「チンコはコントロールできない感情の象徴。あの結末は必然だったんです」(松梨監督)。恋に破れ、仕事をなくした労働者がサイボーグに大変身!チンコビームで憎い相手を皆殺しするスーパー・アクション・プロレタリア映画がやってきた!!その名は「近未来蟹工船 レプリカント・ジョー」、監督はバカ映画クィーンの名を欲しいままにしてきた松梨智子嬢。「毒婦マチルダ」、「サノバビッチサブ〜青春グッバイ」などでもお馴染みのまんたのりお氏、池田鉄洋氏ら小劇団の実力俳優の面々に、レプリカント・ジョーのキュートなCGあり、水野晴郎氏特別出演のボーナストラックもあり!!待ちうけるのはどんなギャグの報復か?ただひとついえるなら、閉館が決まったBOX東中野のラスト作品に相応しきクオリティ。公開を目前に松梨監督にお話を伺ってみた。

※「近未来蟹工船 レプリカント・ジョー」は3月29日、BOX東中野にてレイトショー!!

 





ーーこんなおバカなアイディアはどこから?
松梨 最初はタイトルが浮かんだんですね。末端労働者の話をネクラにならないようにやるのはどうかなって。それと園子温さんの「うつしみ」って作品で男の子がチンコ持って走る場面があって、印象に残ってたんです。
 
 ーー劇中の台詞「フリーター生活10年、別にそれで不満に感じたことはない」っていうのは監督の実生活から出てきた言葉なんですか?
 私もフリーターでしたから。いえ、今でもそうですけどね(笑)。映画を撮る合間にバイトしたりしてたんですよ。バブルの頃なんか、配膳のアルバイトで年収500万稼いだこともあって、実際フリーターだから困るっていうのはなかったんですね。そういう自分の実感みたいなものがこの映画には入ってると思います。

 ーー撮影はずいぶん前だったそうですが。
2年前です。その後、編集に1年くらい掛かって。実は今だにちょこちょこ編集してるんですけどね(3月19日現在)。編集は自分のパソコンでやってるんですけど、二年も経つとパソコンの性能も大きく違ってきてしまう。以前は難しかったことが今では簡単にできるようになったりしてますからねぇ。

 ーー小劇団の役者さんが多いですね。
自分が役者だったってことが大きいでしょうね。これまでも自分の映画で何度かご一緒したことのある人が多いですし、今後もこのメンバーで撮っていきたいなというのがあります。もちろん、規模は違いますけど、スコセッシさんがずっと同じ役者使ってきたりしてたじゃないですか。私もああいうのがやりたくて。

 ーー劇中に度々テロップが出てきますが。
 あの手法はよく使うんですけど、普通に見てたら大きなドラマに引きづられて見逃しちゃうようなポイントってあるじゃないですか。ちょっとしたことだけども、留めたい部分をああやってテロップにするんですよ。





ーー水野晴郎氏が総理役で登場。カルトなファンにはたまらないでしょう。
 「シベ超」のイベントの時、若手監督ってことで舞台に呼ばれたことがあったんです。壇上で「今度、私の映画に出てください」って言っていたのが本当になったんですね。でも、あの役は水野さんじゃないと成り立たない役だったので、断られたらどうしようかと思いましたね。あんなところで総理大臣なんて全く必然性がないでしょう(笑)。水野さんがやるからおかしいんであって。

 ーー洞窟のシーンはどこで撮ったものなんですか?
 三浦海岸です。白骨死体が見つかったって事件があったじゃないですか。あのニュースを見て三浦海岸に行ってみたんですよ。というのも、洞窟を探して奥多摩に行ったり、いろんなところにロケハンに行ったんですけど、『こんな危険なところで撮影したら死ぬよ!』みたいなところばっかりだったんです。三浦海岸には洞窟というより、洞穴みたいなところがたくさんあってこれならいけるって思いました。

 ーー主人公ジョーはチンコビームで誤って恋人のウサギを殺してしまいます。あの設定は初めから決まってきたんですか。
 当初は別の展開だったんです。でも、この映画でチンコっていうのは合理的に割り切れない、暴走するものの象徴なんですね。自分で自分をコントロールできない寂しさというのか。主人公が恋人と結ばれないのはプロットの段階から想定してましたけど、どうも何かが足りなかった。チンコビームでうさぎを撃ってしまう、あの場面を思いついた時はああ、これだなと思いました。襲撃に来た中国人キムを撃ってしまえばそれでハッピーエンド、だけど、そうはできませんでした。自分で自分をコントロールできなかったっていう主人公を描きたかったので。

 ーー観客の皆さんへメッセージを。
 自分の撮る映画には見終わった後、少しでも人生がラクになるような、そんなメッセージをちょっとずつ入れたいと思ってきました。今すごい勢いで時代が変わってますけど、変わらないこともあるんだということを。でも、何も考えなくても別にいいです。楽しんで頂ければそれで満足ですね。

執筆者

寺島万里子

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作品紹介『近未来蟹工船レプリカント・ジョー』
『近未来蟹工船レプリカント・ジョー』公式サイト
『帰ってきた!刑事まつり』公式サイト