メルマガ、ブログから火がつき、老若男女問わず話題になり書籍化した「通勤電車で座る技術!」(万大/かんき出版刊)。この本を映画化した『だからワタシを座らせて。通勤電車で座る技術!』が渋谷シネ・ラ・セットにてレイトショー公開されている。

『だからワタシを座らせて。通勤電車で座る技術』は電車で座る技術を講座のように紹介するほか、電車で出会う2組の男女の恋模様、『あずみ』のアクションチームが手掛けた座席をめぐる壮絶なバトルなど、リアルな切なさとブラックユーモアを交えながら描いた新しいエンターテイメント。

主演を演じるのは、2001年から単身渡米し、現在アメリカに活躍の場を移している田村英里子。
主演女優を探していた市川徹監督が、別の仕事でアメリカへ行った時に見かけた映画のポスター。そこに写っていたのが田村だった。彼女が適役だと感じた監督は滞在中に田村と連絡をとることに成功。こうして田村の約5年振りとなる日本映画出演が決定した。
偶然とも言える出会いにより、主演に抜擢された田村英里子に撮影での思い出や、現在の生活について語ってもらった。





——「恋」より「仕事」という気位貴子を演じてみて如何でしたか。
「私と近い部分もあって演じやすかったです。いくら強そうに見える女性でも、弱い部分があるということを表現したかったです。アメリカでのワークショップ、アクティングのシーンスタディで学んだことを初めて活かせた日本の作品でした。」

——アメリカでは学んだこととは。
「“笑い” が如何に大切かを学びました。今私は、多くのアメリカの俳優達が世に知られる前に通っていた、業界では知られているアクティングコーチのクラスを受けています。彼女の専門はコメディで、いかに笑いをとるかでその時のシーンが判断されたりもします。彼女はセレブリティ達が撮影に入ると、セットでのコーチを彼らから頼まれ、撮影時シーンごとにお芝居の手助けをしたりしています。クラスには、毎週多くの今現在テレビに出ているアクター達や、モデルから転向して女優になりたいトップモデル達が見学に来たりと、常に刺激的なクラスです。勿論オーディションがあるのですが、日本人、ましてやアジア人は私一人だけです。向こうでは、どのアクティングスクールで学んだかということもオーディションの際に見られていて、今私のいるハリウッドは、世界で最も競争率の激しいところなんだと実感しています。
このコーチに学んでアメリカでコメディの大切さを知った時に、今回の映画のお話を頂きました。脚本を読んで、本当に面白い作品だったので、出演を決めました。」

——ハリウッドで尊敬している俳優はいますか。
「ナオミ・ワッツです。30歳を越えてから注目された人で、彼女も私と同じように長い間オーディションを受ける日々が続いていました。それを乗り越えて認められた人で、とても尊敬しています。」

——今作では駅のシーンが多くありましたが、大変だったことはありますか。
「電車に乗っている場面は、ある駅からある駅へ着くまでの数分間しかなかったので、その区間を往復しての撮影で、また限られた時間内で撮影だったので、そこは少し大変でした。でも実際、動いている電車内でのシーンだったので、臨場感が出て良かったと思っています。」

——思い出に残ってるシーンは。
「酔った貴子が突然、「甘えるんじゃないよ!」と叫ぶシーンがあるのですが、私はお酒が弱いので、そのシーンはどうなるのかなと台本を読んだ際、一瞬思いました。今回の映画は、撮影期間がとても短かったので殆どのシーンが一発勝負でした。リハーサルもなかったので、本番で悔いが残らないようにいつも準備を万端にしているようにしました。」

——後半のダンスシーンが印象的でした。
「あのシーンについては監督も周囲の人から色々言われたみたいでしたが、変でしたか?(笑)監督が以前から主演女優を躍らせるのが夢だったと仰っていて、その役を私にやらせていただいてとても嬉しかったです。」

——ダンスのレッスンはアメリカでしていたんですよね。
「いいえ、してないです。(笑)撮影の為にアメリカから日本に行ったその夜、成田空港からホテルへ入り、スタッフの皆さんにご挨拶をしたのですが、その時に、「田村さんダンスできる?」と監督に聞かれました。(笑)レッスンの時間がなく、1時間半という短いリハーサル時間の中で、振り付けの藤島巨樹先生が一生懸命おしえてくださいました。」

——現在もオーディションを受ける日々とのことですが、そのパワーの源は。
「好きなことをしていることだと思います。日本での対応とは全く異なるし、無名というのはこういうことなんだと凄く感じています。なんだか人生を2度生きているという感じで楽しいです。 」

——今後の予定は。
「つい2、3日前に、ある映画祭で賞をとった若手監督の作品に出演することが決まりました。まだ決まったばかりなのであまり詳しくはお話できないのですが。シナリオ上は日本人ではなかったので諦めかけていたのですが、最初のオーディションから2ヶ月経ってから、私に決まりました。これから私の役のバックグラウンドを、少し書き直してくれるそうです。アジア人としてハリウッドで生きている中で、こんなことは滅多に起こらないので、本当に嬉しいです。」

執筆者

t.suzuki

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