あなたは好きな人にどうやって思いを伝えますか?
この世の中には言葉で愛を伝えることが上手な人、そして言葉で伝えることが不器用な人がいます。

『雨音にきみを想う』では、後者に当てはまる男女が主人公。
愛を与えられることなく成長した青年チョッカン(ディラン・クォ)と、病に冒され愛に臆病な少女ウィンイン(フィオナ・シッ)は惹かれ合いながらもお互いの気持ちを確認しあうことができない。
過去の闇を背負いながらも献身的に家族に尽くすウィンインの姿に惹かれ、ウィンインを愛そうと決意したチョッカンは、不器用ながらも彼女に愛を与え、彼女に笑顔を取り戻す。

そんな日々の幸せをかみしめる二人にチョッカンの過去が襲い掛かる。
チョッカンとウィンインは無事平穏な日々を迎えることができるのか—。

アイドルの瑞々しく爽やかな姿を描き出すのに定評のあるジョー・マ監督が送る雨にまつわる切ないラブ・ストーリー。

雨が降って止み、そして輝く太陽が顔出した時に思い出すのは君の笑顔。
短い時間でも得ることができた愛はいつまでも心に残る。
チョッカンとウィンインが雨音に刻み込んだ愛のカタチを主演のディラン・クォさんにうかがった。






今までにはない影のあるチョッカンを本作で演じ、これからさらに俳優としての魅力が開花していきそうなことを予感させる。

『雨音に君を想う』はディランさんにとってどういった作品になりましたか?
「僕にとってスクリーンデビュー作になります。この世界に入って間違いなかったと思えるまさにターニングポイントとなる作品です。」

BLACK NAIGHTに続く来日で、日本のファンも着実に獲得しているディランさん。今ご自分の状況どのように捉えているのか。
「日本は子供の時から慣れ親しんだ大好きな国なので、こうやって日本にくることができ、さらにはたくさんの人に好きになってもらえるのは嬉しいです。」

衝撃的なラストシーンは、ディランさんの目にどのように映りますか?
「監督も敢えてこういう結果にしたのだと思います。映画にははっきりとした結末がなくてはいけないというものではないと思うので、観客の方々にもこういう愛もあるんだと思ってもらえたらいいのではないのでしょうか。」

コメントからは、ディランさんからジョー・マ監督の映画の手法への敬意すら感じられる。
監督はブレイク直前のアイドルを起用し、彼らの魅力を最大限引き出すことができると、香港ではその裁量に一目置かれている存在だ。そんな実力派監督との仕事はディランにとってどのような影響をもたらしたのか。

ジョー・マ監督の演出方法はどうでしたか?
「監督から映画のいろはを教えていただきました。『今まではテレビ的でオーバーな演技をしていたから、これからは映画の演技を学んでほしい』と言われました。映画で演技するという点においてとても啓発された監督です。セリフで自分の気持ちを表現するだけでなく、目であるとか、しぐさ・表情で表現することを監督のもとで学びました。」

チョッカンという役柄をどのように受け止めていましたか?
「まず彼は愛に飢えていました。具体的に言えば家族愛であったり、本当にたくさんの愛を彼は欲していたんだと思います。そしてそれは社会に対しても言えることだと思います。彼は社会の一員として認められたいけど、いろいろなことがあって社会の片隅に追いやられてしまっている。僕はそんな彼に同情していました。」

愛に臆病になっているチョッカンをウィンインに向かわせたものとは?
「チョッカンはウィンインのことを同じ世界に住む人だと思ったんだと思います。彼女もまたチョッカンと同じ恵まれない境遇で、必死に生きています。そう言った苦しい環境から彼女を救い出してあげたい、守ってあげたいと思っていたんだと思います。」

チョッカンを演じる上で気をつけた点はありますか?
「チョッカンはウィンインのことを愛していましたが、愛する資格が自分にはないとも思っていたと思います。悪の仕事を生業としている自分の中に彼女を引きずり込んではいけないという思いと、でも心配で彼女を守りたいという思いが葛藤していたのではないか、と。」

