日本と韓国の若者たちの出会いを描いた、韓国のオムニバス青春映画『まぶしい一日』。
この企画は、戦後60年にあたる2005年に<日韓関係>を捉えた作品として、3人の若手監督に依頼することで始った。
監督、キャストは全員70年代、80年代生まれ。ストーリーは日韓間に横たわる様々な問題を織り込みつつも、あくまでも青春映画であり、どの作品も軽やかでみずみずしいものに仕上がっている。
3作品のうちのひとつ『空港男女』は、ひょんなことから空港で出会った日本人男性と韓国人女性の空港での一日を描いたラブコメディー。
この日本人・石田秀紀を演じているのは現在、韓国に留学中の塩田貞治さん。2002年『世界ウルルン滞在記』(TBS系列)で韓国の農家にホームステイし、収穫の時期まで残るという番組はじまって以来の選択をしたことで記憶に残っている人もいるだろう。番組をきっかけに、2004年に渡韓し、現在語学と演技の勉強をしながら、韓国での本格的な俳優活動の準備をしている塩田さんに、映画に出演したきっかけや撮影の思い出を話してもらった。







—— この映画に出演することになったきっかけは。
「韓国で住んでいるアパートの大家さんに紹介してもらった日本人との出会いがきっかけでした。彼女はアルバイトで映画のキャスティングをしていて、監督が日本人の俳優を探しているから会って貰えないかと。韓国で映画に出演するのが夢で、こんなに早く映画の話がくるとは思っていなかったので、チャンスだと思いました。その時に、監督に『ウルルン滞在記』など韓国に来た経緯を話したらとても感動してくれました。僕が韓国語を話せないことや韓国で経験したこと、それと監督・スタッフの海外での体験したことを踏まえて脚本を作ってもらいました。」

—— 日本人を演じるにあたって、監督からどのように説明されましたか。
「監督には、韓国人の考える日本人のイメージでやってくれと言われました。なので、この映画では「すみません」と謝ってばかりいます。(笑)」

—— 塩田さんご自身と演じた石田秀紀を比べてみて。
「僕はあそこまで謝らないですね。(笑)僕自身は、一見弱い感じにみられることが多いのですが、自分で決めたことは実行するので、一緒にいると“結構内面は強いんだね”と言われます。でも自分の中には弱いところもあるし、言葉が通じない経験など共感できる部分もあったので、演じやすかったです。」

—— 前半は殆どセリフのない演技でしたが大変でしたか。
「日本でもそうですが、言葉のない演技は内面的なものを見せなきゃいけないので苦労しました。この作品はコメディタッチのものだったので、自分ではやり過ぎじゃないかと思う部分でも、監督には“もっとやって”と言われました。コメディは初めてだったのですが、凄く楽しくて勉強になりました。もう一回やらせてもらえればもっとうまく出来ると思います。(笑)」

—— 日本での撮影現場との違いは感じましたか。
「僕が完璧には韓国語を理解できないというのと、監督も初の長編映画ということで緊張していて最初は意志の疎通が上手くいかずに手惑いましたが、撮影が進んでゆくうちに、現場の雰囲気も掴めてきて意思疎通も出来るようになりました。撮影で感じたことは、韓国は本当にスタッフが熱い!(笑)でもいい映画を作ろうとういう意味では日本も韓国も同じかなと思います。あと韓国で映画撮影方法は日本からきているので、“バミリ”だとか、日本の言葉もあって、それほど違いは感じませんでした。他には、台本の変更が激しいなと思いました。(笑)」

—— イ・ソヨンさんとの共演はいかがでしたか。
「現場で会う前にたまたまドラマ『新入社員』を観ていて、恐い人なのかなと思っていたのですが、実際はさばさばしていい人でした。イ・ソヨンさんは、日本語を勉強したいと言ってたので、撮影の合間に日本語と韓国語をお互い教えあったりして楽しかったです。」

—— 撮影を終えてみて、ご自身で変化はありましたか。
「韓国で映画に出るという目標があったので、この作品を掴むことが出来て韓国でも活動できるという自信ができました。」

—— 釜山映画祭での上映後、観客に囲まれてましたね。
「上映後にすごいサイン攻めにあって、韓国でもいけるかなと思いました。(笑)『応援するので頑張ってください』など声をかけてもらいました。」

—— 韓国では8月15日(『光復節』と呼ばれ、36 年間に及ぶ日本の植民地支配からの解放を祝う記念日)に公開されたとか。
「最初はその予定だったのですが、劇場などの都合で2月に公開になってしまいました。だけどそれが功を奏してか、観に来てくれる人が多くて、上演期間が延長されていました。」

—— 韓国のドラマなどを見ていると、日本よりも、表情などの感情表現が豊かに思えますが、実際韓国のアクタースクールに通っていて、感じることはありますか。
「僕も最初は凄く違うのかなと思っていたのですが、内面から出るものを表現するというのは基本的に変わらないです。ドラマでは結構大げさに感情表現がされていますが、映画では自然な演技もありますし、ドラマ、映画、舞台など表現方法によって演技も変わってくると思いますが、基本的には変わらないと思います。」

—— 韓国に留学していて、日本の若者と違うなと感じることはありますか。
「図書館も席がないくらい勉強する人が多いと感じます。歴史についても、日本人と同じ年の子は答えられないのではと思うほど詳しい。勉強熱心な人達には、僕も頑張らなければと、いい刺激になっています。日本では何でも与えられすぎていて夢が分からなくなってしまっている人がいるように思いますが、韓国では男の子だと、2年間軍隊に行かなければいけなかったり、日本ほど色々と与えられすぎてはいないというのもあって、目的意識を持って行動している人が多いように思います。」

—— 『まぶしい一日』はオムニバス映画ですが、他の作品の出演者の方々と感想を言い合ったりはしたのでしょうか。
「皆ゆずりあって、いい作品だねと言い合っていましたが、絶対皆自分の作品が良いと思っていると思います。(笑)僕のはコメディータッチですが、他のは内容が深いものだったりと、3つとも話が全然違うので、それぞれ素晴らしい作品だと思います。」

—— 最後に、これからの活躍を楽しみにしているファンの人へメッセージを。
「今後もファンの人が思う以上の活動をしていきたいと思っていますので、期待してください!」

執筆者

t.suzuki

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