「少林サッカー」そして「カンフーハッスル」ととてつもないアイデアで我々を打ちのめし熱狂させた香港コメディ。そのテイストをさらにじっくり時間をかけて味あわせてくれるテレビシリーズ『カンフーサッカー』が日本上陸するという。それに先駆けて、主演のディッキー・チョンと共演のレイン・リー、アンソン・リョンの若手ふたりが来日した。
 監督としての再起を決意した元天才サッカー・プレーヤーのチョンフー(アンソニー・ウォン)は、天才武術家・シウソン(ディッキー・チョン)をチームにスカウトするが、シウソンにはある持病が——そんな設定の下で果たしてどんなドラマが展開されるのか? 2006ワールドカップへ向けて盛り上がるサッカーという人気スポーツに、映画顔負けのVFX…そこにロマンスも加わって贅沢なドラマになっているようだ。
 来日インタビューは、4月上旬、桜も八分咲きの都内のホテル。桜色のジャケットで現れたスキンヘッドのディッキーは、小柄童顔ながらも多くのドラマで主役を務めてきただけに貫禄を漂わせる。わからないだろう日本語もなんとかダイレクトに聞き取ろうと耳を傾ける姿に感激。若手のよい見本であろうとしているようだった。

$blue ●「カンフーサッカー」は、5月27日、ユニバーサル・ピクチャーズからビデオリリース開始。
●映画専門チャンネル“ムービープラス”でも7月より全23話で放送開始!(スカイパーフェクTV!またはスカイパーフェクTV!110、全国のケーブルテレビ局で配信中)$





——とても楽しいドラマですね。出演が決まったときのお気持ちからお聞かせください。
ディッキー じゃあ、僕から。僕はずっとサッカーを題材にしたテレビドラマに出演したかったんだ。ちっぽけな理由だけれど、子供の頃、サッカー選手になりたくて、サッカー・チームに入ってゴールキーパーをやっていたんだ。だけど、見込みがないと監督に言われて、その夢は諦めて、その代わりにいつかテレビドラマでサッカーをする機会があったら、しっかりプレーしたいと思ってたんだ。
レイン 出演が決まって嬉しかったわ。多くの俳優、中でもとりわけディッキーさんと共演できることが嬉しかったの。私は、このドラマを撮影するまではサッカーについては何も知らなかったし、興味もなかったけど、今ではサッカーの試合を見るのが大好き。少し前にヨーロッパ・カップをやっていたけど、このドラマのお陰で楽しんで見ることができたわ。
アンソン このドラマの出演話をいただいて、とにかく興奮しました。これは、僕にとっての初めてのテレビドラマで、しかもディッキーさんと共演できるなんて、賞をもらったような気分でした。僕にとってディッキーさんは、テレビドラマに多く出演されていて、いろいろな役をこなしていて憧れの存在で、その彼と共演できて、とにかく嬉しかったです。
——先輩のディッキーさんとしては、若いふたりとの共演はいかがだったのでしょうか?
ディッキー 僕にも新人時代はあったよね。主役を張る前は出番が少なくてスタンバイしていなくてもいい時間があったから、先輩たちの仕事振りを見たり、カメラマンはどういうふうにカメラを回しているのかカメラの横で見て、機嫌の良さそうなときには質問して教えてもらおうとしたり。でも、なかなか質問できないときもあった。怖いからっていうのではなくて、迷惑をかけないようにという気持ちもあったから。自分が先輩になっても新人の気持ちがよくわかるんだ。だから、一緒に仕事をしていてやりにくくないように多少なりとも自分で考えてもっていくようにしてるよ。
——おふたりは、何か現場でディッキーさんから演技指導を受けられたとか、そういうことはあったんですか?
レイン 教えてくれたっけ?(笑) いろいろ教えていただきました。特にセリフ面。どうしても台本を読んでしまいがちなんですけど、文章をそのまま読むのではなくて、もっと自分の言葉にして話し言葉に変えて話せばいいんだよと。それから、どの角度から見た私が綺麗かとか。太って見えない角度とかね。私、ディッキーさんはセリフがすごく上手だと思っていて、だから、セリフについておしえてもらったことが特に多かったと思うわ。
——アンソンさんはいかがですか?
アンソン 最初の撮影のとき、僕はまったくセリフが言えなかったんです、緊張してしまって。ディッキーさんが目の前にいる、ディッキーさんと一緒に撮影しているんだということで舞い上がってしまって。でも、ディッキーさんはそんな僕に文句を言わないで「大丈夫だよ。リラックスして。ゆっくりやればいいから」と指導してくれましたし、仕事が終わってからも、いろいろ世間話をしたり一緒に遊びに行ったり、すごく雰囲気作りを重視してくれたんです。ですから、すぐに仲良くなれました。二回目の撮影からは多少なりともリラックスして臨むことができたと思います。




——ディッキーさんの役柄はとてもユニークで、それだけでも私たちを笑わせてくれる部分があると思うのですが、こういう役柄を演じるコツは?
ディッキー そうだなぁ、中国・台湾・香港・シンガポール・マレーシア、そして日本でも僕のドラマを見ることができるようになったけど、いずれもコメディだったと思う。観客は、僕のことをコメディアンだと思っているかもしれないね。僕も、いわゆる主役をやるようになる前は、実際、コメディをこなすということがよくわからなかったんだ。主役をやるようになるまで、約8年の時間をかけていろいろな役をやってみた。そして、ある意味でやっとコメディという表現の手法を身につけたわけだよ。僕は思うんだけど、コメディを上手に演じるには、まず、悲劇、あるいは普通のドラマをいかにちゃんとやれるかってことがもっとも大事なんだ。つまり、喜劇をこなせるためには、まずこういう基本をしっかりクリアしないとなかなかうまくやれない。僕の経験だよ。
 今回の「カンフーサッカー」でもっとも難しかったのは、お金持ちや貧乏人、車椅子生活の人、あるいはひじょうに知能の低い人の役をやるのだったら、探せばモデルになるような人物がいるだろうし、リサーチもやりやすい。ところが、今回の役はなかなかモデルになる人がいなくてね。それが役作りに関してはいちばん難しかった。
——最後の質問です。皆さん、このドラマでの自分の見所をひとつずつお願いします。
ディッキー もちろんサッカー。つまりサッカー+アニメ+クンフーってところだよ。
レイン 私は、やはり恋愛の部分だわ。私とアンソンが恋人役なの。ちょうどあの頃はSARSが流行っていて、お互いにSARSにかかってないかと疑ったり、実際かかっていないとわかるんですけど、そういうシーンもあるのよ。
アンソン 僕の役どころとして一番見てもらいたいのは、レインとの恋のほかに、兄弟で協力して武術を使ってシュートを決める、そういう部分です。
——どうもありがとうございました。

執筆者

稲見公仁子

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