高校を卒業しそれぞれの道に進んだ仲良し5人組少女たち。二十歳になった彼女たちがぶつかる現実と夢、バラバラにはなれてゆく心をみずみずしく描いたチョン・ジェウンの長編初監督作『子猫をお願い』。韓国での公開時には、その年の「女性観客が選んだ今年最高の韓国映画」にも選ばれた。観客からの圧倒的な支持によって、再上映を求める声が広がりついにはアンコール公開が実現したという。また、韓国内だけでなく各国の映画祭でも監督、俳優たちともに高い評価を得ている。
 ぺちゃくちゃとやむことのないおしゃべりに包まれ、幸福にはしゃぎまわっていた少女たちが卒業後出会う現実、そしてお互いが疎遠になり変わってゆくことのせつなさ。彼女達のなかでも、自分自身の迷いと不安を抱えつつも、なんとかお互いを理解しようと皆の中心になってストーリーをひっぱってゆくテヒを演じたぺ・ドゥナの好演は多くの映画祭で主演女優賞を受賞した。昨年日本でも公開された『ほえる犬は噛まない』が記憶に新しい彼女。すでに本国では多くの作品からオファーが絶えない人気女優であり、最も注目すべき女優の一人でもある。彼女にこの作品について聞いてみた。





−−−色んな作品からオファーがあるなか、この作品を選んだ理由は?
「チョン・ジェウン監督は今回が長編初めてなんですが、以前彼女の「図形日記」と「二人の夜」を観たんです。それがすっごくよくて、もう惚れこんでしまったんです。この作品は商業性のある映画っていうわけではありませんが、この監督ならっていう思いで出演を決めました。韓国のDVDには監督のこの短編も収録されていますよ。特にすごく刺激的だとかオーバーショットだというようなものはありませんが、抑えたなかにすごくいいイメージが込められていてすごくいい作品です。」

−−−この作品では多くの賞を受賞しましたね。
「この作品はどの映画祭に行ってもすごく高く評価してもらいました。私としてはすごく自信をもっている作品だし、色んな賞を私にもたらしてくれました。だから作品への愛情はすごく強いです。今まで8本の映画に出演してきましたが、この作品と『ほえる犬は噛まない』(ポン・ジュノ監督)と「復讐者に憐れみを」(パク・チャヌク監督)の3本は特に好きな作品ですね。好きなタイプの映画ってこともあるけど現場の雰囲気もよくて、満足できた現場でした。」

−−−役作りについて監督からはどんな風に指示されていたんですか?
「すごく細かく分析して役作りをしたわけじゃないんです。テヒの感情の流れなど監督と打ち合わせをしましたけど、それ以外には特に指示がなかったんです。ある程度俳優に任せてくれる監督なんです。できるだけ自然な姿で演じようと思っていましたね。」

−−−歳の近い女優さんたち5人との共演はすごく楽しそうな現場ですよね。
「現場は修羅場でしたよ。賑やかでした。監督も女性ですし、スタッフも女性が多かったんですよ。だからぺちゃくちゃおしゃべりしているみたいな現場で楽しかったです。この映画の冒頭シーンなんて演技とは思えないくらい私たちただ遊んでいるみたいでしたよ。この映画で思ったのは、キャストやスタッフみんなが信頼しあっていれば、相乗効果でいい映画がつくれるんだな、ってことです。」

−−−映画のなかでは仲良し5人がどんどん疎遠になっていくのに対し、実際は共演者たちとはどんどん親しくなっていっていたってことですよね。
「彼女達は高校時代親しかったからこそ、社会に出てからのお互いの関係が変化していくことへの葛藤が大きかったんだと思います。そういう経験は誰にもあると思います。私も高校時代すごく仲の良かった相棒みたいな子がいて同じ経験をしています。だからすごく実感できたので演じやすかったです。」

執筆者

綿野かおり

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