逃れようのない死の法則を回避するため運命を読む生存者たちと、そんな彼らに追いすがる凄惨な死…。怪奇趣味と今風スラッシャー描写の融合が新鮮な魅力を与えてくれた『ファイナル・デステネーション』から3年。その死の描写はさらに磨きがかかり、同時にブラックなユーモアをも感じさせる第2章『デッドコースター』のロードショー公開がいよいよスタートする。前作では飛行機事故から始まった死と人間のチェイスだが、今回の幕開けとなるのは白昼のフリーウェイ。壮絶な多重衝突から辛くも逃れた主人公たちだったが、勿論死の法則は彼らを見逃したわけではなかった。
 今回続編のメガフォンをとったのは、多くの大作・話題作でセカンド・ユニット監督等で参加し、切れ味の鋭いアクション面で作品を成功に導いてきたデビッド・リチャード・エリス。現在公開中の『マトリックス リローデッド』でも、クライマックスのハイウェイ・チェイス等で腕をふるってみせてくれたが、そちらとも一味違う本作のカークラッシュ場面は、徹底した迫力と生の迫真感が必見だし、その他の死を巡るシークエンスにしても焦らしとすかしのテクニックもなかなかのもの。先頃開催された東京ファンタ大同窓会での先行上映でも、生粋のファンタ・ファンから高い支持を集めたのは納得なのだ。
 5月下旬、本作のキャンペーンのためエリス監督が初来日を果たした。インタビュー会場に現れたエリス監督の落ち着いた物腰は、映画界での長いキャリアをうかがわせる。好奇心溢れる悪戯っぽい瞳を輝かせつつ、熱く語ってくれた内容をここにお届けする。

$navy ☆『デッドコースター』は、2003年7月5日より全国松竹・東急系にてロードショー公開!$





Q.スタントやセカンドユニット監督等として多彩な経歴をつまれてきましたが、今回この作品を監督することになった経緯は?また影響を受けた映画人は?
——今回の撮影に入る前に、『マトリックス リローデッド』のセカンドユニット監督をつとめたことで、ニューラインから関心を持たれたのだと思うけど、その時点で自分が単にアクションだけを撮れるのではなく、ストーリーを巧く表現でき、またホラーの中にユーモアを盛り込むことができるということを説得しなくてはならなかったんだ。アクションに関しては、スタントやセカンドユニットの経歴から自分もスタジオ側も理解してくれていたと思っているよ。
影響を受けた監督は、これまで自分が関わってきた全ての監督…フィリップ・ノイス、ウォルフガング・ペーターゼン、クリス・コロンバス、ウォシャウスキー兄弟らから少しづつ影響を受けていると思うね。

Q.ホラー映画の続編ですが、脚本等で今回特に惹かれた点及び前作と意図的に変えようとした点、踏襲しようとした点などはいかがですか?
——まずこの作品はホラー映画でありながら、通常のホラー映画とは異なる死へのコンセプトを持っているということだね。死が訪れるというより、追いかけてくるという部分に惹かれたんだ。前作から活かした所は、最初に大きな事故があり、そこから死が生存者にむけて迫ってくるという構成で、前作の空港を今回はハイウェイにしたんだ。逆に敢えて変えた部分としては、1作目では登場人物が皆互いに知っているティーンエイジャーだったのを、今回は敢えて国籍・年齢・バックグラウンドの異なる人物たちが、事故をきっかけに死の恐怖から互いに助け合い行動するようにしたんだ。

Q.ヒロインのキャスティングで気を使われた点は?
——私は今回脚本がほぼ固まり、どう発展させていくかという段階からプロジェクトに参加したので、キャスティングに関してもオーディションから立ち会ったんだ。潤沢な予算があったわけではないので、キンバリー役に大女優を抜擢するわけにはいかなかったが、若くこの役に相応しい女優ということで約300人をオーディションし、その中から選んだわけだけど、私が求めたのはどのシーンでも強さと共に女性らしい驚きと恐怖感を表現でき、最終的には生存者達を纏めてどうにかして死神から逃れようとする意思の強さを持った女性なんだ。その点では、A・J・クックはピッタリだったと思うよ。






Q.アクション畑出身ということですが、なかでも今回特に拘られたアクション場面、気に入られている場面は?
——最も気に入っているのは、ホラー映画といわれるジャンルの作品にあって、オープニングでアクションとしてのフリーウェイでの大事故があり、そこで登場人物が全員死んでしまうわけだよね。これは他の作品には決して無い物だという点でも気に入っているが、それぞれの登場人物の様々な死に様も気に入ってるね。

