ゆうばりファンタ正式招待作品として、プレミア上映された『MOON CHILD』。アジアの一角に位置する近未来の混沌とした街・マレッパを舞台に、5人の若者たちが運命に翻弄されながら生きていく姿を描いたものだ。若々しいキャスト陣を演出し、瑞々しい青春ファンタジーに仕上げたのは、『SFホイップ・クリーム』に続く海外ロケとなる瀬々敬久監督。2月15日、翌日の上映を控えゆうばり入りしたばかりの瀬々監督から、お話を聞いてみた。

$navy ☆『MOON CHILD』は2003年4月19日より丸の内ピカデリー2他にて全国ロードショー公開!$






Q.まずは映画祭に参加しての感想から行きたいところなんですが…
——実は未だついたばかりで、町にも出てないので(苦笑)。ただこの作品は台湾で撮影していんですが、『MOON CHILD』の台湾側のプロデューサーの方が侯孝賢監督と一緒にやってこられた方で、キャスティングの参考にということでゆうばりで撮影された『ミレニアム・マンボ』を見まして、実際ガオ・ジェという侯監督によく出てらっしゃる役者さんにも出演してもらったりで、そういう意味では台湾で見たゆうばりの風景とまた再会して、奇遇だなと思ってますね。

Q.今回の作品はGackt、瀬々監督、井土紀州と3人の方が脚本にクレジットされていますが、最初の発端はどのような形で?
——一昨年の秋に初めてGacktさんに逢った時に、彼の中ではある程度のストーリーラインは出来てまして、1時間くらいかけてとうとうと語ってくれたんですよ。ただそれのみだと映画化には弱い部分もありましたので、それを足していったという感じです。最初に会う前にはかなり気楽な気持ちでいたのですが、話を聞き始めてこれはヤバイと、いきなりノートに速記を始めましたよ(笑)。だから紙で出来ているというよりは、彼の頭の中で出来ているものを語ってくれ、そこに様々な要素を足したり引いたりして原型が出来上がったという感じですね。

Q.近未来社会で移民の出てくる物語というのは、瀬々監督の前作『SFホイップ・クリーム』とも通じるものがありましたが、そのあたりは?
——Gacktさん自身が沖縄出身で、彼は物事に熱心というか、政治的なところがあるんですよ。日本における沖縄という地域に関しても、かなり考えているところがありまして、それで台湾という場所もそういうところじゃないですか。中国、オランダ、日本、といった国が入り、国としてはようやくギリギリで認められつつあるという。そういう国というあり方と、沖縄という場所の類似点みたいなものを彼自身が思ったのかもしれないですし、それで北京語なんかもかなり勉強されてまして、そういうアジア的な視点があったんだと思うんですkど、自分の出自を重ね合わせた上で、台湾を舞台に、台湾で生活している日本人移民の子供達の話をやりたいみたいな。そしてそれがマフィア映画であるみたいな話は、最初から話されてましたね。

Q.メインのお二人のキャスティングと、印象をお聞かせください。
——HYDEさんに関しては、Gacktさんが僕とためをはれるのは彼しかいないよってことで口説いてきました。それで実際に二人の場面を、カメラテスト的に撮ったんですが、HYDEさんもそれを見て自分でもやろうと思ってくれたようです。
GacktさんもHYDEさんもひじょうに熱心でしたよ。やはり彼らはミュージシャンからスタートしてますから、自分をいかに見せるか、映画の中にどう存在すべきかということに関しては、役者さん以上に考えているんですよ。その上、芝居の内容についても自分がどう見え、若い人たちに作品がどう伝わるかということをひじょうによく考えていますね。そういう意味では、役者さん以上に手強いというか(笑)。生半可なことで勝負しちゃうと、こちらが火傷してしまうみたいな。そんな中、Gacktさんはひじょうに動的な、熱い男気系の人ですね。友達とかもすごく大事にするし、目上の者に対する態度もちゃんとしてますし、演技も納得するまで何度でもやりなおします。HYDEさんは柔和と言うか、一見おっとりしてるんですよ。でも、独特の優しさが存在する感じなんです。ある意味普通の人というか、自分の家庭生活のこととかも話してくれたりして、そういうところに惹かれるというか、素晴らしいと思いますね。






Q.ワン・リーホンはいかがでしたか?
——ワン・リーホンはね、「用意!」って言うまで、どこか他の方を見てるんですよ(笑)。本番だぜって、こっちがハラハラするんですが、実際素晴らしいんですね(笑)。天然やなぁと思ったんですが、ひじょうにすごかったですね。彼はある意味少年な感じですね。彼自身も東洋人として生まれながらも、アメリカで育ってますから、どこかでアイデンティティが無いみたいな存在じゃないですか。そういう意味では、今回の題材に嵌っているわけですし、Gacktさんは英語ができるのでそのあたりの意図をよく話したそうですね。そのこと自体は、完全に偶然の一致だったんですが、この映画ではリーホンが毎回この映画のテーマを語っているんですよね。屋上の場面にしろ、最後の場面にしろ。Gacktさん、HYDEさんは主役として前に立つ二人なんですけど、リーホンが後ろでかなり世界を支えていってるというか。そこでは、ムチャいい表情をしてるなと思いましたね。

Q.信士(寺島進)がドラッグを吸う場面がありますが、そこに出てくる魚に意表をつかれたんですが。
——気になりましたか(笑)。あれを見た時には、僕も大笑いしましたよ。予想を越えてたんでね。いいなぁと。金魚屋さんという設定でしたし、僕は『雷魚』って作品もとってますから(笑)。

Q.先ほど、寺島進さんにもお話をうかがったのですが、出演場面自体は然程長くは無いものの、実に存在感のあった寺島さんの起用のポイントは?
——寺島さんはやっぱり兄貴なな感じがするんですよね。普段から(笑)。僕も何本かやってますけど、やっぱり存在の仕方が役者さんだなって思うんですよ。そういう人が、ああいうチームに入ってもらって、後ろでベースを弾いてもらわないと困るなと思うんです。Gacktさん、HYDEさん、リーホンと前に出るボーカルタイプなかで、バックでリズムをキチンと刻む人、それが寺島さんだったとは思うんです。豊川悦司さんや、石橋凌さんもそうです。

Q.それでは最後に、これから作品をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
——ある意味青春映画だと思うんです。青春映画のつもりで撮ってきましたから、こういう彼ら、彼女たちの存在・生き方があって、それが伝わってもらえればいいと思ってます。当然ファンの方は、GacktさんやHYDEさんを見に来られると思いますけど、本当に青春映画として是非楽しんでいただきたいなと思います。
本日はどうもありがとうございました。

執筆者

殿井君人

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