合計コミック部数450万超のギャグ漫画を原作にした『魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE』(以下『クロ高』)。とても実写では表せそうにない原作を見事に映画化した本作は、とにかく笑えて、観た後はスカッとする青春学園コメディだ。正義感あふれる主人公・神山(須賀貴匡)は、人間離れした生徒ばかりのクロマティ高校に入学。新しくできた仲間たちとともになぜか地球防衛軍を結成し、クロ高最大のピンチに立ち向かう———。
 全編笑えるポイントが盛りだくさんで、例えば“リポ○タンD”のCMで活躍した渡辺裕之さんが入魂の役作り(日焼け、筋トレ、自前の衣装)をしてフレディを演じたり、メカ沢くんの声をあの武田真治がやっていたり…。原作のおなじみキャラクターが多数登場してストーリーを盛り上げるが、もちろん原作を知らない人にも彼らの面白さが伝わってくる。真面目な顔して思い切りバカをやっている神山たちにニヤニヤしながら物語を楽しめてしまうのだ。
 そしてなんとシュールなギャクを言わせたら右に出る者はいない板尾創路さんが、本作を手掛けた山口雄大監督(『地獄甲子園』)の誘いを受けて“構成”として参加。クロ高の世界を更に深めるアイデアを本作に盛り込んだ。最新コミックス「クロ高」13巻の表紙にもなっているのにまだ原作を(ちゃんと)読んでいなかったりする板尾さんだが、番長・竹之内のふりをしてクロ高に潜入する「マスク・ド・竹之内」の役で出演も。これもまたハマリ役で、観客の心をガチッとつかむ名演を見せている。

$green ★『魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE』は、2005年7月23日(土)よりシネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋ほかにてモーニング&レイトショー公開!$





——初めて完成品を見た時の感想を聞かせてください。
初号で完成版を見たんですけど、面白いシーンがいっぱい撮れてるなあというのが一番最初に見たときの感想ですね。これはいけるな、って手ごたえを感じました。

——出演だけでなく、構成としても関わっていらっしゃいますね。
 僕は最初原作を読んでなかったんです。今も読んでないんですけど。まあ、知らない方がいいと山口監督から言われて。なのであえて読んでないというのもあります。話をもらった時にはクロ高に思い入れがあまりなかったんで、やりにくいことはまったくなかったですね。「クロ高はこういうもんや」っていう観念がまったくなかったんで。むしろやりやすかったです。監督や脚本家がしっかりしてるんであとはそっちにまかせて。ただ、2回目の会議のときに僕以外全員風邪をひいていて、それはけっこう苦労しましたけどね。これはうつったらやばいなーって。結局うつりませんでしたけどね。

——お気に入りのシーンとかありますか?
 お気に入りですか。面白いところは沢山あるんですが、オープニングの学校の歴史を紹介するところが一番面白かったですね。あれには僕はあんまり関わってなくて、初めて観たときにああいう感じに編集されてたんで。中途半端な長さと微妙に歪んでる報道がおかしくて、声に出して笑ってしまいました。

——『怪奇大家族』(TV)や『手鼻三吉とトゥワイス志朗が往く』など、『穴』以来山口雄大監督とタッグを組むことが多いですよね。山口監督は“実写化不可能を可能にする監督”として知られていますが、現場ではどんな演出を?
 『地獄甲子園』もそうだと思うんですけど、山口監督は漫画は漫画、映画は映画という考えがはっきりしているから、(実写化が難しいといわれる作品を)うまく撮れるんじゃないですかね。漫画を実写にするから、忠実に再現しようとかじゃなくね。予算や時間がなかったりもあるんで、その場のノリで撮ることもあるんですけど。でもこういうふざけた映画やからこそ考えて撮ってる。主役の須賀くんとかと、かなり話をしてましたし。神山だけが濃いキャラの中で普通の生徒といえば生徒。だけど、一番の大ボケはやっぱり彼で。主役を見て観客は物語を追っていると思うんで、監督はそこらへんのキャラがブレないように演出していますよね。「神山もふざけたらええやん」とかではなく、でもノリで撮るときは撮ってる。そうやってきっちりポイントを押さえているのはすごいなと思いますね。

——大人気ギャグ漫画が原作ということで、板尾さん自身が苦労したことは?
 確かにちょっと原作が映画向きの構成ではないんで。映画にするときには2時間とか90分とかのストーリーとして、主人公やどの話が核になるかとか必要ですから。そこがうまくいけば大丈夫かなっていうのはあったんですけど。でも意外と原作にそういうのがなかったんで、こちらで芯になる話を作っていって。基本的に原作者の野中さんからは何をやってくれてもいいと。それだけでなく、映画化に興味がないということだったんで、全然漫画に出てるキャラクターを出さなくてもいいし、話もどうしてくれてもいし、好きにしてくれていいと言われてました。それはそれでやりにくい部分もあるんですけど(笑)。制約がある方が笑いが生まれやすいというのもあるんで。そういう面ではわりと自由にやらしてもらいましたね。原作が好きな人間も、僕みたいな知らない人間も(スタッフに)いたので、その組み合わせがよかったのかな。

