真実の愛の物語『ユア・マイ・サンシャイン』 主演チョン・ドヨンインタビュー
これは嘘のようで本当のお話。
あなたがいるから私はこんなに輝ける—『ユア・マイ・サンシャイン』というタイトルはウナとソクチュンの愛を語るために生まれてきたと言ってもいいほど、この映画が持つ魅力を増幅させている。エンドロールでは主演のチョン・ドヨンとファン・ジョンミンが、2人に成りきって同名の歌を歌っている。
チョン・ドヨンはウナとソクチュンの魅力についてこう語る。
「2人がいっしょにたくさんの苦難を乗り越えて克服してきたからこそ、2人の間には運命の愛が育ったのでしょう。」と。
私たちは本当の愛を求めて、運命の相手を探そうとする。でもその姿勢は正しいかのように見えて間違っているのだと映画の中の2人を観て思う。
自分の生い立ちや人生に暗闇を抱えているウナを全身全霊で受け止めていこうとするソクチュンの姿はマヌケであるように思えるが、自分のことを信じてくれる存在があるからこそ人は変われる。ウナも変わっていく。
ソクチュンがウナを照らし出すことで、2人は何にも変え難い関係を築くことができた。人と出会い、人を大切にする、そんなことが間々ならない今、逆境を乗り越えていく2人の姿は運命の相手を探す不安定な私たちを応援してくれる。
「ウナの役はあまりにも衝撃的で、当初は受け入れることができませんでした。」と話すチョン・ドヨン。監督に見せられた写真を見てこの役を決意したそうだ。「女性を愛している時の男性の姿と、女性を失ってしまった男性の姿があまりにも違うので、ひとりの人をここまで変えてしまう愛の全貌を知りたくなってしまいました。」
暗い過去を抱えていても、前向きにひたむきに生きようとするウナの姿には誰しもが共感を覚える。
そんなウナを持ち前の美しさと素晴らしい演技力で、韓国の監督から常にラブコールを受けているチョン・ドヨンが熱演。『ユア・マイ・サンシャイン』の魅力をたっぷりと語っていただいた。
実際に演じて苦労した部分はありましたか?
「出演を決めるまでは悩みもありました。でもいったん出演を決めてから非常に楽しく撮影に望むことができました。ただ一箇所だけ、どういう風に演じるか悩んだ部分があります。それはウナ自身がエイズに感染していると知った時、彼女は果たしてどのような心境になるのか、ということでした。その時の心情は計り知れないものがあったと思います。いろいろと考えたすえ、ウナは感染していることで、当然不安や絶望を感じるだろうと思いましたが、それ以上にソクチュンの愛を失ってしまうのではないか、と怖くなったのではないかと考えました。ウナは作品の中で「愛なんか信じられない。」と言っていますが、本当は愛されることを望んでいたでしょうから。」
ご自身の演技に影響を与えた人はいますか?
「そう言った質問をいただく度に答えを考えなくてはいけないと思うのですが、影響を受けた人はいないと答えることが的確かと思います。というのも、学生の頃から、特に会いたいと思う人がいなかったんです。今になって誰が好きだったんだろうと考えても浮かんできません(笑)。でも逆に、そういう人がいなかったからこそ、自分が近づきたいと思う特定のイメージがなく、イメージに執着しない今の自分がいる、と思っています。」
チョン・ドヨンさんが思う女優の魅力はなんですか?
「女優はたくさんの人に自分のことを知ってもらえる上に、同年代の女性よりも多くの収入を得ることができます。女優になる前、私もそう言ったところが女優の魅力だと考えていました。しかし今はそういった結果としての部分ではなく、現場で仕事をしているひとときがやはり女優という仕事の一番の魅力だと考えています。体もきつく疲れますが、まったくストレスに感じることはありません。監督やスタッフの方とたくさんの話ができることは幸せだと思いますし、自分が幸せだと思う仕事ができること、そしてそういう状況にあるということを、本当に誇らしく思っています。」
恋人同士を演じる上で俳優さんとの独自の息の合わせ方はありますか?
「お互いが見つめあいながら話をするのと同じ方法だと思います。話をしていても片一方が話をしているだけなら会話になりませんよね。お互いがお互いの話を聞いて、あいづちを打つ、そう言ったことで成り立つ呼吸の合わせ方と思います。共演をしたペ・ヨンジュンさんもイ・ビョンホンさんも素晴らしい俳優さんですから、そういった呼吸の合わせ方をわかっていらっしゃるのだと思います。相手のいうことに耳を傾け、相互のやりとりをする会話の合わせ方といっしょの方法で、演技上の恋愛をえがくときもそれで十分だと思います。上手く演じられれば、愛しているという雰囲気が上手に作ることができます。」
実際にHIVに感染したら?
「この作品を撮る前だったらきっと自殺したいという衝動に駆られて絶望的な気分になったと思います。でも撮影を終えて、私のHIVに関する考えは変わりました。HIVは風邪のウィルスを持っているのといっしょで、保菌しているだけならば、他者に危害を加えることはありません。今の自分ならできるだけ元気な気持ちで生きたいと思います。韓国の『プラハの恋人』というドラマに出演した際に、チェコの大使館のディナーに招かれ大使婦人とお話する機会を頂きました。彼女から韓国でHIVに感染した人たちが執り行う映画祭で『ユア・マイ・サンシャイン』を上映すると聞きました。私は彼らがアクティブに活動していることに大変驚きました。自分ももし感染したら彼らのようになりたいです。」
監督に自ら提案されたことはありますか?
「特に提案したことはありません。監督からはチョン・ドヨンらしいウナを演じてほしいと有難いほどの信頼をよせていただいていましたし、現場でのリハーサルで細かいディティールを自分の中で考えながら演じました。」
執筆者
林 奏子