「リベロとはお互い激しく嫌い合ってた。現場ではほとんど話した記憶もないのよ」。次期フレンチ・ロリータの呼び声高いロキサーヌ・メスキダが初の主演作「処女」で緊急来日を果たした。本作で彼女が演じたのはBFとのセクシャルな関係に憧れつつ、戸惑う十代の少女。全く似ていない太った妹のエピソードも並行して語られるひと夏の物語だ。こう綴ると爽やかな青春映画に思えてくるが、監督はあのカトリーヌ・ブレイヤであるからして話はそう単純に終わらない。メスキダは文字どおりの体当たりでハードなラブシーンを演じ、衝撃のラスト(!)を飾ったのだった。
 昨年6月のフランス映画祭に続き、ロキサーヌの来日は二度目。その際に上映されたブレイヤ監督「セックス・イズ・コメディ」では新進女優を演じていた。内容はといえば、本作の内幕をほうふつさせるもの。実際、彼女のいる前でブレイヤ監督はこう言っていたのだ。「この前に撮った『処女』という映画では、ロキサーヌは相手役と犬猿の仲だったの」と。今回の来日につき、ちょっとイジワルながらその質問を飛ばしてみると、帰ってきたのは冒頭のコメント。さすがブレイヤの秘蔵っ娘だけあるのか、その潔さ、率直さにはすっかり参ってしまいました。というわけで、以下はその際の質疑応答。細身の肢体を黒のロリータ・レンピカで包み、ちょっとしどけなポーズもサービスしてくれたのだった。

※「処女」は3月21日、シアターイメージフォーラムほかロードショー

 







ーー脚本を読んだ時、どのように感じましたか?
 言葉で表現するには難しいわ。だけど、とても不思議な、現実とはちょっと違うような、そんな映画だと思ったの。私自身、そういう作品が好きなのでーー例えば、デヴィッド・リンチとか、ギャスパー・ノエとかね。この本を読んだ時もものすごくエキサイトしたわ。

 ーーブレイヤ監督からは何かアドバイスはありましたか?
 ああ、彼女の演技指導はとても変わっているの(笑)。言葉での説明はほとんどなくて、叫ばなきゃいけないようなシーンでは腕をひねられたり、身体的なアプローチが多かったわ。

 ーー妹役のアナイス・ルブーとは仲良しになったとか。撮影中のエピソードを教えてください。
 現場を離れると2人で笑ってばかりいたわ。でも、撮影中は憎みあってなきゃいけないから、ちょっと大変だったかも。彼女に平手打ちするシーンがあるんだけど、どうしても笑っちゃって何度もテイクを撮り直したわ。

 ーー相手役のリベロ・デ・リエンゾとは不仲だったと聞いてますが・・・。撮影はやりにくかったのでは?さしつかえなければその辺りを・・・。
 気にしなくて平気、全然そんなの聞いちゃって平気よ。
正直に言うと、あまりにも嫌い合っていたので、撮影中は全然話さなかったの。ただ、私の演じる役はセックスにちょっと抵抗があるという設定だったから、かえってやりやすかったかも。
 どちらにせよ、ラブシーンの時は彼がいないような気分でやっていたわ。今でも不思議なのよ、なんだか彼が隣にいたような気がしないくらいで・・・。

 ーーベッドシーンへのは抵抗はなかった?
 自分の裸体をさらすということ、抵抗があったんじゃないかってよく聞かれるけど、実をいうとね、全然問題はなかったの。ブレイヤの映画が私はもともと好きだったし、その場面がどういう風になるかの方がずっと興味があった。自分が裸かどうかってことは全く問題じゃなかったわ。






ーーあなたの親友はこの映画を見てすごく感動したそうですが。
 そう、親友の女の子は「この映画に出会えて良かった」、「私がおかしかったわけじゃないと気がついいた」って言ってくれたわ。彼女にはボーイフレンドがいたの。その人は彼女とセックスしたがっていたけれど、彼女には抵抗があった。だけど、彼にはなかなかわかってもらえず、「君はどこかおかしいよ。精神科に行ったほうがいい」って言われたって。実際、彼女はしばらく病院に通ってたの。でも、この映画を見て自分だけじゃないんだって、自分がおかしいわけじゃなかったってそれがわかったってとても喜んでくれたの。

 ーー最近のリュック・ベッソン作品が特にそうですが、フランス映画にはいまだに日本といえば、ゲイシャ、フジヤマ、ニンジャという認識のような気がします。メスキダさんは日本に対してどんなイメージがありますか?
  リュック・ベッソンの映画って、映画というより産業作品だもの。まぁ、私もそんなに詳しいわけじゃないけど、 アメリー・ノートンという日本に住んでいたジャーナリストの本が好きでよく読んでたわ。

 ーー今後の予定は?
イスマエル・ヒロキの「大旅行」という映画に出たところ。自分としては女優という職業に全く疑いを抱いていないの。今、ちょうど英語のレッスンを受けているところ。いろんな役をこなせるようにね。

執筆者

寺島万里子