「2番目でいいから、つきあって…」こんなこと、可愛い女の子に言われたらどうします?
未だ芽の出ない小説家志望の“彼”、非の打ちどころのないステキな“彼女”、突然現れたクールな関係を望む気まぐれな年下の“2番目の彼女”。そしてこの3人を取り巻く多種多様な“世界”と“人々”。北村有起哉(彼)、岡元夕紀子(彼女)、前田綾花(2番目の彼女)、MCU(彼の親友の売れっ子脚本家)を主要キャストに迎え、インディーズムービーとしては異例の36人という豪華な顔ぶれで贈る、恋愛のずるさも甘さも見せてくれる新感覚ムービー『2番目の彼女』。
 メガホンをとったのは、今、最も活躍している脚本家と言える大森美香監督。絶妙な台詞使い、細やかな気持ちの描写、シリアスもコミカルも織り交ぜた幅のある脚本で高い評価を受け、さらに演出、映画と次々に新たな才能を発揮している。忙しい仕事の合間を縫って実質8日間で製作したという最新作について、お話をうかがうことが出来た。「私、本当に人に恵まれているんですよ」と謙虚な言葉が聞かれたが、間違いなく彼女自身が優れた人を惹きつけるパワーをもっているのだろうと感じる。「今までで一番自分らしい作品になったと思います」「恋愛を描くのは楽しいですね」と言いながら見せる柔らかい笑顔が、とても印象的だった。

$red ●11月27日より渋谷シネ・ラ・セットほかにて全国順次公開






—まず、キャスティングについてお伺いしたいのですが。
「かなり希望通りになりました。主演から決めていったんですけれど、協力して頂いたヘブンプロジェクトの方々にこんなお話なんですというのをお見せしたら、何人か候補を上げて下さって。で、私が「北村有起哉さんがいい!」と。うまい具合に、ご出演頂くことが出来ました。」
—メインの北村さん(草野役)、前田さん(ゆきの役)、岡本さん(ゆきこ役)、MCUさん(有栖川役)、皆さんとてもハマリ役ですよね。演技指導はどのように?
「あまり詳しい指導というものは無かったです。実はキャスティングの段階では、あらすじ程度しか脚本が出来ていなかったんですよ。決まった後で「この人にはこういうような事をやってもらいたい」と考えながら具体的にしていったので、ちょっとあてがきのようになりました。」
—ゆきこ(岡元さん)のキレ方が面白かったです。
「そうですね(笑)。こういった感じの役は初めてと岡元さんも仰ってました。「ゆきこは理想が高くて『アメリカン・ビューティー』の奥さんみたいで、「私は大丈夫!平気!」と言いながらも本当はストレスをためていく性格なんです」と少し説明しただけで、ほんとにすんなり理解して頂けました。
 北村さんとは撮影の合間の休日にお会いして、色々話し合ったりしましたよ。前田さんは「うん、ゆきのちゃんの気持ちはよーく分かる。まるで私!」と納得して下さってたし、MCUさんはやっぱりセリフ覚えやリズム感がすごく良くて、例えば「もう少しテンション高く」といった抽象的な事もすぐ捉えて下さって、演技的瞬発力のある方だと感じました。皆さんそれぞれに役作りをしてきて下さった感じです。恵まれてます〜。」
—草野の愚痴や焦りの台詞は、大森監督がこれまで脚本家として感じてきた事が表されているのですか?
(うんうんと頷きながら)「そうですね。草野の脚本家としての愚痴、男としての愚痴があるんですが、前者はほとんど一緒ですね。自分の愚痴、業界裏話も含まれてます。」
—男の人を主役にしたのはなぜでしょう?
「個人的に書いている小説も、前から男の人が主人公のものが多いんです。企画があがった頃は、ドラマで女の子を書いてばかりだったので、その反動かもしれませんね。」
—劇中劇が3つありますね。
「せっかく自主映画が撮れるということなので、自分が普段やらないようなことをやってみたかったんです。最初に浮かんだのは、水橋さんに出演して頂いてるものです。ダンスのシーンの撮影は楽しかったですねえ。水橋さんがとても恥ずかしそうにしてました。「今まで演技をしてきて、今回初めて恥ずかしいと思った」と(笑)。」
—“女の子の唇”には何か特別な思いが?
「私は女の子の唇がすきなんです(笑)。プクプクしていて柔らかそうで、かわいい。たぶん、男性の監督の中に女性の心があるように、私にも男性の心があるんでしょうね。」
—包むような淡い光が全体的にありましたが、あれは何を意図しているのですか?
「この映画は、言ってしまえば殺伐とした話、本音を言い合っているような話なんですが、そういったものを少しファンタジックに描きたかったというのがあります。男女の殺伐とした話自体は、そんなに残酷なのではなくて楽しいことなんじゃないの?と。光もアニメーションもそうで、どこか温かいものにしたかったんです。」
—言葉遣いが、今時の崩れた感じではなく難しいというか深い感じで、少しお芝居のような印象を受けましたが。
「はい、意識して書きました。特に主人公に関しては小説家志望の男の子ということで、自分の言葉にすごくこだわりがあって、自分が言ったことを自分でまた考えるというような一人推敲型にしました。MCUさんは、ここで何を言ったらカッコイイかということを考えている役なので、オーバーアクションも加わってよりお芝居っぽい感じになったと思います。」
—観た方にはどんなことを感じて欲しいと思いますか?
「色々あるでしょうけれど、今している恋愛のこととか、恋愛してみたいなとか、自分の恋愛観をちょっと振り返ってみてもらうきっかけになったらと思います。
あと、映画がすきという人たちで集れば、突然でも短い期間でも、映画って作れるんだと思ってもらいたいです。草野にも言わせているんですが、特に自主映画、日本映画にはバイオレンス・セックス・銃・ドラッグ・精神世界みたいな話が多い中で、そういうものがなくても人間と人間がいればドラマはありますよね?こうしたものもあっていいんじゃないですか?ということを言いたかったのかもしれませんね。そういった意味で、映画界の中でもちょっと変わった作品になればいいなと思います。」
—今後はどんなものを作っていきたいとお考えですか?
「実は色々やってみたいことが多くて。スポ根もやってみたいですし、学園ドラマもやってみたい。欲張りなんです(笑)。この映画もいっぱい詰まってますから、その欲張りさが出てるんですよね。まだこれからです。そのいいきっかけになった作品だなと思いますし、今までで一番自分らしい作品になったと思います。」

執筆者

村松美和

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