うまくウィンインを愛することができないチョッカンが自分なりの愛を伝えようとするシーン。そっと後ろからウィンインを見守るチョッカンの姿が目に浮かぶ。

原題は”誠実な愛”という意味の中国語『摯愛』ですが、ディランさんにとって誠実な愛とは?
「母が僕に対して注いでくれた愛情だと思います。母が他界して時間は経過しましたが、子供の頃の母との思い出は忘れないですから。」

ウィンインを演じたフィオナ・シッさんはどういう女優さんでしたか?
「すごく真面目で親しみやすくて、とても頭の良い女優さんです。そういう一面を発揮する場面はなかなかないようですが(笑)。心から人を助ける気持ちのある子で、広東語のわからない僕に、広東語で書かれた脚本を訳してくれたり、監督の会話の通訳もしてくれました。すごく印象的だったのは、撮影の合間に隅っこの方で指先が真っ黒になるまで絵を描いていたことです。絶対見せてはくれなかったんですが、特別な集中方法だったのかもしれないですね(笑)。」

監督がディランさんを起用したのは悲しげな目だったとお聞きしているんですが、ディランさん自身が好きな体のパーツはありますか?またその高身長で得したことは?
「特に満足しているところはないです(笑)。役者としても背で得した経験もありません。私生活ではむしろこの身長なので、どこにいても目立ってしまいます。損することの方が多いんですよ。」

日本に幼少時代から親しんできたディランさん。今、日本で共演したい俳優さんは?
「子供の時から日本のドラマを見て育ったので、日本は大好きです。機会があれば出演もしてみたいです。ただまた自分から誰々と共演していみたいと言えるほどの資格はないと思っているので、相手がどなたであろうと脚本と尊敬できる監督さんであればお話を受けたいと思います。」

最近気になった邦画・ドラマはありますか?
「木村拓哉さんが出演された『プライド』は楽しんで見ていました。映画だと、DVDで観た『世界の中心で、愛をさけぶ』が一番心に残っています。」

ディランさんが雨で思い出すことはありますか?
「学生時代僕はオートバイに乗っていたんです。雨が降った時はレインコートを羽織るんですが、そうすると後ろに乗っている彼女までひとつのレインコートの中にすぽっと入ってしまうんです。それは結構暑くて(笑)。でもロマンチックでした。」

ディランさん自身は好きな女性にどうやって愛を伝えますか?
「チョッカンがいろいろな行動で好意を示しているように、僕も好きになったら口で言うのではなくて彼女に自分の行動でわかってもらえるような方法で気持ちを伝えます。」

と、雨にまつわる素敵なロマンスから好きな女性のアプローチまで語ってくれるディランさん。この先日本でもっと素の部分を、そしてもちろん映画の中で素敵なディランさんの表情が見られることを期待したい。
本作の中では子役チャン・チンユーとのシーンでも、意外なディランさんの姿を見ることができる。シウヤウとチョッカンのわかり易い言葉のやり取りだけではなく、心暖まる触れ合いはスクリーン側の私たちの気持ちまでも暖めてくれる。

シウヤウ役のチャン・チンユーちゃんから得たことは?
「あります!彼女は脚本を見るわけでもなくセリフを覚えることもしないんです。まわりの大人が次はこうやって話して泣くんだよと言うと、『はい、わかりました』と言ってすっと役に入るんです。小さいけどプロフェッショナルです。彼女から学ぶことも多かったです(笑)。」

07年に日本公開が予定されている『夜の上海』では本木雅弘、ヴィッキー・チャオとの競演が決まっている。
「ヴィッキーがタクシードライバーで僕が修理工、本木さんは日本からやってきた凄腕のスタイリストという設定です。ヴィッキーが修理工の僕を好きなんですが、車の修理をしに来た時に、僕が明日結婚することを告げます。それを聞いて彼女が泣き崩れたところを本木さんが目撃してしまいます。1日のうちに起こった出来事を映画にしています。」

執筆者

林 奏子

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