「『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』じゃなくて『デビッド・ベッカム』だったらもっと良かったかな(笑)」。ベッカムの移籍がスポーツ紙を賑わした6月半ば、アラン・パーカーが新作「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」を携えて来日した。ケビン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット主演の本作は死刑囚と事件の真相を探るジャーナリストの物語。ああ、冤罪の話か、と思いきやここでは書けないどんでん返しが待っている。アラン・パーカー監督は「こういう政治的な作品はハリウッドでは作りにくい。何故、本作が撮れたのかというと社会派であると同時にエキサイティングなスリラー作品だったからだ」と言う。新宿パークハイアットで行われたプレスミーティングをレポートする。

※「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」は7月下旬、日比谷シャンテシネほかロードショー!!






「ケビン・スペイシーはハリウッドでは特殊な俳優だね。ハリウッドスターというのは自分がスクリーンでいかに美しく見えるか非常に気にするものだ。だけど、彼はそうじゃない。欠点を含めてその役を演じることに興味を持つ。本当の意味で役者なんだ」(アラン・パーカー)。今回、スペイシーが演じたのは死刑廃止論者の大学教授デビッド・ゲイル。そんな人物が人を殺し、死刑囚となってしまう。本作は死刑執行3日前、ゲイルが女性ジャーナリストに真実を語り始める場面から始まるのだ。原作を読んだとき、「すぐにページをめくりたくなるようなストーリーだった」というアラン・パーカー。映画も原作に準じた展開となっている。
 内容が内容だけに会場からは死刑制度への質問もあがった。「もちろん、私は反対だ。道徳的な観点からみてもそうだし、犯罪の抑止効果になるとは思えない。復讐のために2つの墓を掘るようなことはあってはならないと思う」(アラン・パーカー)。しかし、個人的には別の疑問も湧く。死刑はダメだが、○○(劇場で確認のこと)するのはいいのか?という問答が起きかねないラストなのだ。一級のエンターティメントであるのは認めるが、かなり危険な話でもある。製作への横槍が生じそうなものだが…。それを監督に問うと「それは非常に重要な点だったと思う。運動のために○○までする人物というのは、どんなものなのか、ケビンともよく話し合ったよ。ただ、ハリウッドのスタジオに関しては…そんなことを言う人は誰もいなかった。彼らが気にするのは監督が誰で、キャストが誰で、脚本はどうなのか、その3つだけだからね(笑)」。それから、アラン・パーカーはこうも言った。「より多くの人がその映画を観て議論したり、考えたりすること。それが映画監督に課せられた責任だと思う。映画を観るためにお金を使わせるのだから、その責任はあると思う。この映画が論議を起こすことを私は期待するよ」。
 

執筆者

寺島万里子

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