母娘の愛と喪失を描いた「ホワイト・オランダー」の主演女優アリソン・ローマンが1月下旬に初来日を果たした。「それ、だれ?」の声が聞こえるのもむべなるかな。アリソンは本作のオーディションで400人の中から里親のもとを転々とする主人公、アストリッド役を射止めた新進スター。共演陣は殺人罪で服役中の母親にミシェル・ファイファー、里親にレニー・ゼルウィガー、ロビン・ライト・ペンとそうそうたるメンバーである。プレッシャーにものともせず、時に可憐に、時に強く、特にふてぶてしくアストリッドを演じた彼女の実物像は?1月31日に行われた会見では「カワイイ!」との声もちらほら。「こういう場は苦手でミシェルからアドバイスを受けたこともあるの」と言うアリソン・ローマン、ちょっと緊張気味で、あとからコメントを付け加えたりの場面が初々しくて逆に好感がもてるのだった。

※「ホワイト・オランダー」は2月15日、日比谷みゆき座ほかでロードショー

 








ーー総々たる女優さんとの共演だったわけですが、彼女たちから学んだことを教えてください。
ミシェル(ファイファー)は役についての相当なリサーチをしてたはずだけれど、それを表には決して出さない人でしたね。彼女からはひとつアドバイスを頂きました。実をいうと私は、こういうパブリシティの場がとても苦手なんです(一同笑)。人前で話すことを考えると、女優になるのをやめようと思ったことがあったくらいで。ミシェルにそれをどうしたらいいのか相談したら「パブリシティは仕事、撮影はFUN、仕事じゃなくて楽しみだって思えばいい」って。それで、ほんの少しだけ気が軽くなりましたね。
 レネ(ゼルウィガー)は徹底的に監督と話しあっていました。彼女は撮影直前までヘッドホンで音楽を聞いてるんです。多分、シーンにあった音楽を聞いていたんじゃないかと思うんだけど。そういう自分なりのアプローチをする人。そうそう、彼女は撮影の間中、毎日プレゼントをくれたんです。コーヒーだったり、お菓子だったり、花だったり。彼女の役柄もそうでしたが、私をリラックスさせようと気を使ってくれてたんですね。レニーとはプライベートでよく遊びに出かけたりもしました。
 ロビンはあの役とは全く正反対の人です。撮影現場では完璧にあの人物になりきってましたけど。なぜそれがわかったのかというと、撮影の2週間前にあった時はロビンそのものだったんです。

 ーーアスリッドを演じるにあたり、一番苦労したことは?
  撮影当時、既に私は21歳でした。劇中で14歳の少女を演じ、それを観客に信じさせることは大変な気がしました。彼女はシャイで感情をあまり表に出さない。感情を抑えこみつつ、何を感じているのか伝えるかは難しかったですね。

 ーー最初の里親、ロビン・ライト・ペンに撃たれた時の微妙な表情が素晴らしかったです。あのシーンで留意したことは?
 すごく緊張してたんです。体に電動式の血のりをつけていたんですが、撃たれた瞬間に電気が走り、血が吹きだす仕組みになっていました。私は銃が大嫌いですし、あんなことは想像しただけで恐ろしい。それだけに感情移入もしやすかったんです。無事一回のテイクで済んだのは、自分の心情そのままだったからでしょうね。

 ーー劇中でアストリッドの母親は恋人の浮気を発見し、彼を殺してしまいます。浮気についてはどう思いますか。
もちろん、私は反対よ。やってはいけないことでしょう。だけど、浮気して殺されてしまうというのはちょっと可哀想な気がしますけど。

 ーー里親が変わるたびにメイクやファッションも変わります。個人的にはどれが気に入っていますか。
どぎついメイクのパンクファッション!!なぜかっていうと普段の私から一番遠いスタイルだからです。自分と違うタイプを演ることほど役者にとって楽しいことはないですね。

 ーーこの映画では親子の愛が非常に重要なテーマになっていますが、里親制度についてどう思いますか。
 劇中にも出てきますが、マクラレーンホールという孤児の学校に撮影に入る前、リサーチに行きました。原作にもあったように壁に大きな落書きがあったりと、印象通りでしたね。けれど、言葉は悪いですが、子供たちは思ったよりひどくなかった。もちろん、劇中に登場するような反抗的な子もいます。けれど、大半が普通の子どもたち。彼らの何人かとは話もしましたが、目が寂しそうだなと感じたのが印象に残っています。それを隠そうとして別人を演じているような子も何人かいました。アメリカの現状を考えるともっと里親は必要だと思います。政府もそのための予算を増やして欲しいと思いますね。

執筆者

寺島まりこ

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