シネマコリア2004における上映作品中、唯一の女優が主演する作品『春の日のクマは好きですか?』。その主演を演じるのは日本でも、『ほえる犬はかまない』、『子猫をお願い』と、立て続けに主演作品が公開され、愛らしいキャラクターで注目を浴びている女優ペ・ドゥナ。この後も『チューブ』など大作が控える人気急上昇中の彼女が、スーパーの店員をしている等身大の女の子の乙女心の揺れを、のびやかに演じている。作品は、各ストーリーをナンバリングして小タイトルをつける凝った手法に加え、ピリリとひねりの効いた展開に、だれもが共感するうら若きあの時代の恋心をさわやかに描き、「これはまた素敵な韓国映画・デビュー監督を見つけてしまった!」と、来日中の監督に会いに行ったーーー







 今回の上映に当り来日中のヨン・イ監督は、CM業界から映画監督の道に進んだという、韓国では珍しい経歴の持ち主であった。そんなわけで、インタビューは映画業界へと転身を果たした経緯から始まった。

Q:もともとはCMを作っていたのだと聞きましたが。
ヨン監督:「美術が好きだったので高校では美術科を専攻しました。大学で映像デザイン科へ進み、CMプロダクションに入りました。26歳でCMディレクターとしてデビューし、ミュージックビデオを撮り、そのうち映画の予告編も製作するようになってから映画会社とお付き合いが始まったんです。」

Q:主演のペ・ドゥナはいまや韓国でも人気・実力ともに充実していますね。
ヨン監督「彼女が持つ、中性的でボーイッシュという固定的なイメージを壊して、女性らしいフェミニンなキャラクターを演じて欲しかった。何度も食事をしたり打ち合わせをしてりして、彼女にあった役柄というものを作り上げて行ったんだ。『アメリ』や『ブリジットジョーンズの日記』なんかも参考にして、いろいろ足し合わせていったよ。」

Q:相手役ドンハを演じるキム・ナムジンはまだ日本ではあまり紹介される機会のない役者さんですね。
ヨン監督「彼はモデルとして活躍しているんだ。彼の演技はまだ未熟だけどカメラの前に立ったときのフィーリングがとてもよかったんだ。私自身が悩み多き青年だったので、20歳の頃から5回失恋しているんだ。相手役ドンハの70%が自身の実体験だよ。自分がやったことのあるエピソードもたくさん入っている。恋愛については一言あるんだ。」

Q:ペ・ドゥナ主演作品を並べてみると、『ほえる犬はかまない』、『子猫をお願い』そして『春の日のクマは好きですか』、とタイトルに動物の名が・・。
気になってたずねてみると、「今回描きたかったのは”ダサい女の子”が成長していく姿。韓国語でのろいとかださいとかいう意味を持つ単語、「コンテイン」は同時にクマをあらわす言葉でもあるんだ。」

 プライベートではサッカーやゲーム、スイミングを楽しむ一方で、日本のマンガも大好きだというヨン・イ監督。そのキュートな笑顔は予告編監督だけにはもったいないということで、『オールドボーイ』ではなんと俳優として出演もしてしまったという。

 CM〜映画の垣根を意外なほど自然と飛び越えてきた軽やかさが印象的だ。実際に、ヨン・イ監督が予告編を撮った韓国映画『オールドボーイ』の企画担当者が『春の日のクマ・・』のプロデューサーをしているのだとか。

最後に、軽やかにマルチな才能を開花させていくヨン・イ監督の次回作の予定を聞くと、「2,3年後だね。映画を作ることは子供を産むことのように苦しいことだから年子はちょっとムリなんだ。」と、あくまでCM、映画などといったジャンルにとらわれず活動していくなんともマイペースなプランを教えてくれた。『春クマ』ファンとしては、次回作のアナウンスがとても待ち遠しく思えて仕方がないのだった。

執筆者

YUKO OZAWA

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公式サイト:シネマコリア2004

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