『亡国のイージス』『交渉人 真下正義』『日本沈没』『立喰師列伝』など特撮助監督としてキャリアを積み、念願のアクション映画に初挑戦した石井良和監督。

昔喫茶店でアルバイトをしていた時にお客さんと来ていた脚本家の柏原寛司氏との出会いがこの世界に入ったきっかけだという石井監督。初長編映画監督となった『クール・ディメンション』に対する思いや、これまで関わってきた作品について話をしてもらった。




Q.今回監督は脚本は書かれていませんが、ストーリーに関しては提案はあったのでしょうか。
「最初の方の脚本では、主人公達はあまり考えずに人を殺していました。でも、無差別に人を殺させるのは嫌だったので、心の中の葛藤を加えるようにしました。」

Q.アクション監督は谷垣さんでしたが、監督がアクションで拘った点は。
「『007』や『インディー・ジョーンズ』みたいにパパパーンとスピーディーにやりたくて。谷垣さんには、ロケハンに行った時にこういう風にやりたいと大まかに伝えました。それを元に谷垣さんがコンテに描いてくれて。現場では、谷垣さんに任せていましたが、僕がやりたかったことはうまく表現してくれました。」

Q.ラストが衝撃的なものでした。
「そうですね(笑)主人公が本来やりたくない殺しをやらざるを得ないということで、哀しいものが撮りたいなというのがありました。それで、あのラストを提案したところ、すんなり通ったのであのようになりました。」

Q.3人の女性が本格的なアクションに挑戦していますが、どのように演出したのでしょうか、事前に練習はしていたのでしょうか。
「彼女達には1ヶ月位前から、アクション訓練をしてもらってなんでもできるようにしてもらいました。演出に関しては、衣装合わせの時に数回一人一人と話をして。細かく演技指導などはせずに、本人に任せて演じてもらいました。」

Q.今までは『ゴジラ』など特撮ものの助監督をしておりますが、石井さんにとっての特撮の魅力とは何でしょうか。
「特撮の助監督というイメージがついてしまっていますが、実は、特撮は4本しか撮っていません。(笑)それまではTVドラマや『トラック野郎』の鈴木則文監督についたりと、特撮ではない普通の作品に関わっていましたが、あるアメリカのイベントで川北紘一監督と出会い、東宝に誘ってもらいました。その東宝で、ゴジラアクターが如何に大変だったかというエピソードの再現ドラマを撮ったところ、気に入って下さり、ゴジラCMのドラマ部分を撮影するようになりました。その後、再現ドラマを一緒に撮っていた人がゴジラの助監督をしていて、『ゴジラ ファイナルウォーズ』の助監督を頼まれて。でも、特撮は専門的にはやったことないし、スタッフが100人位もいるので一度は断ったのですが、「大丈夫大丈夫」と言われて。(笑)皆に教えて貰いながらなんとか出来上がりました。その次に『亡国のイージス』の特撮の神谷誠監督から話がきました。これも最初は特撮向いてないですよと断ったんですが、「ゴジラやったんだから出来るよ」と言われて。でも出来上がりは非常にいい感じになりました。その後に『交渉人 真下正義』を頼まれて。あれは一部フィルムではなく、デジカメで撮りました。コマ撮りして、それをレンダリングして。普通では撮れない面白いものができて、特撮というは実験だなと思いました。普通のドラマだと、役者さんのスケジュールに合わせて撮影していかなければなりませんが、特撮は皆でどうやったら爆発に見えるか、どうしたら砂埃が立つかなど、探りながら作ってゆける。そこが特撮の面白いところだと思います。」

Q. その後押井守監督の『立喰師列伝』にも関わっていますね。
「助監督をやりました。150人のキャストがいるところを6日間の撮影で。助監督が衣装もやって大変でした。映画で、そばに卵が落ちるシーンがありますが、あれは僕が撮りました。押井さんはロケに行かなかったので、牛丼屋の背景も撮りに行ったりもしました。(笑)」

Q. 東宝時代の人脈がいかされたんですね。
「樋口さんや神谷さんが出演してますが、偶然でした。樋口さんとは『ウルトラマンを作った男たち』の助監督をやっていた時に僕が本編をやっていて、意気投合しました。その後、樋口さんだけどんどん有名になっていってしまって。(笑)『立喰師列伝』には神谷さんも出演していて、その後の『日本沈没』に呼ばれました。川北さんの助監督が神谷さんだったりと色々な人と繋がっていますね。ちなみに、映画では僕も出演しています。ドラクエの王様の帽子を被って、ドラクエを買った人から奪うという役で。(笑)」

Q.それまでの経験が役立ったのでしょうか。
「そうですね、僕が助監督についた人達が協力してくれました。合成や、マット画も『日本沈没』のスタッフに手伝ってもらったり、樋口さん、神谷さんが出演していますし。クレジットに名前が出てない人にも多く助けてもらいました。」

Q.それらを踏まえて、今後やりたいことはありますか。
「『クール・ディメンション』とは180度違うような、特撮を使った変わったラブストーリーをやりたいですね。今まで特撮を4本やってきて、こうゆうのはこうすれば出来るというが分かってきたので、色々実験してみたいです。現代版『ALWAYS 三丁目の夕日』みたいな。はじめ、『ALWAYS 三丁目の夕日』を観た時は“やられた!”と思いました。(笑)」

Q.最後に『クール・ディメンション』を観る人に一言。
「スタッフ、キャストが一丸となって撮った作品なので、それを観て貰えればと思います」

執筆者

t.suzuki

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『クール・ディメンションズ』公式サイト

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