「題して、治験体験ムービー!!核となるのは青春群像もの。そこにホラー、サイコサスペンス、コメディの要素が盛り込まれています」(葉山監督)。自主映画の資金集めのため、新薬投与実験のアルバイトに参加した若者。病院という閉ざされた空間の中で彼らが目にしたものは…。監督自身の実体験をベースにした「サル」は葉山陽一郎監督の第1回劇場長編にあたる。出演陣もまたフレッシュな顔触れだ。主人公で生意気な監督志望の青年役に水橋研ニ、治験のアルバイトを紹介する俳優役に鳥羽潤、彼らと同年代なのにやたらと老けてみえる助監督役に大森南朋。撮影は合宿形式で行われ、本当に治験をやっているようだったという。ちなみに出演者3人は「どんなにお金に困っても」、「治験のアルバイトはやりたくない」そうだ。果たして、劇中で何が起こったのか!?

※「サル」はテアトル新宿にて12月6日よりレイトショー公開中!!











——第1回監督作で治験をテーマにしたのはなぜ?
葉山陽一郎監督 死体洗いや人体実験のアルバイトって噂として囁かれているけれど実際に体験した人って案外少ないですよね。どういうことが行われているのかよくわからない。そういう好奇心って映画の企画として成立するんじゃないかなと思ったのがひとつ。それに劇中に映画製作やったり、バンドやったりしてる青年たちが仲良くなりますけど治験の最中ってやることないから知らない人間同士、コミュニケーションを図ろうとするわけですよ。閉じ込められた中でのコミュニケーションをテーマにするのは面白いんじゃないかってずいぶん前から思ってましたね。

 ——フレッシュな若手が揃っていますが、キャスティングのポイントは?
葉山監督 出演作を見て「いいな」と思っていた俳優さんばかりです。現場でも集中力がすごくて天才揃いだったと思います。

 ——役者さんに。監督の印象はどうでしたか?
大森 気合入ってる監督だなと思いましたよ、それも初日から(笑)。

水橋 現場ではこれどこまでは監督の話なんだろうってよく話してましたね。
ほんとに狂ったのかなとか(笑)。でも、聞きづらいし、とかね。

 ——演じる上で難しかったことは?
鳥羽 どうおかしくなっていくかってことですかね。別に病気で変になるわけではなくて、いつの間にか狂わされていく。あまり過剰にやると嘘っぽくなりますし、その段階が難しかったですね。

 ——密室劇に近いものがありますね。現場の雰囲気はどうだったんでしょう。
水橋研ニ あの場所の印象はすごく残ってますねぇ。撮影中はずっと1週間かな、10日かな、なんだかすごく長く感じたんですけどずっと閉じこもって撮影してたんですよ。

鳥羽潤 朝起きたら病院服に着替えて、ほとんど建物の中にいて、そんな感じでしたから本当に治験をやってるみたいでした。あの建物って門限が10時だったんですよ。撮影中、一度だけ外に出たんですけどその時も門限が気になってしまって…。

大森南朋 周りになんもなくてね、飯も20分くらい歩かないと食べるところなかった。合宿してるみたいな撮影だったので楽しかったですけどね。

葉山監督 治験の建物は藤沢にある企業のセミナーハウスを使ったんですが周囲は普通の住宅街だったんですよ。

 ——本作はどこまで監督の実体験なのでしょうか。サル体験はフィクションとしても脱走して飲みに行くエピソードは実話ですか?
葉山監督 酒を飲みに行ったのは僕ではなくて友人の話です。僕自身の体験は前半の投薬までの流れの部分ですね。劇中の副作用はフィクションですが、風邪薬を投薬され、肝臓の値が高くなって途中で退院させられたことはあります。

 ——自主映画製作にまつわるキツイエピソードも盛り込まれてますが、これも監督の経験ですか?
葉山監督 というより、青春群像ものを描きたいというのがありましたからね。友達の裏切りは青春の終わりに来る普遍的な体験ともいえます。そんなに嫌なラストにはなってないと思いますけれど。どちらにせよ、……水橋くんはああいうシーンが妙にハマるんですよ(笑)。思った以上の絵が撮れましたね。

 ——最後に役者さんたちにお聞きします。もし、自主映画を作りたい貧乏学生だったとしたら…治験のアルバイトをやってみますか?

水橋 治験は怖いですね(笑)。地道に土方とかして頑張ります。

鳥羽 やらないと思います、多分。ものすごく困ってたらわかんないですけどそれでもやらない…でしょうかね。どっちなんだって感じですけど後半の副作用を考えると…やらないですね、やっぱり。

大森 僕もやらないですね。あんまり金なかったらわかんないけど…(笑)。

執筆者

寺島万里子

関連記事&リンク

作品紹介