心に傷を持つ3人の男達:刑事、弁護士、殺し屋。彼らはかけがえのない愛を胸に秘め、己の心にある善と悪の間をさ迷いながら、それぞれの道を歩む。それは、本来なら交わる事のないはずの道だった…。
彼らの人生の<ディバージェンス(分岐点)>が10年の歳月を経て、ついに明かされる。

香港のトップスター3人、アーロン・クォック、イーキン・チェン、ダニエル・ウーが夢の共演を果たした『ディバージェンス-運命の交差点』。監督は『香港国際警察NEW POLICE STORY』などスタイリッシュな映像美で観客を魅了したベニー・チャン。そして恋愛映画の傑作『ラブソング』を生んだ脚本家アイヴィ・ホーが、男達の生き様をドラマチックに描く。
香港の才能が集結した豪華プロジェクトは、感動と驚きに満ちたサスペンス・アクションの傑作を誕生させた。
アジアだけでなくアメリカ、ヨーロッパでも公開され話題を呼び、そしてアジアの映画祭でも大注目。昨年の第18回東京国際映画祭では前売り券が発売開始とともに完売となった話題作が遂に、日本に再上陸となった。

家族を養う為に悪い男に仕え、冷静を装っているが矛盾を感じている弁護士トウを演じたのが、イーキン・チェン。久々の来日となったイーキンに今の思いを語ってもらった。



−− 今回は善と悪の2つの顔を持つ弁護士トウ。どんな点に苦労しましたか?
内面的な部分が多い役。感情をあまり顔に出さない人物なので色々考えました。
常に普段から人物観察を心掛け、こういう二面性を持つ犯罪関係の本も沢山読みました。
そして自分の経験も実は非常に参考になったんです。
私が住んでいるエリアはとても静かな所。でも大雨や霧の多い日になると何故か車が傷つけられる、という事件がよく起こったんです。そんなある日、ある一家が引越しをし、それ以来車の事件はなくなりました。後から分かったのですが、その一家の1人が犯人で、雨や霧が多いと精神的に不安定になり、そんな事件を起こしていたそうです。普段からよく知っている人だったのでビックリしました。

−− イーキンさん自身に二面性はありますか?
そうですね、誰でも二面性というのはあると思いますが、でも僕はトウのような二面性はないです(笑)普段はよく友人と食事をしたり話をしたりと、賑やかな時間を過ごしますが、実は静かな空間がとても好きなんです。1人でのんびり過ごしたり。これは二面性、かも知れないですね。

−− 脚本を読んだ時、映画への期待、不安などはありましたか?
ベニー・チャン監督とは以前も一緒に仕事をしているので安心していました。
脚本は自分の部分だけ読むようにしました。サスペンスですし、この後どうなるのか?気になってしまいますよね。だから他の人の所は読まないようにしたんです。
映画によりけりですが、映画の世界が美しく非現実的だと楽しいですよね。別の人格を演じられるのも、とても楽しい。でも今回は辛くて、暗い作品(笑)。“楽しむ”というのとは、ちょっと違ったかも。でも色々な役に恵まれとても幸せに思っています。今後は監督業もやるかもしません。

−− この作品のタイトルにもなっている『分岐点』。イーキンさんにとっての分岐点は?
最初は『風雲ストームライダーズ』の様にヒーローの役が多かったんですが、次第にコミカルな役が増えてきました。これは分岐点だったと思います。自分自身を変えたいと思っていたので、ヒーローではない役をやりたいと思ってました。今回の新しい役もそうですね。

−− 日本の印象、或いは何処かお気に入りのスポットなどありますか?
日本は何処も安全で清潔。美味しいものを食べる場所も沢山ありますね。
そして人々は自分の仕事をプロフェッショナルに徹底する所も素晴らしいと思います。
例えば蕎麦職人が蕎麦を茹でるのも真剣ですよね!
好きな場所は鎌倉、福岡、富士五湖の湖… 東京も好きだけれど、地方も魅力をとても感じます。
それと、日本は田舎に行っても自動販売機が必ずあるのが羨ましいですね!

常に新たな役に挑戦し続けるイーキン・チェン。だからこそ、20年以上もトップを走り続けていられるのだろう。そして相手の目をじっと見詰め真剣に話しをする姿に、誠実さ、映画に対する愛情が溢れるインタビューだった。と同時に、本人とは全く違うキャラクターを演じた彼に、役者としての素晴らしさを改めて痛感した。

執筆者

桜井裕子

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