——阿藤快さんが“阿藤快さん”役なのは板尾さんのアイデアとか。
そうなんですよね。原作にもある地球防衛軍っていうのが出てくるんですけど、その隊員がもう1人いるなってことになって。正義の味方というか、正義感があって、そういうのに参加してくれそうなのはどんな人やろうってことを皆で話し合ってる時に、「阿藤さんがええな」って僕の頭の中に浮かんで。阿藤さんの名前が出た時点で即決というか。迷うことなく決まっていきましたね。
(次のページへ続く)






——そのほか板尾さんが出した「メカクソシスト」「宇宙猿人ゴリ」のアイデアはどんな狙いから生まれたんですか?
 メカ沢のメカクソシストは、メカ沢の何か原作にないエピソードがあればいいなということからです。一番メカらしくないことがメカ沢におこったら面白いなと思って。当たり前にとり憑かれている状況になっているし、周りも当たり前のように演技してますから「どこで笑うねん」ていうことなんですけど、中には笑える所がいっぱいあって。コントでは誰かがつっこんだりして、そこでお客さんに情報として与えて笑うってことをするんですけど、あえてそういうのが一切ないんです。だからそこは違和感と想像力で笑ってもらうしかない。でもまあ機械なんでね。そやなあ。(面白いのは)首が回るとこかな。回って当たり前ですからね、ロボットなんやから。でも皆心配して、首が回ると怖がったりしてるんです。
 ゴリは、雑談に近い形でゴリラの話をしてたんですよ。ゴリラはもともとクロ高に出てきてますし。で、『猿の惑星』とか映画の話になって、すごいヒットして続編が作られたとか、ゴリラブームというか、猿ブームみたいなのが一時期日本にあったなーという話をしてて。「猿の軍団」とか。そこでヒーロー特撮で「宇宙猿人ゴリ」っていうのもあったなーと。地球防衛軍出てくるし、それやったら宇宙から何か攻めてくるやろなということになって、宇宙猿人ゴリとラーが攻めてくることにしたら面白いなとなったんです。

——濃厚なキャラクターばかりが登場するクロ高ですが、一番印象的だったのは?
 そうですね、主役の須賀くんはすごい。初めて会ったのは現場でだったんですけど、マンガからそのまま抜け出てきたみたいに神山にそっくりで。あー(神山にそっくりな)この子が須賀くんなんやと思ってたんです。でもその後何回か会ってみたら、似てたのは須賀くんがすごい努力していたというか、自分で神山に近づけていたんやなあと。今見たら全然違いますからね(笑)。神山に似ていたのも、(似ているから須賀くんを選んだわけじゃなくて)偶然だったし。それに役者さんは、神山のようなあの位置ってつらいと思うんですよね。皆すごいキャラで、楽しそうにやりたいことやって。でも須賀くんはわりと地道に取り組んでて、そこを最後までブレずにやっていました。そういうところで、役者としての須賀くんの力量というか、考え方とかがすごいなと思いましたね。

——ご自身のマスク・ド・竹之内の役はいかがでした?とてもいい味を出しているキャラクターでしたね。
 マスク・ド・竹之内は僕やっていうのは(周りのスタッフの中で)ほぼ決まっていたみたいです。バレバレなのにも関わらずそこにおる、というのは、僕の持っている雰囲気と似ているところがあるので。僕の持ってる変な自信みたいなものも出ていたような気がしますね。他のキャラクターでは、山口ノボルはちょっとやりたい雰囲気はあります。僕のキャラに合っているかどうかはわからないんですけど、ちょっと魅力はありますよね。

——板尾さんはこれまでにも映画出演をされていますが、今年は特に多数の出演作が公開されます。そんなひっぱりだこの状態をご自分ではどうお考えですか?
 ひっぱりだこの理由ですか。そんなひっぱりだこでもないですけどね(笑)。わりと話もらう作品は、気に入るものが多いというか。恵まれてるんかもしれないですけど。皆に言われるのは、異質なストーリーとか、ばかばかしい話の中に僕が入っていっても当たり前のように演じてくれると。変なりアクションをしたり、芝居しすぎたりしていないんで正当化できるってことですね。ストーリーが突拍子のないことでも滑らかに流れていくから、そこがいい所というか使いたい所と言われることが多いです。自分でもなんとなくわかるんですけどね。

——では最後に。今回構成として参加されてスタッフとしてもっと映画に関わりたいと思うことは? 例えば監督をやってみたいとか…。
 そうですねー。どうしてもこれを映画にしたいとか、思うんがあれば…。でも漠然と監督になりたいとはあんまり思ってないですね。作品ありきですね。これを映画にするんやったら、あれはこうでこうや!とかあったら自分でやったらいいとは思うんですけど。まあわかりません。やってしまう可能性はあると思いますけど。まあ、やりたいものがあればってことですね。

執筆者

yamamoto

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