Q.高速道路の事故場面は夢と現実で二度別のパターンで起きたりして『マトリックス リローデッド』よりある意味すごかったと思いましたが、実際撮影で何台くらいの車を破壊させましたか。
——『デッドコースター』ではメインでクラッシュする車が8台で、バックで走る車も併せるとクラッシュ場面で使った車は40台くらいですね。因みに『マトリックス〜』の方では約200台くらいだった。

Q.ご自身はこれまでのスタント経験等で、実際に危険な目にあわれたことはありますか?
——スタントマンとしてはどれも一歩間違えれば死に直面するような情況を経験してきたけど、実際撮影は安全に行われてきたので命の危険を感じたことはない。だけど、飛行機に乗っていてあまりに悪天候で落ちるかな…と不安に感じたことは二度あるね。若い頃はそんなことはなかったけれど、年を重ね家族が出来たからかな。

Q.邦題は『デッドコースター』に変わっていますが、どう思われますか?
——私自身とてもいい題だと思っているよ。アメリカでは、前作がヒットしたこともあり続編に拘り『2』となったんだけど、個人的には内容・カラー等も変わっているし、全く違う名前の方がいいと思ってたんだ。だけど、スタジオがなかなかうんと言ってくれなくてね。一応「死へのハイウェイ」という仮題も考慮されてはいたんだけれど、それと似たニュアンスでジェットコースターにしたのはいいことだと思うよ。






Q.犠牲者の死に方は、超自然的な死に様が高かった前作に比べ、自然な死に様が多くなったようですが、意識されたのですか?また監督が特に気に入っている死に様は?
——『ファイナルデスティネーション』は全体的に雰囲気が暗めで、夜間シーンも多く、ホラー映画らしい場面が多かったが、『デッドコースター』に関しては、夜間シーンを無くし、1作目とは異なるカラーを出し、日常的に感情移入し易く何気ないことが死を招くという風にしたかったんだ。死に様で気に入っている部分というと、やはりフリーウェイでの大事故、ローリーの体が柵の破片で3つに裂かれるところ、そしてバーベキューでの爆死だね。あれは笑いがある死という点で、とても気に入っているよ。

Q.前作に比べユーモラスなシーンも志向されてますが、ホラーと笑いの接点をどのように考えられましたか?
——シーンにもよるわけだけど、基本的には死に向かってテンションが高まっていくところで、死と死の間でふと息をぬけるような場面でユーモアを入れていこうと思ったんだ。ずーっとハイテンションが続くのではなく、ちょっとしたブレイクとしてね。

Q.逃れられない死という運命について、監督はどのように思えわれますか?
——死に対しての強い恐怖感はあるよ。特に自分の生活を楽しんでいる者、満ち足りた者は死に対する恐怖感が大きいのではないかと思うね。自分も年を重ね死に近づいているという点では恐怖感は高くなってきたと言えるとは思うけど、かと言ってノイローゼになりそうなわけじゃないがね(笑)。

Q.1作目でも出ていたトニー・トッド演じる葬儀屋は、死神なんですか?また、今回もラストで二人が生き残りますが、続編を考えられているのでしょうか?
——実を言うと、僕らも彼が何者なのかはよく判らないんだ(笑)。彼の死に対する言動を、1作目の時から気に入っている観客が多かったので、それならもう一度ご登場願おうってことでね。彼の場面は撮影も1日だけだったけど、台詞とかが予定より長くなってね。自分としては、もう5分も人が死んでないんだから、早く切り上げようぜって気分だったんだけどね(笑)。
そうおっしゃるとおり、この作品が当ったら続編をということで、二人の登場人物を残したんだよ。お陰さまでこの作品は、アメリカ本国でも興行成績がよかったので、ニューラインは間違いなく題3弾を作ることを考えているだろうし、実際脚本に着手したところらしい。私はニューラインと2作品の監督契約を結んでいるのだが、むしろ自分としては新しい監督によって新たな物語が生まれることの方が面白そうに感じるので、プロデュースはするかもしれないけど、次の監督ということはあまり考えてはいないんだ。実際アメリカでの観客の反応を見てみると、1作目と2作目の繋がりという部分を重要視している観客はそれ程多くなく、どれだけ死が多くあるかに関心があるようだよ。

(2003年5月22日ギャガ・コミュニケーションズ本社にて)

執筆者

殿井君人

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