前作『がんばっていきまっしょい』で思春期の少女が大人へと成長していく姿を瑞々しく描いた磯村一路監督が、結婚という大人としての人生の岐路に立つ一人の女性の姿を、前作同様瀬戸内の海と島を舞台に綴りあげた『船を降りたら彼女の島』が、御当地愛媛での先行上映に続き、この2月より東京でのロードショー公開がスタートする。
 1月23日本作の完成披露試写会が、ヤマハホールにて開催された。披露試写は、本作の音楽を担当した押尾コータローのアコースティック・ギターによる、主題曲「木もれ陽」等のミニ・ライヴからスタートし、作品の繊細かつ力強さを併せ持ったトーンにマッチするギターの音色が、劇場に集まった観客を魅了する。続いて、磯村監督、ヒロイン久里子役の木村佳乃をはじめとするゲスト陣総勢9名が、作品同様アットホームな空気の中で舞台挨拶を行った。以下、各ゲスト陣のコメントを紹介しよう。

$navy ☆『船を降りたら彼女の島』は、2003年2月15日(土)より有楽町スバル座にてロードショー公開!$






磯村一路監督——寒い雨の中、こんなにたくさんのお客さんが来てくださり、また素敵な出演者の皆さんにも来ていただいてほっとしております。10年程前、若い女優さんと二人で舞台挨拶をする機会があったのですが、当日女優さんが風邪で来れなくなり、一人で舞台に立って大きなブーイングを受けたんです。監督は僕で、僕がこの映画を撮ったのにって(苦笑)。でも、監督は所詮裏方ですので、華やかな役者の皆さんに話してもらった方がいいでしょう。この映画は主人公が記憶を振り返ることがテーマなんです。私は地方出身者で自分の故郷への想いを映画にしたものですけど、地方出身の方も、東京の方も、皆さん自分の故郷を思い出して観ていただければ、どこか共通したものがあると思います。

木村佳乃(河野久里子役)——この映画の撮影は、一年前愛媛で2ヶ月弱行われました。その時私は25歳で、デビューから6年目だったのですが、その6年間兎に角前へ前へ進もうとする毎日を送ってきたのですが、愛媛で過ごした2ヶ月間で、歩みを止め周りを見回したり、自分の過去を振り返ることがいかに大事なことかを知り、この映画に出演できたことを本当に誇りに思っています。今日は一年ぶりくらいにお父さん、お母さんをはじめ皆さんにお会いできて、家族にまた逢えたみたいでそれだけでも嬉しいです。映画もそんな家族的な、とても温かいところが出ている素晴らしい作品だと思いますので、ごゆっくっり楽しんでください。

大杉漣(河野周三役)——愛媛の皆さんの心強い力を借りてやっと作った作品です。人間という生き物が映画そのものを生きているのだなと、この映画を観た時に思いました。静かに流れるリズムの中で人々が生きている、そういう生き物だと心のどこかに感じていただければと思います。1年ぶりに東京で見ていただけることを楽しみにしていましたし、僕自身この映画は大好きで一人でも多くの方に観ていただきたいと思っています。








大谷直子(河野泰子役)——映画の中で私が娘にマフラーを編むシーンが出てきますが、現場の影でもず〜っとマフラーを編んでました。大杉さんはこっちも見てよって不貞腐れてましたし、木村さんは一度もマフラーを編んだことがないからと、「お母さん教えて」って可愛い声だしちゃって一緒に編み始めたら、スタッフの女の子たちもドンドン集まってきてマフラーをずっと編んでる。そんな現場でした。

照英(広瀬健太役)——今回初の映画をやらさせてもらいました。磯村監督により、今回の映画を通じて何か一発はたかれたくらいに一歩踏み出せた自分がいます。漁師の役と言うことで、瀬戸内の海を堪能しました。この映画は観終わって5分間は動けません。その間に、自分を見つめなおしてもらえればと思います。

ベンガル(山下先生役)——僕が撮影に参加したのは後半のほうだったので、大半の役者さんは帰った後で子役さんしか残っていずちょっと寂しい思いもしましたが、磯村監督の世界はとても好きで今回が4作目の参加です。若い方を動かすのがとても上手で、若い方があまり役作りをしないですんなり入っていくというのが、毎回毎回感心する次第です。

小山田サユリ(美香役)——木村さんとも同じくらいの年代なので、本当の友達みたいに演じさせてもらいました。人が何気ないところで、励ましていけたらというところを演じてみましたので、見てください。

サエコ(鶴姫役)——初めての映画ですが、監督やスタッフの皆さんが、いろいろなことを教えてくださって、とても楽しくできました。愛媛での先行上映時のトークショーでは、お客さんが25とか30歳くらいに思われていたようなのですが、16歳ですのでそんなところも観てください。

押尾コータロー(音楽)——今回、こんな素敵な映画の音楽として、ギター1本で参加できたことをとても光栄に思っています。劇中で流れる曲は、同じ曲でも監督にお願いしてシーンごとに全部弾きなおしています。音が無くとも充分感動できる映画でしたが、少しでもアクセントになるようにと頑張りました。楽しんでください。

執筆者

宮田晴夫

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