、区切れないですからね。どの中に入っても一緒で、頑張りたいと思ってます」

今はやれることを貪欲にやろうという段階なんですね。

「今回もそうですけど、私と一緒にお仕事をしたいと言ってくださる方がいらっしゃる。そう言っていただけたからには、その期待以上のものを残したいと思いますし、それを目標にやってます」

こうなりたいな、みたいな女優像ってあります?

「昔に比べて女優としてやりたいようにやらせてもらえてるんですが、最近ではバラエティ番組に出るのも楽しくなってきているんですよね。そういうところで学んだことをコメディでやれたら最高じゃないかなと思って。私はラブコメが好きで、DVDでよく見ているんですけど、そういう可愛らしいものもやってみたいですね。ただ、これだけとか決めつけずに幅広くやれたら最高かなと思います」

三津谷さんだったら、ラブコメも似合いそうですよね。

「先日、京都の太秦(うずまさ)で撮影したネットムービーの時代劇コメディにヒロインとして呼んでいただいたんですけど、それがすごく面白かったんですよ。これからはそういうものにも挑戦していきたいですね」

執筆者

壬生智裕

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